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六章 霧に消える別れ結びの冬
エピローグ
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太陽と月が巡り、巡る。星が煌めき、旅人へ行くべき道を指し示す。
雪解けを迎え、本来の色彩を取り戻した世界は、広く、美しくもあり醜くもある。
傷付ける多くの存在や、目を逸らしたくなる惨劇を目にした。
それと同じ、それ以上に、尊く愛しい存在をゼネスは目にしてきた。
転生の剣を携え大地を駆け抜け、海を越え、世界に四季をもたらす度に、色付く全てが愛しい。
多くの星が集まり、川を作る様に、ゼネスの中の光は更に輝きを増す。
一つ、また一つと手の平に乗せる様に、積み重ねていく記憶とその思いに、ゼネスは歓喜し、世界に生まれてくる生命たちを祝福する。
翡翠の声は春を呼び、身体の熱が夏を連れ、熱が消える最中に秋が舞い降りる。
広がる世界を認識する度に、同時に愛する神へと想いが募る。
銀色の美しき冥界の王。
次に会う時、どんな話をしよう。
貴方に知らない世界を語り尽くし、嬉しそうに微笑む顔が見たい。
声が聞きたい。その手に触れたい。その無防備な寝顔を眺め、幸せを噛み締めたい。
貴方が貴方でいてくれることが、何よりの便りであり、勇気を与えてくれる。
この刹那の瞬間を生きていると実感する。
そして。やがて。
月と太陽が巡り、世界に鐘が鳴る。
ゼネスは冥界の神殿へと足を踏み入れると共に、冬が訪れる。
待ちわびていたゼネスは、最深部に聳える館へと歩き出す。
浮遊島の楽園。
果てなく広がる草原。
永劫の監獄。
変わりなく、停滞する世界の中、ただ愛しい姿を探す。
数多の亡霊達をすり抜け、辿り着いたのは玉座の間。
あの時と同じように、ゼネスは足を踏み入れる。
「ゼネス」
月下美人を模した金の髪飾りに彩られた銀の髪。
再会の喜びに頬を薄桃色に染め、微笑む愛しき冥界の王。
ずっと聞きたかったその声に、ゼネスの瞳は潤む。
「シャルシュリア!」
駆け抜ける風に花が舞う。
愛する四季の神の腕に抱かれる冥界の王は、その温もりに目を細める。
冥界に、春が来る。
雪解けを迎え、本来の色彩を取り戻した世界は、広く、美しくもあり醜くもある。
傷付ける多くの存在や、目を逸らしたくなる惨劇を目にした。
それと同じ、それ以上に、尊く愛しい存在をゼネスは目にしてきた。
転生の剣を携え大地を駆け抜け、海を越え、世界に四季をもたらす度に、色付く全てが愛しい。
多くの星が集まり、川を作る様に、ゼネスの中の光は更に輝きを増す。
一つ、また一つと手の平に乗せる様に、積み重ねていく記憶とその思いに、ゼネスは歓喜し、世界に生まれてくる生命たちを祝福する。
翡翠の声は春を呼び、身体の熱が夏を連れ、熱が消える最中に秋が舞い降りる。
広がる世界を認識する度に、同時に愛する神へと想いが募る。
銀色の美しき冥界の王。
次に会う時、どんな話をしよう。
貴方に知らない世界を語り尽くし、嬉しそうに微笑む顔が見たい。
声が聞きたい。その手に触れたい。その無防備な寝顔を眺め、幸せを噛み締めたい。
貴方が貴方でいてくれることが、何よりの便りであり、勇気を与えてくれる。
この刹那の瞬間を生きていると実感する。
そして。やがて。
月と太陽が巡り、世界に鐘が鳴る。
ゼネスは冥界の神殿へと足を踏み入れると共に、冬が訪れる。
待ちわびていたゼネスは、最深部に聳える館へと歩き出す。
浮遊島の楽園。
果てなく広がる草原。
永劫の監獄。
変わりなく、停滞する世界の中、ただ愛しい姿を探す。
数多の亡霊達をすり抜け、辿り着いたのは玉座の間。
あの時と同じように、ゼネスは足を踏み入れる。
「ゼネス」
月下美人を模した金の髪飾りに彩られた銀の髪。
再会の喜びに頬を薄桃色に染め、微笑む愛しき冥界の王。
ずっと聞きたかったその声に、ゼネスの瞳は潤む。
「シャルシュリア!」
駆け抜ける風に花が舞う。
愛する四季の神の腕に抱かれる冥界の王は、その温もりに目を細める。
冥界に、春が来る。
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