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05 帰れないのかもしれない!
しおりを挟む二階でしばらく休んだ後、リューバに乗って役所に向かった。
サユが賞金首を金に換えている間、しばらく待つ。
やっと、おぞましい生首とおさらばできた…!
役所は、日本の町役場と変わらない。カウンターがあって、待合席があって、いろいろ手続きしているようだ。
サユが戻って来た。ズッシリと重そうな袋を持っている。うわあ。わかんないけど、相当稼いだみたい…。
「あのさ…さっきの首…どんな犯罪をしたやつなの…?」
「殺人とか強盗だな。何十人と殺してる」
「ひえ」
じゃあ、俺もサユが来なかったら、犯されるだけじゃなくて殺されてたのでは…?俺はぞっとした。
「じゃあ、届け出に行こう」
「うん…」
カウンターの一番端でサユが呼びかけると、はいはいと愛想のよいおじさんがやってきた。
「どの届け?」
「さまよえる者なんですが…」
「ええ!ほんと?誰が担当だっけ。そうだ!ロアくーん!」
奥の方から痩せた青年がやって来た。
「はあ、なんでしょ…」
「さまよえる者だって。確かに変わった風体だよね」
「はあ。わかりました。検分してみましょ…」
別室に通され、テーブルを挟んでサユと俺はロアと向き合った。
「どこで見つけました?」
「ヤジロの森で」
「君、どこから来たのかわかる?」
「えっ!に…地球の、日本の、T県〇△街、□■の…交差点でバイクに突っ込まれて…気がついたら森に…」
「変わった服だ。ほかに持ち物は?」
「ない…」
スマホすらなかった。
「あっ…ハンカチが…」
ハンカチを持っていたが、森で男たちに犯された後、尻からあふれるザーメンを拭きとったものだった。
出して、と言われて仕方なくポケットから出す。
「ん?これは…」
「も、森の中で…あの……されて…汚れを拭いたもので…」
「うん、預かろう。しかし、このハンカチもそうだが、君の着ている服はなんて緻密に作られているんだろう。その布…恐ろしく細い糸で織られている。素材はなんだろう。とにかく、この世界にはないものなのは明らかだ。さまよえる者として認定しよう」
「認定されるとどうなるんですか…?」
「当面の生活費が市から支給される。とりあえず、今すぐ一時金も出る。時々は研究者と面談してもらう。悪いが研究のため衣服は徴収させてもらうが」
「ええ…!?」
「もちろん着替えは提供する。あー身元引受人は君でいいかな…」
「はあ…あの…」
「なんだ」
「俺は、もとの世界に戻れるんでしょうか…?」
「それは…」
サユとロアが視線を交わし、ロアが口を開いた。
「わからない」
愕然とする俺にサユが慰めるように言った。
「俺は帰れると思うよ。さまよえる者がこの世界で天寿を全うしたという話はまれだ。だいたいは失踪してしまうんだ。煙のように…それは元の世界に戻ったってことじゃないのかと、俺は思うんだが…」
「確認できないから、断言はできないが。そういう考え方もできるね」
「はあ…」
俺は着ていた制服と下着と靴とをロアに提出し、この世界の衣服に着替えた。ダボッとしたグレーのズボンに、ボタンのない白シャツ。黒いコート。
俺はサユに聞いてみた。
「俺、わかんないんだけど、これって、いけてるの?」
「うん…いけてない…かなり、貧相に見えるな…金はあるんだ。服を買いに行こう…ただでさえタクトは浮いてる」
この世界の人々は、大体ヨーロッパ人みたいな外見で、そこまで彫りは深くない顔立ちだが、髪は金や茶だし、瞳の色は青や緑や明るい茶色。黒髪に黒い瞳はいない。
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