12 / 15
不愉快な里帰り
しおりを挟む
実家への訪問の日時を手紙で知らせ、わたしとグレイはエッタを連れ、その通りに実家へ向かった。
わたしは念入りにお化粧をし、真紅のドレスを選んだ。思えば赤はいつもリナの色だった。
「すごく、きれいだ…」
グレイは身支度を整えたわたしにキスして、抱きついて持ち上げた。そのままくるくる回ったので、わたしは宙に浮いてるみたいで戸惑う。
「危ないわ。グレイ…!」
「平気!」
快活な笑い声と共に、わたしは地上に降ろされる。
馬車で半日かけて実家に向かった。
実家の庭園は相変わらず美しかった。
レヴィ家の庭はただの広い芝生だが、近々花を植え、木々を植え、わたしの好みの庭園にするつもりだ。グレイが、そうしなさいと言ってくれた。
この庭園を散歩するのがわたしは好きだった。
森の中でリナとフロードのあの場面を見て、散策の途中でイドレスと口づけを交わしてしまった、忌まわしい庭園だけど…。
「見事な庭園だね。でも、うちはもっと素敵な庭園にしよう…!」
グレイの言葉がうれしい。
両親は驚きを持ってわたしたちを出迎えた。
「お義父様、お義母様…グレイ・レヴィです。訳あって、素顔を隠したまま、お嬢さんへ求婚したことをお詫びします。改めてご挨拶に参りました」
「あ、ああ…ようこそ…!」
「エルも久しぶりね…!今日はリナも帰っているのよ」
母の言葉に、わたしは愕然とする。リナがいる…!
嫌だ。グレイとリナを会わせたくない。
「あの…リナはどこにいるのかしら…」
「あら?おかしいわね…さっきまでいたんだけど…」
わたしはとりあえず、ほっとする。
客間に通されて、お茶とお菓子を振る舞われた。
グレイの美貌と、品のある立ち居振る舞いに、両親は見惚れているようだ。
両親の暮らしぶりと、わたしの新婚生活についてお互いかんたんに話し、なんということもない世間話をした後、わたしは思い切って切り出した。
「その…リナ…リナから、手紙でお金を催促されたんだけど…そんなに困っているのかしら…」
両親は顔を見合わせる。
「私たちもアムルート家に支援しているのだが、そっちにも手紙が…?」
「そ…そうなの…」
リナはかなり困窮しているのだろう。
「やはり、リナをアムルート家に嫁がせるのではなかったな…」
父はため息をついた。
「ええ、リナは華やかな場所が似合う子なのに…ドレスも新調できずに、パーティーにも行けずに…もったいないことだわ」
母も顔を曇らせる。
そして、わたしに唐突に切り出してきた。
「エル…あなた、これからでもうちに戻ってきなさいな」
父も重々しく頷く。
「ああ、エルは家に戻ってくるといい。新しい縁談を探そう」
「ど…どういうこと…?」
わたしは意味がわからない。
グレイの方を見ると、彼も怪訝な表情をしている。
「お嬢さんをご実家にお返ししろと…?僕はお嬢さんに不自由をさせた覚えはありません。足りないとおっしゃるなら改善します」
母が焦ったようにとりなす。
「誤解なさらないで…!逆。そう、逆ですわ」
「逆…??」
グレイは眉をひそめ、少し唇を尖らせた。そんな表情でさえ、魅力的だった。
「エルでは、レヴィ氏にふさわしくないかと…改めてリナを嫁がせます。リナはご存知でしょう!美しく、快活で、社交的な娘です…!必ず、気に入ります。リナも、きっと…!ああ、リナはどこへ行っているんだ。誰か捜しに行かせなさい」
黒く重たいものが、たちまちのうちにわたしの胸に巣食った。
体調がおかしい。息がうまく出来ない…。
「僕は初めからエルへ求婚しました。お忘れですか?」
グレイは眉間を指で押さえ、ため息をついた。
「それはリナと勘違いをしていたのかと…違うのですか?」
「僕はエルへ求婚したのです。勘違いなどしていない」
グレイは億劫そうに言葉を紡いだ。
わたしは念入りにお化粧をし、真紅のドレスを選んだ。思えば赤はいつもリナの色だった。
「すごく、きれいだ…」
グレイは身支度を整えたわたしにキスして、抱きついて持ち上げた。そのままくるくる回ったので、わたしは宙に浮いてるみたいで戸惑う。
「危ないわ。グレイ…!」
「平気!」
快活な笑い声と共に、わたしは地上に降ろされる。
馬車で半日かけて実家に向かった。
実家の庭園は相変わらず美しかった。
レヴィ家の庭はただの広い芝生だが、近々花を植え、木々を植え、わたしの好みの庭園にするつもりだ。グレイが、そうしなさいと言ってくれた。
この庭園を散歩するのがわたしは好きだった。
森の中でリナとフロードのあの場面を見て、散策の途中でイドレスと口づけを交わしてしまった、忌まわしい庭園だけど…。
「見事な庭園だね。でも、うちはもっと素敵な庭園にしよう…!」
グレイの言葉がうれしい。
両親は驚きを持ってわたしたちを出迎えた。
「お義父様、お義母様…グレイ・レヴィです。訳あって、素顔を隠したまま、お嬢さんへ求婚したことをお詫びします。改めてご挨拶に参りました」
「あ、ああ…ようこそ…!」
「エルも久しぶりね…!今日はリナも帰っているのよ」
母の言葉に、わたしは愕然とする。リナがいる…!
嫌だ。グレイとリナを会わせたくない。
「あの…リナはどこにいるのかしら…」
「あら?おかしいわね…さっきまでいたんだけど…」
わたしはとりあえず、ほっとする。
客間に通されて、お茶とお菓子を振る舞われた。
グレイの美貌と、品のある立ち居振る舞いに、両親は見惚れているようだ。
両親の暮らしぶりと、わたしの新婚生活についてお互いかんたんに話し、なんということもない世間話をした後、わたしは思い切って切り出した。
「その…リナ…リナから、手紙でお金を催促されたんだけど…そんなに困っているのかしら…」
両親は顔を見合わせる。
「私たちもアムルート家に支援しているのだが、そっちにも手紙が…?」
「そ…そうなの…」
リナはかなり困窮しているのだろう。
「やはり、リナをアムルート家に嫁がせるのではなかったな…」
父はため息をついた。
「ええ、リナは華やかな場所が似合う子なのに…ドレスも新調できずに、パーティーにも行けずに…もったいないことだわ」
母も顔を曇らせる。
そして、わたしに唐突に切り出してきた。
「エル…あなた、これからでもうちに戻ってきなさいな」
父も重々しく頷く。
「ああ、エルは家に戻ってくるといい。新しい縁談を探そう」
「ど…どういうこと…?」
わたしは意味がわからない。
グレイの方を見ると、彼も怪訝な表情をしている。
「お嬢さんをご実家にお返ししろと…?僕はお嬢さんに不自由をさせた覚えはありません。足りないとおっしゃるなら改善します」
母が焦ったようにとりなす。
「誤解なさらないで…!逆。そう、逆ですわ」
「逆…??」
グレイは眉をひそめ、少し唇を尖らせた。そんな表情でさえ、魅力的だった。
「エルでは、レヴィ氏にふさわしくないかと…改めてリナを嫁がせます。リナはご存知でしょう!美しく、快活で、社交的な娘です…!必ず、気に入ります。リナも、きっと…!ああ、リナはどこへ行っているんだ。誰か捜しに行かせなさい」
黒く重たいものが、たちまちのうちにわたしの胸に巣食った。
体調がおかしい。息がうまく出来ない…。
「僕は初めからエルへ求婚しました。お忘れですか?」
グレイは眉間を指で押さえ、ため息をついた。
「それはリナと勘違いをしていたのかと…違うのですか?」
「僕はエルへ求婚したのです。勘違いなどしていない」
グレイは億劫そうに言葉を紡いだ。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
マッチョな俺に抱かれる小さい彼女
雪本 風香
恋愛
社会人チームで現役選手として活躍している俺。
身長190センチ、体重約100キロのガッチリした筋肉体質の俺の彼女は、148センチで童顔。
小さくてロリ顔の外見に似合わず、彼女はビックリするほど性に貪欲だった。
負け試合の後、フラストレーションが溜まった俺はその勢いのまま、彼女の家に行き……。
エロいことしかしていません。
ノクターンノベルズ様にも掲載しています。
男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話
mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。
クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。
友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる