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27 絢爛豪華な街!
しおりを挟むエナの里から再び長々と、リューバの曳く車に揺られてようやくシラバの街に着いた。
既に夜半。のはずだが、街はまるで昼間のように明るい。
街灯が何本も立って道を照らし、店もまだ閉まっていない。ヨカドウの街とは違う。
それに、夜空に何本も白い煙が立ち登っているのが見えた。あれが温泉だろう。
「す、すごいね…!」
俺が感心して言うと、ヨノイは愉快そうに笑顔を見せた。
「この街には夜がないようだろう?」
「うん…!」
「深夜にはさすがに静かになるがね」
俺が、元の世界で住んでいた町は中途半端な田舎の方で、夜はコンビニくらいしか開いてなかったけど、行ったことがない東京なんかはきっとこうなんだろう。
「今から街に繰り出して遊んでもいいのだけど…」
「えっ」
「はは、疲れただろう。ホテルにチェックインして休もう」
「うん」
ラグジュアリーな建造物が立ち並ぶ通りで、その中でもいっとう豪奢で背の高い建物の前で止まる。
五階建てくらいだろうか。ヨカドウにはこんな建物はない。
「すごーい」
俺は、見上げてあんぐりと口を開けた。ヨノイが笑っている。
中は更にすごかった。
高い天井、輝くシャンデリア、敷き詰められた絨毯、花模様が描かれた壁、窓は大きく、調度品はぴかぴかで、美しい絵画や生花が飾られている。目が眩みそうだった。
「行こう、タクト」
「うん…」
「部屋は最上階だよ」
ヨノイの言葉に、そんなに階段上がるの?!と辟易としていると、エレベーターに誘われた。
「五階でございますね」
エレベーターの前に立っていたホテルマンが格子状のドアを手動で開けて、俺たちを中に入れると、外側で何やらレバーを操作する。ガタン!と揺れると上昇し始めた。
動力は何だろう。人力だったりして…。それでもおかしくはない。そのくらい豪華なホテルだ。
ゆっくりと時間をかけて、エレベーターは五階に着いた。
待機していた従業員に、またドアを開けてもらい、広々とした廊下に出る。
その廊下にもそこかしこに花が活けて飾ってある。なんと贅沢なことだろう。
二部屋あるうちの、一室のドアをヨノイが開けると、そこもまたきらびやかな世界が広がっていた。
広くて、天井の高い部屋に、馬鹿でかい天蓋付きのベッドが二つ。細かな刺繍を施された生地が張られたソファに、彫刻で文様が彫られたテーブルの応接セット。テーブルの上には大きなガラスの器にフルーツがてんこ盛りになっている。部屋の隅にはバーカウンターのようなものまである。
ガラス窓も大きく、夜景が見下ろせた。
「すっっっ…ごすぎ…」
俺は息を飲んだ。
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