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男とのセックスに溺れる男

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 俺はどちらかというと殺生を避ける癖がある。足元にうろつく蟻を避けて歩いたり、蜘蛛が部屋にいても気にしないし、うっかり侵入してきたカナブンもダンゴムシもつまんで庭に放り投げるだけ。まあ、そんなこと言っても蚊取り線香とかホウ酸団子は使うけど。
 だから学校の帰り道で男児どもがカマキリに石を落として殺そうとしているところに遭遇したら、「そういうのやめろ」と言って、ガキどもを追っ払うのは当然のことだった。害にならない虫を殺して遊ぶなんて、気持ちが悪い。ろくな大人になりそうもない。
 特別なことをしたつもりはない。その出来事はすぐに忘れて、帰途についた。
 その夜のことである。外は異常に暑いが、熱中症対策でエアコンをかけて快適に眠っていると、「あなた…あなた…」と呼ぶ声がする。え、誰?おばけ??枕もとに気配を感じて、そーっと顔を上げた。
 そこには女がいた。薄い生地の緑色のサリーみたいな服を着て、正座していた。布がすけすけで乳首もへそも見えている。夢か…。俺は怖くなったので、そういうことにして無視して寝なおそうとした。
 しかし、こちらに話しかける女の声は続いた。
「わたしは、昼間あなたに命を助けていただいたカマキリです」
「……」
 俺はその時の出来事を思い出した。メスカマキリだったのか。
「お礼と言っては何ですが、あなたに性の喜びを供しに参りました。少しだけお時間をいただきます」
 な、何を言っているんだ。まぶたが重い。ひきずられるような猛烈な眠気に襲われ、意識を失った。


「ね、起きて…起きて…」
 目が覚めると俺は、不思議な化粧を施した少年に顔を覗き込まれていた。少年の頭の上、天井は怖ろしく高い。明らかに自室ではなかった。起き上がって、周囲を確認する。俺は、元のベッドの三倍はある寝台に寝ていた。ベッドの四方はきらびやかな刺繡を施したカーテンで囲まれている。エアコンはもちろんない。暑い…いや、湿気がなく、からっとしていて、暖かいという方が的確だった。
「ずいぶん寝ていたよ。旅の疲れが出たんだね。さっそく王のお召があったから、行かないと」
 そして、俺のパジャマにしているTシャツとハーフパンツを見て、変わった民族衣装だね。と、どこか蔑むような感じに言った。
「湯あみをして、着替えと化粧をしないと」
 少年に手をひかれ、カーテンから出る。部屋は広かった。庭のようだ。そして、どこもかしこも金や宝石や刺繍の施された布で飾り立ててあるのだ。床はなめらかな大理石。本物だろうか。
 同じく豪華な廊下を通り、浴室に着く。そこで少年とはお別れだった。浴室はやはり金の壁に湯を満たした金のバスタブ、それに大きな湯を満たした樽が用意されていて、そこにいた三人の少年たちに俺は服を脱がされ、バスタブに浸からされた。そして、やわらかな布でまんべんなく洗われる。必要以上に繊細な力で撫でるように肛門や、ペニスも洗われ、俺は官能的な気持ちになってきた。
 そこから、別の部屋へ通された。
 着替えと、化粧。おそらく絹で出来た、金糸銀糸で刺繍を施された衣装に着替える。下着はない。貫頭衣というには豪華だが、形はそんなようなものだ。そして短い。歩くと尻やペニスが見えそうだった。
 鏡に向かい、化粧を施される。先程の少年と同じような化粧だ。まぶたに金粉をはたかれ、鼻筋に白い練りおしろいを引かれる。髪にも金の粉をまぶされる。これで準備は完了したらしい。俺は更に別の少年に手をひかれて、広く、長い長い迷路のように曲がりくねった廊下を歩き、大きな部屋に着いた。
 そこは今までと段違いにきらびやかで美しい部屋だった。天井には華やかな絵画が描かれ、そこからまばゆい巨大なシャンデリアが下がっている。目を凝らすと、広大な部屋の四隅には守り神のような彫刻が置かれ、中央に、先程寝ていた寝台のおよそ四倍はありそうな天蓋付きのベッド。その下に敷かれている大きな絨毯は美しい幾何学模様が織りこまれている。
 促され、一人ベッドに近付くと、「来たか」と、若々しい男の声がした。聞き覚えがある。
 天蓋から下がっているカーテンに手をかけ、中を覗き込もうとすると、力強い腕に中にひっぱりこまれた。
「わっ…」
「待ちかねた」
 ベッドはふかふかで、抱きとめられた男の胸はたくましかった。男はすでに全裸だ。
「なんという細くしなやかな体、なめらかな肌だ。それに、この髪…闇のように黒いのに輝いている。瞳は黒ダイヤのようだ。唇はルビーのようだ」
「ええ…」
 俺のこと、言ってんの…。
 そういう男は、自分の方が端正な顔立ちをしている。まつ毛が長く、知的なまなざし、形のいい唇、明るい色の髪はサラサラ。俺はぽーっと見惚れた。そう、クラスメイトの羽柴にあまりにも似ていた。
「んむ」
 唐突なキス。舌が侵入し、なめ回す。俺も舌を絡めた。息が荒くなる。
「ん…ん…」
 羽柴とキスしてる…。胸が熱くなる。
 男が、俺の服に手をかけた。一度唇を離し、脱がされる。また、キス。唾液がたくさん出て、口の端からこぼれた。俺はキスだけで勃起していた。
「ほう、変わった陰茎だ…これは愛らしい」
 え?そんな…ふつうだと思うけど…。見ると、男の陰茎は赤黒くたくましく、そして無数のイボがついていた。ひえ…。
「王、準備をいたします」
 いつの間にベッドに入ってきていたのか、それとも最初からいたのか、全裸に金の腕輪、金の首輪だけの少年が二人、こちらに近付いてきた。その二人の陰茎もまた、イボがついている。これがここのスタンダードなんですか?!
 俺は王の前で四つん這いの形をとらされた。少年の一人は小さな壺を持っている、もう一人がその壺の中へ指を差し入れて出すと、ぬらぬらした粘液をまとわせていた。それが俺のアナルに塗り込められる。
「あ…あ…」
 思わぬ快感に、声が漏れる。王に見られていることで興奮もしていた。
 指が入ってくる。つんとした感触があるが、痛くはない。ゆっくりと入れられ、繰り返し出し入れされる。王の方を見る。目が合う。ぎらついているけど、優しい目。
「痛くはないか?」
「いえ…」
「気持ちがいいか?」
「はい…ん…」
 指が増やされるが平気だ。充分に準備が出来たら、俺は羽柴とセックスするのだろうか。たぶん、そうなのだろう。ドキドキした。
「王、準備が整いました」
 少年が告げた。いよいよなのか…?
 王は俺の手を、自身の陰茎に導いた。
「これが入るぞ」
「はい」
 熱くて、ドクドクしてる。これが俺の中に…。
 俺は仰向けに寝転がされた。たぶん、正常位でするんだろう。これなら、顔が見られる。二人きりになりたかったが、少年たちは去らなかった。一人は俺の乳首をつまんだり、はじくようにしたりして、もう一人はペニスをゆるゆると扱いた。快感が俺の体を弛緩させる。
「ん…あん…」
 羽柴…王は俺の足を大きく広げさせ、その間に腰を入れた。勃起した王の陰茎の先が、俺のアナルにあてがわれ、円を描くように愛撫した。
「あっ…ああん…!」
「欲しそうに、ひくついている…なんといじらしい」
「あっ!あっ…!」
「その声も愛らしく、いやらしい。もっと聞かせてくれ」
「んんっ!あん…!早く…!」
 王の陰茎が入ってきた。ゆっくりと。王が腰を進めるごとに陰茎のイボがアナルにひっかかり、俺に快感を与えた。全部入るまでに、俺は喘ぎまくってへとへとになった。それに入っているだけですごく気持ちがいい。快感に歪む羽柴の顔はセクシーだった。
 王はピストン運動を開始した。
「あ…っ!ああ…ああ…んん…ああ!」
 ああ、すごい。粘膜と粘膜が擦れあって…。こんないやらしいこと…羽柴としちゃうなんて…。
「どうだ?」
「あん!すごい…!すごく気持ちいい…っ!やあん…!」
「おれもとても気持ちがいい…なんてすばらしい体だ。吸い付くような肌。しまりがよく、やわらかい尻ねっとりと包み込まれているようでたまらない…お前は男に犯されるために生まれてきたようだ」
 羽柴が俺のアナルで気持ちよくなってる…!
「んん…ああ!」
 王が、少年二人をどかせ、覆いかぶさって背中に手をまわし、抱きしめてきた。俺も王の背中に手を回して思いきりしがみつく。汗まみれになった体どうしをぴったりくっつけて、激しくたくさん腰を振る。ハア、ハア、と呼吸も激しくなる。
「ああん…!好き…好き…!気持ちいい…!」
「ああ、とてもいい…!溶けてしまいそうだ…!」
 王の陰茎のイボが、俺の中の気持ちいいところを押しつぶし、擦る。俺は王の亀頭が俺の中で気持ちよくなれるように、締め付け、中で当たるようにする。
 どんどん、快感が高まっていく。絶頂が近づいてくる。
「ああ…!いく…!いっちゃう…ああ!」
「おれもいく…!ああ…!」
 王が腰の動きを止めて、射精を始めた。精液の射出に合わせて、ぐいぐいと俺の奥を突く。
「んんー…っ!ああー…っ!」
 王の精液を受け止めながら、俺もめちゃくちゃに身もだえて、射精する。
 お互い、貪欲にたっぷりと快感を味わう。
「んん…」
 余韻に浸りながら、深くキスをする。舌を絡めて、何度も何度も角度を変えて。
 羽柴と抱きしめ合ったまま、俺の意識は遠のいていった。


 七時ぴったり。目が覚めると自室に寝ていた。夢だったのか。
 朝食のシリアルを食べ、制服に着替え登校する。今日も暑い。
 電車の中で、羽柴と会う。
「おはよ…」
「はよー…」
 しばらく無言で電車に揺られ、不意に羽柴が口を開いた。
「へんな夢見たわ」
「ふーん」
「どんな夢か聞かねーの?」
「ふっ…どんな夢?」
「王様になって、酒池肉林する夢」
「なんかエロそう。いい夢?」
 羽柴はしばらく車窓を眺めてから、言った。
「まあね」

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