異世界でいっぱいH!

ゆめゆき

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50 やっとぐっすり眠れるような…!

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「宿に行く前に陽動班といったん合流しよう」
「ようどう…」
「ドーブたち」

 ドーブはヨノイのファミリーネームだっけ。

「シノ・ヤブサが買い手だとわかっていたのは幸運だった。ドーブが競り落とされた瞬間を目撃して…シノ・ヤブサは鉱山を所有しているとんでもない大金持ちだ。本宅の場所は誰でも知ってる。ドーブが使用人を買収して情報を集めたが、本宅にタクトはいなかった」
「うん…」
「で、別宅…妾宅だが、その場所がわからない。ドーブがヤブサの屋敷に何人も人を送り込んで、ようやく最近一人が妾宅へ向かう際のお供に抜擢された」
「苦労かけたなあ…」
「……で、妾宅の人員を手薄にするために、本宅に爆薬を仕掛けて…」
「爆薬?!!」

 そうか、それでシノも用心棒たちも服が汚れていたり、怪我をしていたりしたのか。
 俺の心配が伝わったのか、サユがとりなすように言った。

「大丈夫…死人は出ないように充分に配慮したはずだから」
「そ、そう…」

 まもなく、俺とサユを乗せたリューバが、灯りのともっている酒場の前に着いた。
 サユに下ろしてもらい、なんとか歩いて中に入る。
 そこにはヨノイがいた。なんというか、やつれて、くたびれた様子だったが、俺と目が合うと生き返ったように目に光が灯った。

「タクト…!!」
「ヨノイさん…この度はその…ご迷惑をおかけして…」
「とんでもない!私のせいで、私が至らなかったばかりに君はさらわれた…!おお!愛らしい小鳥を籠から救い出せて、この上もなく安心しているよ…!」

 ヨノイは一瞬俺を抱きしめようとして腕を広げ、俺もハグを受けようとしたが、ヨノイはすっと後ろに引き、俺の手を握るだけに留めた。サユがギロッと睨んだようだ。

「ドーブさん。あなたには世話になった。感謝している」

 サユが言った。言葉とは裏腹に冷たい声色だった。

「ああ…。とにかく本当によかったよ…」
「ヨノイさん、ありがとう!本当に」

 ヨノイに別れを告げ、宿に向かう。

「そういえばここは何て言う町なの…?」
「カルイワという町だ。ヨカドウの街からはだいぶ離れたな…」
「そうなんだ…」

 サユが俺の失踪を知ったのは、二週間前だと言う。一仕事終えて、エメルド館を訪ねると、俺がいなくて、ことの詳細をヨノイに聞きに行って、それから二人で計画を練って、やっと今日実行に至ったという。

「俺がついてたら…いや…」

 サユが一緒にいたら俺はさらわれたりしなかったろう。でも、ヨノイのことも責められなかった。
 宿に着いて驚いた。二階建てではあるが、豪華な石造りの建造物である。ヨノイが手配したのであろう。サユの趣味ではない気がした。
 内装も豪華だ。俺は薄いガウン姿の上にサユの重たい上着を羽織った格好で、なんともみっともなかったが、一人いたホテルの従業員はじろじろ見たりせず、いっそ冷淡に「おかえりなさいませ」と俺たちを出迎えた。
 鍵を受け取ると、また部屋までサユがおぶってくれた。左足首が痛い。
 中に入ると、背から下ろされた俺はすぐに二つある大きなベッドのうちの一つに横になった。疲れた…。

「明日、鍛冶屋に行こう」
「鍛冶屋…?」
「足枷をはずさないと」
「…そうだった…」

 サユが黙って俺の左足首の下にクッションを挟んでくれて、足枷を出来るだけずらして、擦り傷が出来ている場所に軟膏を塗り布を当ててくれる。

「サユ、ありがとう…」
「ん…」

 やけに喉が渇く。でもそれよりもとにかくめちゃくちゃ眠たくて、ほとんど失神するように俺は眠りに落ちた。
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