12 / 22
第12話 道すがら
しおりを挟む
警察を出たときにはもう21時を過ぎていたので、舎六と和十は捜査を翌日にすることにして一度帰途についた。
次の日、若い刑事に「翻訳」してもらったメモを見ながら、ふたりはまず佐賀野の恋人の自宅へと向かった。
「和十くんはこの事件どう思う?」
「え」
舎六に突然聞かれて和十は驚きながら
「そう…ですねえ。強盗の仕業ということはないんでしょうか? 先生は最初からその線では捜査してなかったみたいですけども」
「ああ、なるほど」
舎六はうなずくと
「強盗というのはないと思うよ。まず、部屋が荒らされていなかった。物取りなら部屋を物色するだろうからね」
「あ、そうか」
「もうひとつ気になったのが、和十くんが見たという靴の存在だ。靴を脱いで上がる強盗もいなかろう」
「確かにそうですね。ていうか先生、僕の言うこと信じてくれてたんですね」
瞳をキラキラさせながら和十は舎六を見た。
「和十くんは嘘をつくような人じゃないからね」
「先生…」
和十は感動しながら目を潤ませた。
(おじさん、凄いね!)
瞳を輝かせながら舎六を見る少年の姿が和十に重なった。
そう。きみは、違えない…。
「何か言いました?」
「いいや、何も」
にこりと笑って舎六は答えたのだった。
次の日、若い刑事に「翻訳」してもらったメモを見ながら、ふたりはまず佐賀野の恋人の自宅へと向かった。
「和十くんはこの事件どう思う?」
「え」
舎六に突然聞かれて和十は驚きながら
「そう…ですねえ。強盗の仕業ということはないんでしょうか? 先生は最初からその線では捜査してなかったみたいですけども」
「ああ、なるほど」
舎六はうなずくと
「強盗というのはないと思うよ。まず、部屋が荒らされていなかった。物取りなら部屋を物色するだろうからね」
「あ、そうか」
「もうひとつ気になったのが、和十くんが見たという靴の存在だ。靴を脱いで上がる強盗もいなかろう」
「確かにそうですね。ていうか先生、僕の言うこと信じてくれてたんですね」
瞳をキラキラさせながら和十は舎六を見た。
「和十くんは嘘をつくような人じゃないからね」
「先生…」
和十は感動しながら目を潤ませた。
(おじさん、凄いね!)
瞳を輝かせながら舎六を見る少年の姿が和十に重なった。
そう。きみは、違えない…。
「何か言いました?」
「いいや、何も」
にこりと笑って舎六は答えたのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
量子の檻 - 遺言の迷宮
葉羽
ミステリー
天才高校生探偵の神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美とともに、不可解な遺言の謎に挑む。量子暗号技術を駆使した遺言は、解読されるたびに新たな謎を生み出し、葉羽たちを現実と幻想が交錯する世界へと誘う。彼らは遺言の真意を追う中で、自身の過去と向き合い、互いの感情を探り合う。しかし、遺言の背後に潜む恐ろしい真実が、二人の運命を思わぬ方向へ導いていく。
退屈な日常に潜む謎
葉羽
ミステリー
神藤葉羽の鋭い観察眼が捉えた、学園祭準備委員会の不可解な動き。彼の推理力が冴え渡る中、望月彩由美との何気ない会話が思わぬ展開を見せる。葉羽の退屈な日常に、突如として訪れる予期せぬ事態。学園祭の資金が消失し、会計係の山田が失踪。葉羽の推理本能が目覚める瞬間だ。
ロクさんの遠めがね ~我等口多美術館館長には不思議な力がある~
黒星★チーコ
ミステリー
近所のおせっかいおばあちゃんとして認知されているロクさん。
彼女には不思議な力がある。チラシや新聞紙を丸めて作った「遠めがね」で見ると、何でもわかってしまうのだ。
また今日も桜の木の下で出会った男におせっかいを焼くのだが……。
※基本ほのぼの進行。血など流れず全年齢対象のお話ですが、事件物ですので途中で少しだけ荒っぽいシーンがあります。
※主人公、ロクさんの名前と能力の原案者:海堂直也様(https://mypage.syosetu.com/2058863/)です。
私は秘密を持っている
つっちーfrom千葉
ミステリー
私は心中に誰にも知られたくない、ある大きな秘密を持っている。それがこの世に存在するために、各国の深部を牛耳る、政治家や官僚、大企業の幹部でさえ、一介のサラリーマンに過ぎない、この私に対して、一目を置かざるを得ないのである。しかし、この重すぎる秘密は、今や肉体や精神の成長とともに、際限なく肥大化している。このままでは、やがて、私の心をも蝕むようになるだろう。大学病院の精神医療でも、愛する家族でも、私の悩みを根本的に解決することなどできない。いっそ、秘密の全てを誰かに打ち明けてしまったほうが、自分を救うことには繋がるのかもしれない。秘密を早く知りたいと私に迫ってくる、あさましい人々に追われているうちに、なぜか、そう考えるようになっていたのだ……。
【完結】24時間のアユライ~エレベーターの中の殺人
握夢(グーム)
ミステリー
プチ本格?二つの密室トリックを暴け!!
「下に行って来る」と言って、十一階からエレベーターに乗った男が一階に着くと死んでいた。男の乗ったエレベーターは高層階用で、十階から二階の間は止まらない。更にエレベーターの中からは、凶器の類は一切発見されなかった。
何者かが、下りて行くエレベーターの中に侵入し、一階に着く前に男を殺して再び外へ脱出したのか?
それとも、エレベーターに乗った男が、行き先ボタンを間違えて、自ら死界への直通ボタンを押してしまったのか?
―――密室殺人の謎。―――凶器の無い殺人。進展のないまま、捜査は暗礁に乗り上げようとしていた。
………と、そんな時、どんな事件も24時間以内に解決するという、伝説の警部補アユライと新米刑事ユーマの二人組が、殺人現場にやって来た!
VIVACE
鞍馬 榊音(くらま しおん)
ミステリー
金髪碧眼そしてミニ薔薇のように色付いた唇、その姿を見たものは誰もが心を奪われるという。そんな御伽噺話の王子様が迎えに来るのは、宝石、絵画、美術品……!?
硝子のカーテンコール
鷹栖 透
ミステリー
七年前の学園祭。演劇部のスター、二階堂玲奈は舞台から転落死した。事故として処理された事件だったが、七年の時を経て、同窓会に集まったかつての仲間たちに、匿名の告発状が届く。「二階堂玲奈の死は、あなたたちのうちの一人による殺人です。」 告発状の言葉は、封印されていた記憶を解き放ち、四人の心に暗い影を落とす。
主人公・斎藤隆は、恋人である酒井詩織、親友の寺島徹、そして人気女優となった南葵と共に、過去の断片を繋ぎ合わせ、事件の真相に迫っていく。蘇る記憶、隠された真実、そして、複雑に絡み合う四人の関係。隆は、次第に詩織の不可解な言動に気づき始める。果たして、玲奈を殺したのは誰なのか? そして、告発状の送り主の目的とは?
嫉妬、裏切り、贖罪。愛と憎しみが交錯する、衝撃のミステリー。すべての謎が解き明かされた時、あなたは、人間の心の闇の深さに戦慄するだろう。ラスト数ページのどんでん返しに、あなたは息を呑む。すべての真相が明らかになった時、残るのは希望か、それとも絶望か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる