転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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魔術師の館

宿命の対決②

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ガキイィン!

 互いの剣が激しくぶつかり合うと、両者は一旦間合いを取る。アスレイウは、一旦剣を鞘に納めると、再び剣を抜き出す。その時……刃こぼれした剣が真新しい剣へと復活していた。

 「フンッ!」

 ルディアンスも、魔剣を大きく振り下ろすと、剣の刃が復活して研ぎ澄まされたかの様な輝きを放つ。

 「戦闘再開と言ったところか!」

 再び両者は広間の中央で激しくぶつかり合う。

 キンッ!カキンッ!ガアンッ!

 凄まじい剣撃が繰り返し行われる。その剣裁きを見ていた皆は、唖然とした表情をしていた。

 「凄い……!王位継承大会の決勝戦を見ている様だわ!」

 「ああ……そうだな、俺も観客席で、何度も決勝戦は観衆したてよ。この決闘は、正にそれと同等か、それ以上といった処だ!」

 フォルサが、両者の戦いを見ながら言う。

 「ルディアンス……彼も、あと少しの処まで登って来た実力者だった。だが……ある日突然、彼が出なくなり、名前を聞かなくなった……と、思ったら、アイツは魔剣士になってしまったんだ。全く皮肉な話だ……」

 周囲の反応など気にせず、アスレイウはルディアンスに剣撃を撃ち交わす。

 「貴様の望んだ未来とは、そんなものだったのか!」

 「何ヲ……!」

 ガキンッ!

 ルディアンスが大きく剣を振り上げる。間合いを取ると、再びアスレイウは剣を振り翳す。

 「そんな醜い姿で、お前の愛したメイティが死後の世界で微笑んでくれると本気で思っているのか!」

 「ウルサイッ!ダマレ!」

 ルディアンスが怒りを込めて突進する。

 「貴様ニ、俺ノ何ガ分カル!」

 激しい猛攻を繰り出して、一瞬アスレイウがたじろぐが、直ぐに持ち直して斬撃を撃ち交わす。

 「貴様こそ、飛竜の仲間達を裏切っただろう!」

 その言葉にルディアンスが「ウッ……!」と、一瞬戸惑いを見せた。

 「皆がお前の仲間だった、その仲間の夢を希望を、あの時……貴様は奪い去り、打ち砕いたんだ!貴様は仲間の悲しむ姿を少しでも想像したか?お前の事を切に思っていたサーシャがどれだけ悲しんだか、貴様は少しでも想像したのか?」

 「グ……グヌヌ!」

 「今……僕は代理王になれたが……。それまで、どれだけ絶望し、周囲から嘲笑れたのか貴様は知る由もなかっただろう!貴様のせいで飛竜のグループが築き上げて来た名声も一気に失墜し、崖っぷちまで追い込まれて一度は解散寸前の窮地にまで達したんだ!」

 ルディアンスは、アスレイウの撃ち合いに少しずつ押され始めていた。

 「一体、どれだけお前は、仲間達や皆を失望させれば気が済むんだー!」

 その時、彼の脳裏に飛竜のメンバーと過ごした日々が甦り、アスレイウと王位継承権で励まし合っていた記憶が走馬灯の様に蘇る。

 何時も側にいて誰からも慕われるアスレイウ、自分が落ち込んだ時も支えになり、メイティの墓標の前で優しく声を掛けてくれた友人の言葉を思い出す。

 (飛竜のメンバーは皆、お前の仲間だ)

 それと同時に、彼の脳裏にメイティの最後の言葉が思い起こされる。

 (貴方は純粋で優しいけど……でも、何事にも真っ直ぐ過ぎるわ。だから……自分を失い易いから気を付けて……。誰よりも強くて優しいその力を人の為に役立て……、決して自分に負けないでね……)

 ベッドの上で彼女が最後に送った言葉を彼は思い出した。

 (メ……メイティ……)

 その瞬間、激しい剣撃に打ち負かされたルディアンスは、中央の間から弾き飛ばされて、壁際へと衝突する。その時、手にしていた魔剣が彼の手から離れて回転しながら転がり落ちる。

 「フウ……フウ……」流石のアスレイウも汗を流した状態で立っていた。

 「終わりだなルディンス、最後に苦しまない様に楽にさせてやる」

 「ウググ……」

 呻き声を漏らすルディアンスは、壁に衝突した時の激痛で体が思うように動けなかった。

 アスレイウが彼の側へと近付こうとした時だった。

 サリサの横を何かがサッと横切る。

 「え……リーミアちゃん?」

 リーミアは素早く移動してルディアンスの前に立ち、両手を広げて彼を庇う様に立った。

 「何のつもりだ?」

 普段は穏やかな表情のアスレイウが真剣な眼差しでリーミアを見つめる。

 「おやめ下さい、彼に打ち勝ったのだから、もう充分でしょ?」

 「何を言っている、コイツは君の聖魔剣を奪い、転生者の能力も封印した、言わば主犯でもあるのだ……それ以上に罪の無い者を殺めてきた。コイツの首は死に値する」

 「そうですが……でも、そのお陰で、私は貴方や、ここにいる素晴らしい仲間達とも出会えました。決して悪い事ばかりではありません」

 「そうかもしれんが、だが……コイツを生かしておけば、また同じ事をするかもしれん」

 「その前に、私自身が、改めて彼と決着を付けたいと思います。それに……」

 リーミアは真剣で、どこか物腰の優しい眼差しでアスレイウを見つめる。

 「貴方自身、彼を殺したい程……憎んではいないのでしょう?」

 その言葉にアスレイウは「う……」と、返答に迷った。

 (そうだった……アイツが魔剣に捕らわれた時、止めを刺せなかったのは殺したかったのでは無い……)

 その時の情景を彼は思い返し、自分の手を見つめる。

 (アイツを救いたかったんだ!)

 ずっと側にいて、何時でも笑い合える誰よりも最高の友で居て欲しかった……

 (君は、ずっと……僕の、いや……僕達皆の仲間だ)

 過去に自分が彼に向かって言った言葉が脳裏を横切る。

 彼が飛竜と言うグループを立ち上げて、数多の傭兵達が入隊し、様々な理由で脱退、除隊して行く中で、唯一ルディアンスだけが旗揚げの時から一緒だった、長い付き合いで、時に衝突し、時には笑い、悔し涙も流しながら支え合ってくれた、ただ1人の仲間だった。

 魔剣士になって一番のショックを受けたのは他ならないアスレイウだった。悲しみに暮れたサーシャを気遣い、自分が彼を救えなかったと嘆き、彼女が自殺未遂するのを止めたアスレイウは、一旦彼女を故郷へと帰した。

 その後、彼は代理王になった後も、ルディアンスの行方を追い続けていた。再び彼が現れたのを知り、アスレイウは今度こそルディアンスとの決着を着ける覚悟だった。

 そう思い返すと……アスレイウの目から自然と涙が流れ、彼は直ぐにそれをマントで拭き、後ろを振り向いた状態で皆に向かって言う。

 「コイツの処罰は国に任せるとしよう。誰かルディアンスに縄を掛けてくれ!」
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