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7章 氷塊は草原に憧れる
118話 赤黒い存在たち (視点変更)
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「神は確実に関与している。銀狐の1人が能力を使えなくなる程に傷を負わされ、唯一無二であるニアギスの空間魔術まで封じに掛かったのだからな」
これまでミューゼリアに対して裏から妨害を企てていた何らかの勢力が動き、アーダインと国王は協力し兵を送り処理を続けていた。当初は人、最近ではホムンクルスも混じり始めていた。
広範囲の警戒の為に千里眼を持つ銀狐を置いていたが、カルトポリュデと遭遇後に一時的に使用できなくなる程の傷を負った。ニアギスへの負担が増した為に虫を操る銀狐を配属させた矢先、相手は魔術自体を封じ、より殺意の高い道具で殺しにかかった。これまで銀狐の能力は、手練れの魔術師が仮に察知はできても対処不可能なはずだった。
相手は、確実にこちらの有力な手駒を潰しに掛かっている。
今回はニアギスが機転を利かせ、逃亡を強行したおかげで事なきを得たが、次がどうなるか予測がつかない。
「神がレフィード殿へ与えた試練、か。800年前の再来は不可能と判断したのだろうか」
国王はそう言いながら、資料のページを捲る。
「戦争を起こした方が、負の想念は爆発的に増えるはずだ」
「そのきっかけ作りのホムンクルスなのだろう。一つの鐘が鳴らされれば、戦争は簡単に始まる」
ホムンクルスの情報源である人間を殺さず生かし続ければ、負の想念が永続的に湧くとは限らない。人間の思考は、体力と同様に消耗と回復を繰り返す。消耗し続ければいずれ無気力となり、考える事を放棄し、廃人となる。そうなればホムンクルスの材料へとまわされる。
残忍であり外道な行為だ。けれど、それを人間が考えつかないとは言い難い。
自分が、家族が、豊かで安全であれば後は食い潰す。自分達以外は、人間ではない。自分達以外は、人間の形をした〈何か〉だと考える。人間が人間を物として消費するなんて、いつの時代も良くあることだ。
この平和な時代であってもそれは変わらず、獲物に狙いを定める蛇のように静かにこちらを見ている。
「今回は司令役が無意識に核の情報を拒絶した結果、歪曲された命令に困惑した他のホムンクルス達が暴走しシャーナ達を襲った。不完全である為に対処が出来たが、今後は培われた実験結果の元、新たなホムンクルスが作り出されるのは確実だ。次は何処かの貴族や将校が狙われる」
記憶の転写に関し、エレウスキー商会の当主やサージェルマンのように事情を抱えた人物だったからこそ発覚した。ここから更に技術が向上すれば、完全に人間と見分けがつかなくなる。サージェルマンの解離性同一症による特異な環境下から生じた本人の記憶と核に刻まれた命令との分離、拮抗し暴走した事例は今後起きない。
「国を掌握するにしても、ホムンクルスでは長くは続かない。量産しようがいつかは資源が尽きる。長期で見れば、人間の方が安く済むと考えられる程だ」
ロレンベルグには、計画性はあっても後先考えず消費している様にも見えた。
核によって寿命は異なるが、記録ではホムンクルスは10年も生きれば体に限界が生じる。数十万体を数年ごとに作り替えねば、国としての周辺諸国からの体裁は保てず、機能は失われる。その資源を工面するためには、山の1つ2つは消滅する。侵食し、掌握し、食いつぶし、足りなくなれば次の国へと赴く。滅亡の言葉がふさわしいが、得られるものが何もない。
「赤い光と魔物だけ見れば、負の想念を大量に集めるのは妖精王復活の予兆だが違うのだろう?」
ロレンベルグは、牙獣の王冠での出来事が抜粋された資料のページに目を向ける。
「今回レフィード殿が精霊王の遺物の力を使用した事により、可能性が極めて低くなった。彼等は対存在だと聞く。精霊王側の遺体が無くなれば、あちらも消えるそうだ」
妖精王の遺体を実際にこの目で見なければ安心はできないが、800年を当然のように生き抜いたカルトポリュデの証言は誰よりも説得力がある。レフィードが遺物を所持したのも、彼等の助言を受けて内包する力を継承したのだ。
アーダイン自身もその報告を聞いた時には驚きはしたが、特に問題は無いと判断した。ミューゼリアが牙獣の王冠を出た後、アンジェラが数回に渡って再調査を行っていたからだ。環境は一連の事件から回復し始め、魔物達は過敏な動きや兆候は完全に無くなったと報告書に綴られていた。遺物の消失、新たな精霊王へと力の継承する事が、正解であるのだと既に無言で示されていた。
「裂け目から発せられた赤い光に関して、ホムンクルスと繋がりがあるならば牙獣の王冠の魔方陣の新型となる。それを視野に入れ、被害者捜索と共にエレウスキー商会が出店している町と村、道路を調査しなければならない」
サージェルマンが核からの命令を拒絶したと同時に発生した地震。それによって発生した裂け目から、赤い光が発生した。神脈とほぼ同じ位置にあり、赤黒い魔物が出現しただけでなく、消えて以降は正常に魔術が発動できるようになった。世界を巡る神脈は、生物の静脈と動脈のように2種類ある。そう新事実として捉えたいが、イリシュタリア王国に神脈を繋ぎ留める〈白鷲の鎖〉を持つ王家がその存在をこれまで認識していなかった。つまり、これは新しく作られたものとなる。
「隠された赤い光はゼノス達と同じように隠された魔方陣だけでなく、偽物もありそうだ。調査団を送る際には〈流行り病によって封鎖された町や村へ医療団体が移動している〉もしくは〈薬品の運送〉と称して、慎重に動くとしよう」
現在、浄化が可能な人物はミューゼリアのみ。赤い光を放つ裂け目の発生条件と赤黒い魔物の行動範囲を把握するには情報が少ないが、これ以上増やすわけにはいかない。エレウスキー商会は出店だけでなく、商品が卸されているだけの村や町もある。行方不明者の捜索と被害状況の調査も含めれば、かなり広範囲となる。何らかの刺激が加わりその都度裂け目が出現しては、国民たちへの被害が増え、ミューゼリアの行動の足枷となってしまう。それを避けるためにも慎重に、注意深く、多くの情報を手中に収め、臨機応変に対応し、対策を練れなければならない。
「赤い液体に関しては……以前アンジェラが採取した牙獣の王冠の土に付着した血と思しきものと類似点はあり、それが問題となっている」
ミューゼリアへと試験管をばら撒いた犯人は貧困層の子供だった。試験管を合図とともに投げるように頼まれ、報酬として少額の金と食事を貰っていた。そして、爆発させた術師は、暴走状態となったホムンクルスの中に存在した。捨て駒である1人と1体から得られる情報は少なく、製造所の捜索は難航している。
「負傷したニアギスの体から、砂粒程度の赤い結晶体が検出された」
ニアギスの懐から取り出され、アーダイン公爵へと手渡された小瓶の中には、目を凝らすと光に反射する赤い結晶の砂粒が僅かに見える。
負傷後治癒魔術を掛けている最中、その力を体が部分的に受け付けないことにニアギスは違和感を覚えた。そして、ミューゼリアが神脈の力を借りている最中に、空間魔術が使える事に気付くと、すぐに体内に入り込んだものを取り除いていた。
「牙獣の王冠の魔方陣の原動力とされる結晶体と同じ硬度と、成分が検出された。赤い液体からは強い酸と共に高濃度の魔素が含まれ、体内の魔力と結びつき結晶化現象が急速に発生すると実験結果が出た。ニアギスは空間魔術を体内に内包していたので最小限に抑えられたが、一般人では成す術無く浸食され絶命する」
「苦しませながら死ねば、負の想念も堪り易い。それを想定しての結晶現象か……」
本来の結晶化現象は、許容量を超える魔力が体内に入り込んでしまった際、身を守るために植物は実や葉、動物と魔物では角や毛等の抜け落ちる前提の部位にのみ発症する現象だ。竜のように長い年月をかけて体内に結晶体が精製される事例もあるが、稀であり、強制的に出来上がるものではない。
「この結晶体は脆く、手で握っただけで崩壊する。粉砕された状態で一定の魔力を与えるとスライム状になり、再び結晶体に戻ろうと魔力を求める性質がある」
小瓶へと魔力を注ぎ入れると、砂粒ほどの結晶体が解けて集合し、指先に乗る程の小さな赤黒いスライムを形成した。しばらく蛭のように動いていたが、魔力が無くなると再び砂粒へと戻った。
「魔物から魔物へと移ったのは、魔力を欲しての行動。負の想念の持つ飢餓の性質だ。生物を取り込み、結晶化現象を発生させるが、転倒や落下による衝撃で崩れ、散乱し、再び魔力を求める行動を繰り返していた。土に紛れ消えたのは、神脈の元へ向かおうと潜り、発せられる魔力によって結晶化しその場に残ったと推測される」
「魔素や細胞に近いように思えるな」
「そうだな。生物と呼べるか定かではないが、レンリオス嬢とニアギスを襲った赤黒い魔物はこの進化系と呼べる。レンリオス小子爵を襲おうとした魔物は毒薬系列の汚染だった事をふまえると、この結晶の存在を隠そうとしたようにも見える」
「人を殺すならば酸や毒でも良い所を、あえて証拠を残す様な真似をするとはな……本当に、犯人、犯神は良い性格をしている」
毒薬を含む商品の売買を禁止し、中毒者を治療し、魔物をただ討伐するだけでは、平和は訪れない。相手は着実に事を進めている。国王は苦笑しながらも、今後国に降りかかる災厄とも呼べる危機を予感した。
「両方に目を光らすのは、至難の業だな。まずは国民を内側から脅かす赤い毒薬とホムンクルスについて、対策を練ろうか。中毒者を出さない為にも霊草は限りがあり、ロレンベルグの薬もまだ量産体制には入っていない。何か秘策はあるかな?」
国王はロレンベルグの隣へと顔を向ける。
そこに座っていたのは、終始無言で話を聞いていたミューゼリアの父デュアス。そして、彼の傍らに待機する護衛兵リュカオンの姿があった。
これまでミューゼリアに対して裏から妨害を企てていた何らかの勢力が動き、アーダインと国王は協力し兵を送り処理を続けていた。当初は人、最近ではホムンクルスも混じり始めていた。
広範囲の警戒の為に千里眼を持つ銀狐を置いていたが、カルトポリュデと遭遇後に一時的に使用できなくなる程の傷を負った。ニアギスへの負担が増した為に虫を操る銀狐を配属させた矢先、相手は魔術自体を封じ、より殺意の高い道具で殺しにかかった。これまで銀狐の能力は、手練れの魔術師が仮に察知はできても対処不可能なはずだった。
相手は、確実にこちらの有力な手駒を潰しに掛かっている。
今回はニアギスが機転を利かせ、逃亡を強行したおかげで事なきを得たが、次がどうなるか予測がつかない。
「神がレフィード殿へ与えた試練、か。800年前の再来は不可能と判断したのだろうか」
国王はそう言いながら、資料のページを捲る。
「戦争を起こした方が、負の想念は爆発的に増えるはずだ」
「そのきっかけ作りのホムンクルスなのだろう。一つの鐘が鳴らされれば、戦争は簡単に始まる」
ホムンクルスの情報源である人間を殺さず生かし続ければ、負の想念が永続的に湧くとは限らない。人間の思考は、体力と同様に消耗と回復を繰り返す。消耗し続ければいずれ無気力となり、考える事を放棄し、廃人となる。そうなればホムンクルスの材料へとまわされる。
残忍であり外道な行為だ。けれど、それを人間が考えつかないとは言い難い。
自分が、家族が、豊かで安全であれば後は食い潰す。自分達以外は、人間ではない。自分達以外は、人間の形をした〈何か〉だと考える。人間が人間を物として消費するなんて、いつの時代も良くあることだ。
この平和な時代であってもそれは変わらず、獲物に狙いを定める蛇のように静かにこちらを見ている。
「今回は司令役が無意識に核の情報を拒絶した結果、歪曲された命令に困惑した他のホムンクルス達が暴走しシャーナ達を襲った。不完全である為に対処が出来たが、今後は培われた実験結果の元、新たなホムンクルスが作り出されるのは確実だ。次は何処かの貴族や将校が狙われる」
記憶の転写に関し、エレウスキー商会の当主やサージェルマンのように事情を抱えた人物だったからこそ発覚した。ここから更に技術が向上すれば、完全に人間と見分けがつかなくなる。サージェルマンの解離性同一症による特異な環境下から生じた本人の記憶と核に刻まれた命令との分離、拮抗し暴走した事例は今後起きない。
「国を掌握するにしても、ホムンクルスでは長くは続かない。量産しようがいつかは資源が尽きる。長期で見れば、人間の方が安く済むと考えられる程だ」
ロレンベルグには、計画性はあっても後先考えず消費している様にも見えた。
核によって寿命は異なるが、記録ではホムンクルスは10年も生きれば体に限界が生じる。数十万体を数年ごとに作り替えねば、国としての周辺諸国からの体裁は保てず、機能は失われる。その資源を工面するためには、山の1つ2つは消滅する。侵食し、掌握し、食いつぶし、足りなくなれば次の国へと赴く。滅亡の言葉がふさわしいが、得られるものが何もない。
「赤い光と魔物だけ見れば、負の想念を大量に集めるのは妖精王復活の予兆だが違うのだろう?」
ロレンベルグは、牙獣の王冠での出来事が抜粋された資料のページに目を向ける。
「今回レフィード殿が精霊王の遺物の力を使用した事により、可能性が極めて低くなった。彼等は対存在だと聞く。精霊王側の遺体が無くなれば、あちらも消えるそうだ」
妖精王の遺体を実際にこの目で見なければ安心はできないが、800年を当然のように生き抜いたカルトポリュデの証言は誰よりも説得力がある。レフィードが遺物を所持したのも、彼等の助言を受けて内包する力を継承したのだ。
アーダイン自身もその報告を聞いた時には驚きはしたが、特に問題は無いと判断した。ミューゼリアが牙獣の王冠を出た後、アンジェラが数回に渡って再調査を行っていたからだ。環境は一連の事件から回復し始め、魔物達は過敏な動きや兆候は完全に無くなったと報告書に綴られていた。遺物の消失、新たな精霊王へと力の継承する事が、正解であるのだと既に無言で示されていた。
「裂け目から発せられた赤い光に関して、ホムンクルスと繋がりがあるならば牙獣の王冠の魔方陣の新型となる。それを視野に入れ、被害者捜索と共にエレウスキー商会が出店している町と村、道路を調査しなければならない」
サージェルマンが核からの命令を拒絶したと同時に発生した地震。それによって発生した裂け目から、赤い光が発生した。神脈とほぼ同じ位置にあり、赤黒い魔物が出現しただけでなく、消えて以降は正常に魔術が発動できるようになった。世界を巡る神脈は、生物の静脈と動脈のように2種類ある。そう新事実として捉えたいが、イリシュタリア王国に神脈を繋ぎ留める〈白鷲の鎖〉を持つ王家がその存在をこれまで認識していなかった。つまり、これは新しく作られたものとなる。
「隠された赤い光はゼノス達と同じように隠された魔方陣だけでなく、偽物もありそうだ。調査団を送る際には〈流行り病によって封鎖された町や村へ医療団体が移動している〉もしくは〈薬品の運送〉と称して、慎重に動くとしよう」
現在、浄化が可能な人物はミューゼリアのみ。赤い光を放つ裂け目の発生条件と赤黒い魔物の行動範囲を把握するには情報が少ないが、これ以上増やすわけにはいかない。エレウスキー商会は出店だけでなく、商品が卸されているだけの村や町もある。行方不明者の捜索と被害状況の調査も含めれば、かなり広範囲となる。何らかの刺激が加わりその都度裂け目が出現しては、国民たちへの被害が増え、ミューゼリアの行動の足枷となってしまう。それを避けるためにも慎重に、注意深く、多くの情報を手中に収め、臨機応変に対応し、対策を練れなければならない。
「赤い液体に関しては……以前アンジェラが採取した牙獣の王冠の土に付着した血と思しきものと類似点はあり、それが問題となっている」
ミューゼリアへと試験管をばら撒いた犯人は貧困層の子供だった。試験管を合図とともに投げるように頼まれ、報酬として少額の金と食事を貰っていた。そして、爆発させた術師は、暴走状態となったホムンクルスの中に存在した。捨て駒である1人と1体から得られる情報は少なく、製造所の捜索は難航している。
「負傷したニアギスの体から、砂粒程度の赤い結晶体が検出された」
ニアギスの懐から取り出され、アーダイン公爵へと手渡された小瓶の中には、目を凝らすと光に反射する赤い結晶の砂粒が僅かに見える。
負傷後治癒魔術を掛けている最中、その力を体が部分的に受け付けないことにニアギスは違和感を覚えた。そして、ミューゼリアが神脈の力を借りている最中に、空間魔術が使える事に気付くと、すぐに体内に入り込んだものを取り除いていた。
「牙獣の王冠の魔方陣の原動力とされる結晶体と同じ硬度と、成分が検出された。赤い液体からは強い酸と共に高濃度の魔素が含まれ、体内の魔力と結びつき結晶化現象が急速に発生すると実験結果が出た。ニアギスは空間魔術を体内に内包していたので最小限に抑えられたが、一般人では成す術無く浸食され絶命する」
「苦しませながら死ねば、負の想念も堪り易い。それを想定しての結晶現象か……」
本来の結晶化現象は、許容量を超える魔力が体内に入り込んでしまった際、身を守るために植物は実や葉、動物と魔物では角や毛等の抜け落ちる前提の部位にのみ発症する現象だ。竜のように長い年月をかけて体内に結晶体が精製される事例もあるが、稀であり、強制的に出来上がるものではない。
「この結晶体は脆く、手で握っただけで崩壊する。粉砕された状態で一定の魔力を与えるとスライム状になり、再び結晶体に戻ろうと魔力を求める性質がある」
小瓶へと魔力を注ぎ入れると、砂粒ほどの結晶体が解けて集合し、指先に乗る程の小さな赤黒いスライムを形成した。しばらく蛭のように動いていたが、魔力が無くなると再び砂粒へと戻った。
「魔物から魔物へと移ったのは、魔力を欲しての行動。負の想念の持つ飢餓の性質だ。生物を取り込み、結晶化現象を発生させるが、転倒や落下による衝撃で崩れ、散乱し、再び魔力を求める行動を繰り返していた。土に紛れ消えたのは、神脈の元へ向かおうと潜り、発せられる魔力によって結晶化しその場に残ったと推測される」
「魔素や細胞に近いように思えるな」
「そうだな。生物と呼べるか定かではないが、レンリオス嬢とニアギスを襲った赤黒い魔物はこの進化系と呼べる。レンリオス小子爵を襲おうとした魔物は毒薬系列の汚染だった事をふまえると、この結晶の存在を隠そうとしたようにも見える」
「人を殺すならば酸や毒でも良い所を、あえて証拠を残す様な真似をするとはな……本当に、犯人、犯神は良い性格をしている」
毒薬を含む商品の売買を禁止し、中毒者を治療し、魔物をただ討伐するだけでは、平和は訪れない。相手は着実に事を進めている。国王は苦笑しながらも、今後国に降りかかる災厄とも呼べる危機を予感した。
「両方に目を光らすのは、至難の業だな。まずは国民を内側から脅かす赤い毒薬とホムンクルスについて、対策を練ろうか。中毒者を出さない為にも霊草は限りがあり、ロレンベルグの薬もまだ量産体制には入っていない。何か秘策はあるかな?」
国王はロレンベルグの隣へと顔を向ける。
そこに座っていたのは、終始無言で話を聞いていたミューゼリアの父デュアス。そして、彼の傍らに待機する護衛兵リュカオンの姿があった。
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