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8章 若き灯は塔を駆ける
120話 自分なりにまとめよう
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情報量が、情報量が多い……!!!!!!
ヤレアの町の一件から、3週間が経った。秋から冬になり、冬休みが刻々と近づいている。期末テストが終わって一息を着いた頃、療養して欲しかったのに通常運転のニアギスから分厚い資料を貰った。表紙には〈中間報告〉と記されている。王家の印も押され、私が読んで良いのかと訊いてみると〈お嬢様が読むべき内容です〉と答えが返って来た。
丁寧に纏められた資料を読んで、私は頭を抱えた。
アーダイン公爵が〈余裕がある時にゆっくり読みなさい。疲れている時、心が沈んでいる時には絶対に読まないように〉と気を遣った注意文をわざわざ書き加える位に、私の知らない事と衝撃的な内容の山が書かれている。
ラグニールさんと兄様が危ないことしていたのにも驚いたし、パシュハラとマーギリアンの惨状なんてゲームでは一切無かったし、ゼノスまでホムンクルスで……
ゲームはリティナ視点とはいえ、現実はその上を行くシリアスな世界観になっているなんて!!
い、いや負の想念の発生理由とか、諸々を考えて視点の角度を変えれば、それは当然なのだけれど……けど……!
『ミュ、ミューゼリア?』
資料を半分ほど読んで項垂れている私をレフィードが心配する。
「大丈夫……だと思う。思うよ」
私は大きくため息を着いた。
「グラン。王道で楽しい物語だった」
「フニ!」
「しかし、登場人物の9人中8人の語尾が〈おじゃる〉なのはどうかと思う。誰か誰がなのか、分かりにくい」
「プウゥ……」
私の寮部屋の傍らでは、護衛として派遣されたリュカオンと最近執筆が趣味のグランが会話をしている。
いいなぁ。あっちは平和で……
こっちは今後が不安で、胃が痛くなりそうだ。
と、とりあえず、私自身でも情報を整理しないと。
・ゼノスがホムンクルスだった。実験で記憶の操作が行われ、自分を人だと思い込んでいた。その理由は、実験の目的・課題がサジュとは違ったから。
・サジュとゼノスの核だけ、他のホムンクルスとは違う特別仕様の魔方陣が組み込まれていた。核となる石の純度も相まって、能力も2人の方が潜在的に高い。
二重の魔法陣は成功例でもあるため、研究の材料としても情報を保管する。
・犯人はホムンクルスの実験を重ね、記憶を転写する領域にまで達していた。現段階では記憶の部分的な欠落や、体質などの完璧な模倣には至っていないが、今後は情報源とほぼ同じ状態まで完成度が上がる恐れがある。
・サジュや新しいホムンクルス達の核は命樹の樹液を加工したモノ。命樹はグランディス皇国で保護されている貴重な樹。その樹液をエレウスキー商会がどのように入手したのか、その経路の調査を始めているが、難航している。
・エレウスキー商会の設立者一族は滅亡。疎遠となっていた当主の弟とその一家は生存しているが相続はせず、ロレンベルグが買い取った。ラグニールさんが商会の権利を譲渡され、内部から再度調査中。判明しているものも幾らかあるが、当主をホムンクルスにした犯人、サジュの母に毒薬を売っていた商人の足取りを追っている状態。
・ヤレアの町の住人はほとんどがホムンクルスだった。それを統括する司令役になる予定だったのが、サジュ。けれどサジュの意志が核に刻まれた命令を拒絶し、歪曲された司令によってホムンクルス達が暴走した。その結果シャーナさん達を襲ったが、銀狐の男の人達の頑張りで被害が最小限に住んだ。
・エレウスキー商会の店舗もしくは商品が卸されている市町村は、病の流行と名目を付けて封鎖し、一部の人間しか入れないようにした。
ゲーム上の病気の蔓延が前倒しになった状態となる。
・赤い毒薬を含む食べ物をエレウスキー商会が売り、中毒となり廃人や錯乱状態にになった人々を回収、そして情報源としていた。しかし、エレウスキー商会の各店舗の地下に建設されたホムンクルス製造所で保護された被害者の数が余りにも少ない。保護出来たのは累計で158人。みんな意識が混濁し、元の生活に戻れるか怪しい状態。
・中毒予備軍、これからなる恐れのある人へ予防と治療の為に、霊峰シャンディアの湧き水を利用する。ゼノスさんの母(自称)のホムンクルスの自我が正常になった事から、浄化の力がある程度見込まれるからだ。そこに、ロレンベルグから依頼を受けていたレイさんの薬も加わり、食品や飲料として加工する計画が始まった。
ここまでやるのは、霊草シャルティスだけでは量が不足する恐れがあるからだ。
・裂け目と赤い光について、私達が遭遇したモノ以外にはまだ発生していない。牙獣の王冠の魔方陣のように何か描いている可能性があるため、エレウスキー商会の店や商品を卸している町や村の道のりを調べなくてはならない。
二重の魔方陣の暴発の危険性や罠が隠されている可能性があるので、国民への被害が出ないように慎重に調査を続けている。
・赤黒い魔物について、3通りの存在が考えられる。
1つ目は、牙獣の王冠の蛇竜のように中身が空っぽの死体を動かすタイプ。
2つ目は、兄様を襲おうとした魔熊のように、汚染されたタイプ。
最後の3つ目が、今回襲って来たスライム状態のモノから変形するタイプ。
2つ目に関して、食物連鎖からなる毒の蓄積から発生したモノであると解剖の結果判明した。国が取り締まりを開始した後に赤い毒薬が大量に不法投棄され、影響を受けた虫や植物から小鳥や小動物、草食動物、そして肉食動物へと移った。イグルド兄様を襲った個体は、狩猟祭の運営陣がサプライズとして用意していた。あのような事態になり、慌てて隠蔽しようとしたが最終的に罰せられた。なお、その個体がいたとされる地域は封鎖され、一掃作戦が行われた。なお、兄様から離れた護衛達の行方は分かっていない。
1つ目と3つ目は解剖や解析が行えていない為、同じと言う可能性もあるが、外見の違いから一旦分けられている。
その同じかもしれない理由も、まぁ複雑で……
なんだ、これ。
ゲームのストーリーでは〈悪い魔王を倒して世界を平和に!〉みたいな単純明快な話だったのに、どうしてこんな複雑になっているの。ある程度年を取って遊び直して、そのストーリーの奥行きに気付くのは、確かに有るけどさ……
ロカ・シカラの話から、この世界は想像以上に複雑だと思っていたけれど、元凶の行動がややこしい。
ヤレアの町の一件から、3週間が経った。秋から冬になり、冬休みが刻々と近づいている。期末テストが終わって一息を着いた頃、療養して欲しかったのに通常運転のニアギスから分厚い資料を貰った。表紙には〈中間報告〉と記されている。王家の印も押され、私が読んで良いのかと訊いてみると〈お嬢様が読むべき内容です〉と答えが返って来た。
丁寧に纏められた資料を読んで、私は頭を抱えた。
アーダイン公爵が〈余裕がある時にゆっくり読みなさい。疲れている時、心が沈んでいる時には絶対に読まないように〉と気を遣った注意文をわざわざ書き加える位に、私の知らない事と衝撃的な内容の山が書かれている。
ラグニールさんと兄様が危ないことしていたのにも驚いたし、パシュハラとマーギリアンの惨状なんてゲームでは一切無かったし、ゼノスまでホムンクルスで……
ゲームはリティナ視点とはいえ、現実はその上を行くシリアスな世界観になっているなんて!!
い、いや負の想念の発生理由とか、諸々を考えて視点の角度を変えれば、それは当然なのだけれど……けど……!
『ミュ、ミューゼリア?』
資料を半分ほど読んで項垂れている私をレフィードが心配する。
「大丈夫……だと思う。思うよ」
私は大きくため息を着いた。
「グラン。王道で楽しい物語だった」
「フニ!」
「しかし、登場人物の9人中8人の語尾が〈おじゃる〉なのはどうかと思う。誰か誰がなのか、分かりにくい」
「プウゥ……」
私の寮部屋の傍らでは、護衛として派遣されたリュカオンと最近執筆が趣味のグランが会話をしている。
いいなぁ。あっちは平和で……
こっちは今後が不安で、胃が痛くなりそうだ。
と、とりあえず、私自身でも情報を整理しないと。
・ゼノスがホムンクルスだった。実験で記憶の操作が行われ、自分を人だと思い込んでいた。その理由は、実験の目的・課題がサジュとは違ったから。
・サジュとゼノスの核だけ、他のホムンクルスとは違う特別仕様の魔方陣が組み込まれていた。核となる石の純度も相まって、能力も2人の方が潜在的に高い。
二重の魔法陣は成功例でもあるため、研究の材料としても情報を保管する。
・犯人はホムンクルスの実験を重ね、記憶を転写する領域にまで達していた。現段階では記憶の部分的な欠落や、体質などの完璧な模倣には至っていないが、今後は情報源とほぼ同じ状態まで完成度が上がる恐れがある。
・サジュや新しいホムンクルス達の核は命樹の樹液を加工したモノ。命樹はグランディス皇国で保護されている貴重な樹。その樹液をエレウスキー商会がどのように入手したのか、その経路の調査を始めているが、難航している。
・エレウスキー商会の設立者一族は滅亡。疎遠となっていた当主の弟とその一家は生存しているが相続はせず、ロレンベルグが買い取った。ラグニールさんが商会の権利を譲渡され、内部から再度調査中。判明しているものも幾らかあるが、当主をホムンクルスにした犯人、サジュの母に毒薬を売っていた商人の足取りを追っている状態。
・ヤレアの町の住人はほとんどがホムンクルスだった。それを統括する司令役になる予定だったのが、サジュ。けれどサジュの意志が核に刻まれた命令を拒絶し、歪曲された司令によってホムンクルス達が暴走した。その結果シャーナさん達を襲ったが、銀狐の男の人達の頑張りで被害が最小限に住んだ。
・エレウスキー商会の店舗もしくは商品が卸されている市町村は、病の流行と名目を付けて封鎖し、一部の人間しか入れないようにした。
ゲーム上の病気の蔓延が前倒しになった状態となる。
・赤い毒薬を含む食べ物をエレウスキー商会が売り、中毒となり廃人や錯乱状態にになった人々を回収、そして情報源としていた。しかし、エレウスキー商会の各店舗の地下に建設されたホムンクルス製造所で保護された被害者の数が余りにも少ない。保護出来たのは累計で158人。みんな意識が混濁し、元の生活に戻れるか怪しい状態。
・中毒予備軍、これからなる恐れのある人へ予防と治療の為に、霊峰シャンディアの湧き水を利用する。ゼノスさんの母(自称)のホムンクルスの自我が正常になった事から、浄化の力がある程度見込まれるからだ。そこに、ロレンベルグから依頼を受けていたレイさんの薬も加わり、食品や飲料として加工する計画が始まった。
ここまでやるのは、霊草シャルティスだけでは量が不足する恐れがあるからだ。
・裂け目と赤い光について、私達が遭遇したモノ以外にはまだ発生していない。牙獣の王冠の魔方陣のように何か描いている可能性があるため、エレウスキー商会の店や商品を卸している町や村の道のりを調べなくてはならない。
二重の魔方陣の暴発の危険性や罠が隠されている可能性があるので、国民への被害が出ないように慎重に調査を続けている。
・赤黒い魔物について、3通りの存在が考えられる。
1つ目は、牙獣の王冠の蛇竜のように中身が空っぽの死体を動かすタイプ。
2つ目は、兄様を襲おうとした魔熊のように、汚染されたタイプ。
最後の3つ目が、今回襲って来たスライム状態のモノから変形するタイプ。
2つ目に関して、食物連鎖からなる毒の蓄積から発生したモノであると解剖の結果判明した。国が取り締まりを開始した後に赤い毒薬が大量に不法投棄され、影響を受けた虫や植物から小鳥や小動物、草食動物、そして肉食動物へと移った。イグルド兄様を襲った個体は、狩猟祭の運営陣がサプライズとして用意していた。あのような事態になり、慌てて隠蔽しようとしたが最終的に罰せられた。なお、その個体がいたとされる地域は封鎖され、一掃作戦が行われた。なお、兄様から離れた護衛達の行方は分かっていない。
1つ目と3つ目は解剖や解析が行えていない為、同じと言う可能性もあるが、外見の違いから一旦分けられている。
その同じかもしれない理由も、まぁ複雑で……
なんだ、これ。
ゲームのストーリーでは〈悪い魔王を倒して世界を平和に!〉みたいな単純明快な話だったのに、どうしてこんな複雑になっているの。ある程度年を取って遊び直して、そのストーリーの奥行きに気付くのは、確かに有るけどさ……
ロカ・シカラの話から、この世界は想像以上に複雑だと思っていたけれど、元凶の行動がややこしい。
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