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二章 転生の剣と春の若葉
14.青白く光る花畑の中
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苦園の保管庫には探している剣は無く、その後100の部屋を掃除し終えた。疲れたゼネスは客室に戻ろうと思い始める。
客室を頭の中で想像しようとした時、剣の捜索隊の事をふと思い出した。
以前シャルシュリアから送られて来た手紙には、剣の捜索に人員を割くのは限りがあると書かれていた。つまりは、少数であるが捜索隊が編成される。途方も無い広さの冥界を探すには、彼等との協力が必要不可欠だ。
隊が既に編成され行動しているのかは、シャルシュリアに確認を取らなければ分からないならない。亡霊から教えてもらうのも手だが、保管庫の鍵についてちゃんとお礼が言えていないので、直接伝えたい。
今は玉座の間にいるのだろうか?
それとも前の様に地上の神殿にいるのだろうか?
忙しいはずだから会いに行くのは辞めておこうか、と思いながら部屋を移動しようと、次の部屋へ足を踏み入れた。
床に足が着地する瞬間と目を瞬かせる瞬間が合致し、ゼネスは苦園から別の場所へと飛ばされた。
「うぉ!?」
柔らかな草に足を滑らせ、ゼネスは壮大に転び、掃除道具が散乱する。
「いったぁ……な、なんだ……?」
ゼネスは起き上がり、周囲をも渡す。
そこは、開けた洞窟の中に咲き誇る青白く光る花の群生地帯。長く伸びた茎の先に咲く小さくまとまった花はアガパンサスに似ており、地面に近くに葉を茂らせている。
どこか、あの夜に見た睡蓮の情景を思い起こされる景色だ。
また葉に足を滑らせないよう、地面にしっかりと足を置くよう意識をしながら、散らばってしまった掃除道具を手に取ったゼネスは歩き出した。
周りの景色から苦園、草園、楽園の環境とは該当せず、館のある第四層であるのが伺える。
首飾りの効力が暴走したのではない。各層の部屋は逃亡者が脱出経路を作らせないために、その都度別の場所へと繋がる。部屋と部屋の間は冥界の狭間に位置し、何処にでも繋がる状態が一瞬生じる。それと首飾りの発動条件が合致し、シャルシュリアを思い浮かべていたゼネスを第四層まで移動させた。
運が良いのか分からないが、今後は物思いに耽りながら移動しないようゼネスは心がける事にした。
しばらく歩いていると、川のせせらぎが聞こえて来た。水路があるならば、それを辿れば館へ戻れると、ゼネスは急いで向かう。
進む程に花の咲く量が増え、妖精や蛍の様な青い光が舞い、ゼネスの周りを飛んだかと思うと、洞窟の暗闇へと溶けて行った。
さらに進む程に光の量は増し、せせらぎの音が近づいて来たが、妙な胸騒ぎを感じる。
「あっ……」
ゼネスは足を止める。
花畑の中に、シャルシュリアが佇んでいる。
青白く光の中心。花々の中に、金の飾りと下ろされた美しい銀の長い髪が映え、一枚の絵画のように幻想的な光景が広がっている。
「シャルシュ」
名前を呼ぼうとしたゼネスだが、言葉を詰まらせる。
長い髪を乱暴に右手でまとめ上げ、シャルシュリアは左手に持つ白金に輝く短剣を首に宛がう。
まるで、自らの首を切るような。
「えっ……」
白い肌に、一筋の赤い線が流れ落ちるのが見えた。
世界が震える様な、何か巨大なうねりを感じた。
客室を頭の中で想像しようとした時、剣の捜索隊の事をふと思い出した。
以前シャルシュリアから送られて来た手紙には、剣の捜索に人員を割くのは限りがあると書かれていた。つまりは、少数であるが捜索隊が編成される。途方も無い広さの冥界を探すには、彼等との協力が必要不可欠だ。
隊が既に編成され行動しているのかは、シャルシュリアに確認を取らなければ分からないならない。亡霊から教えてもらうのも手だが、保管庫の鍵についてちゃんとお礼が言えていないので、直接伝えたい。
今は玉座の間にいるのだろうか?
それとも前の様に地上の神殿にいるのだろうか?
忙しいはずだから会いに行くのは辞めておこうか、と思いながら部屋を移動しようと、次の部屋へ足を踏み入れた。
床に足が着地する瞬間と目を瞬かせる瞬間が合致し、ゼネスは苦園から別の場所へと飛ばされた。
「うぉ!?」
柔らかな草に足を滑らせ、ゼネスは壮大に転び、掃除道具が散乱する。
「いったぁ……な、なんだ……?」
ゼネスは起き上がり、周囲をも渡す。
そこは、開けた洞窟の中に咲き誇る青白く光る花の群生地帯。長く伸びた茎の先に咲く小さくまとまった花はアガパンサスに似ており、地面に近くに葉を茂らせている。
どこか、あの夜に見た睡蓮の情景を思い起こされる景色だ。
また葉に足を滑らせないよう、地面にしっかりと足を置くよう意識をしながら、散らばってしまった掃除道具を手に取ったゼネスは歩き出した。
周りの景色から苦園、草園、楽園の環境とは該当せず、館のある第四層であるのが伺える。
首飾りの効力が暴走したのではない。各層の部屋は逃亡者が脱出経路を作らせないために、その都度別の場所へと繋がる。部屋と部屋の間は冥界の狭間に位置し、何処にでも繋がる状態が一瞬生じる。それと首飾りの発動条件が合致し、シャルシュリアを思い浮かべていたゼネスを第四層まで移動させた。
運が良いのか分からないが、今後は物思いに耽りながら移動しないようゼネスは心がける事にした。
しばらく歩いていると、川のせせらぎが聞こえて来た。水路があるならば、それを辿れば館へ戻れると、ゼネスは急いで向かう。
進む程に花の咲く量が増え、妖精や蛍の様な青い光が舞い、ゼネスの周りを飛んだかと思うと、洞窟の暗闇へと溶けて行った。
さらに進む程に光の量は増し、せせらぎの音が近づいて来たが、妙な胸騒ぎを感じる。
「あっ……」
ゼネスは足を止める。
花畑の中に、シャルシュリアが佇んでいる。
青白く光の中心。花々の中に、金の飾りと下ろされた美しい銀の長い髪が映え、一枚の絵画のように幻想的な光景が広がっている。
「シャルシュ」
名前を呼ぼうとしたゼネスだが、言葉を詰まらせる。
長い髪を乱暴に右手でまとめ上げ、シャルシュリアは左手に持つ白金に輝く短剣を首に宛がう。
まるで、自らの首を切るような。
「えっ……」
白い肌に、一筋の赤い線が流れ落ちるのが見えた。
世界が震える様な、何か巨大なうねりを感じた。
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