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魔術師の館
展望回廊の戦い②
しおりを挟む館と……それに繋がる展望回廊、その周辺位置から、目の前にある入口らしき扉を見付けて、彼等一行は、再度館の中へと移動を開始する。
回廊のある位置付近に近付くと、上へと続く階段を見付けて上がって行く。建物内部の構造は一般的ではあったが、館の主が相当神経質だったのか、様々な場所にトラップや仕掛けが施されていた。
大概、その罠に掛かるのはエムランであり、最初はアメリが、罠に掛かったエムランに傷など癒していたが……何度も罠に掛かるのを見ていると、彼女は呆れた表情で溜息を吐きながら回復魔法を掛ける。
彼女はルファの側で「何となくシャリナの気持ちが分かる……」と、呟いた。
階段を進み続けていると、前方に扉が見えて来た。サリサは扉の前に立ち、ドアノブに手を掛けようとした時だった。彼女は振り返りエムランを見て「ちょっと、お願い」と、彼に対して目で合図をする。
「はい、はい……」
エムランは前に出て、ドアノブに手を掛ける。
するとーーー
バチッ!
軽い電撃が走り。
「うわッ、チィ!」
電気で、彼は急いで手を離した。
(なるほどね……)
そう頷きながらサリサがドアノブに手を掛けると、電気が発生せず普通に扉が開いた。
「え……?どう言う事?」
「多分、ドアを閉めた時に1度だけ罠が発生する仕掛けだったのよ。侵入者を近付けない様にさせる為、電気を発生させて驚かせる仕組みだったのよ。ただ……1回だけで、次に触っても電気は発生しない様な仕組みが大半だわ。何度も同じ効果を発生させるのは、かなりの高度な技術が必要になるからね……」
「すごーい!サリサ様!」
アメリが目を輝かせて言う。
「おい……そのトラップを身を持って体現された哀れな犠牲者には慰めの言葉もないのかよ?」
「ご苦労様」
「そんだけかよ⁉︎」
エムランは呆れた顔で叫んだ。
階段途中の扉を抜けて、一行は更にその先にある階段を目指した。
途中の窓ガラスを見ると、目的地である展望回廊が少しずつ近付いて来ているのが確認出来た。
「もう少しだな」
アスファードが呟く。
上の階に近付く時……ズドーン!後方から大きな音が響く。
衝撃音に驚いた皆は、窓ガラス越しから館の反対側へと視線を向けると、館の屋根一部が吹き飛び無くなっているのを目撃する。
「オイオイ……嘘だろう?相当な威力だぞ……あれは⁉︎」
「凄すぎるわ……」
フォルサとルファが驚いた表情で言う。
「ねえ、アーレスさんの応援には行かなくて良いの?」
ルビィがサリサに向かって言う。
「そうね……」
流石のサリサも少し驚いた様子で、返答に少し迷っていた。彼女が返答に迷っている時だった。屋根の無くなった箇所から、剣と剣がぶつかり合って、火花が飛び散る様子が確認出来た。
「まだ大丈夫そうだから、私達はリーミアちゃん達の救出と、残っている人質確保に努めましょう!」
そう言いながらもサリサは胸の中で少し不安な気持ちだった。
(お願い無事で居て……)
一行は更に階段を上って行き、展望回廊へと続く踊り場付近へと辿り着く。
階段を上り切った場所まで辿り着くと、その場所には十数匹の魔物達の姿があった。
巨体な体、手と足には鋭い爪、尖った嘴と、頭部には大きな角が生えており、全身は青黒く、背中には翼が生えていた。
「ギギギ……」
唸り声か言葉なのか分からない声を発して、彼等は互いの顔を見合わせる。
数匹の魔物達は、それぞれ皆違う武器を所有しており、棍棒、槍、ナイフ、長剣等……手にしていた。腰には鍵束の様な物をぶら下げていた。
皆は巨体な魔物を見て、本命は奴だと感じ取った。相手は悍ましい形相で、階段下から現れたものを睨み付ける。
「ギィ……ギギ!」
彼等の中で、とりわけ大きく人間達が被っている様な兜を頭に乗せた物が、他の魔物達に向かって指示を行っていた。その魔物は大きな剣を片手に、子分の様な者達を見て、サリサ、アスフォード達を指差して、大声で「ギー!」と、叫んだ。
それと同時に、魔物達が一斉に彼等に向かって突進して来る。
「掃除の時間か……」
そう言いながらアスファードが聖魔剣に手を掛けて、剣を鞘から抜こうとした時、ガキッと剣が鞘から抜け出せなかった。
「全く……制限回数に達してしまうとは……」
サリサも魔法剣に光の魔法を放とうとしたが、魔法効果が発せられなかった。
「こんな時に……」
アスファードが袋から魔法剣を取り出そうとしてると、1匹の魔物が飛び掛かって来た。
その直後……
ピュンッ!
1本の矢が魔物の肩を貫き、魔物が倒れてもがき苦しむ。そこへフォルサが飛び掛かり斧で魔物の首を斬った。
「アンタらは少し休んでてくれ!俺達にも少しは見せ場を作って貰わなければな!」
2人の前に、ルビィ、ルファ、エムラン、フォルサ、レトラが立ち並んだ。
サリサとアスファードの側にアメリが近付き、彼等に回復魔法を掛ける。
「今回は、彼等に場を譲りましょう」
それを聞いたサリサとアスファードは軽く笑みを浮かべて、彼等の戦いを見学する側に周る。
「彼等の戦い、拝見しよう」
その言葉と同時に戦闘が開始される。
「ヌアアー!」
エムランが自慢の大剣を振り下ろすが魔物は避ける。
「そっちに行ったぞ!」
エムランが叫ぶと「あいよ!」と、ルビィが魔法剣に雷の魔法を放ち、一撃で魔物を絶命させる。
「ほお、あの少年……魔法剣を使うのか、それも雷の魔法とは……」
アスファードは感心した様子で見ていた。
「へへへ、オイラ姉ちゃんと付き合うまで負けてられないんだ!」
それを聞いたアスファードはサリサを見て訪ねた。
「彼の言う姉ちゃんて誰なの?」
「さ……さあ……?」
サリサは敢えて顔を俯かせながら素知らぬフリをしながら答える。
更に戦闘は続き、ルファが魔物に槍で攻撃するが、相手の魔物は上手く攻撃を交わし、大きな翼で上空へと跳ね上がる。
「アッ!」
そう叫んだ時だった。後方からレトラが弓で魔物を射止め、相手の魔物は落下して絶命する。
「お見事!」
ルファがレトラに礼を言う。
その傍、フォルサが斧で敵と交戦していると、エムランが後方から敵の首を切り落とす。
「貴様!美味しいとこを奪いやがって!」
「へ……呑気に戦っているのが悪いんだ!」
そう言ってエムランが振り返ると、魔物が目の前に立っていて、剣を振り下ろして来た。直ぐにエムランは剣で応戦するが、相手の巨体に押されてしまう。
「ウググ……」
危うく押し潰されそうになる時、フォルサとルビィが、背後から攻撃して間一髪、エムランは助かった。
「ふう……すまん」
「油断しすぎだな……」
「まあ、一応礼は言っとくよ……」
エムランが視線を逸らしながら呟く。
……等と、破茶滅茶な戦闘をしている一行が、徐々に魔物の数を減らしていき、踊り場には大型の魔物だけになってしまった。
「年貢の納めどきだな」
余裕の表情で彼等は大型の魔物を取り囲む。
その様子を見ていたサリサとアスファードは何やら不安な表情をしていた。
「どうしたのですか?」
「何か変だ……」
「ええ……ちょっと、様子がおかしいわ」
「え!何……どう言う事?」
「完全に詰んでいる筈なのに……何故、あの魔物は何故あんなに余裕なんだ?」
その直後だった。
「キエエエー!」
大型の魔物が大きな叫び声を上げる、それと同時に踊り場付周辺からギャア、ギャア……無数の声が響き渡る。
「な……なんだ?」
皆が周囲を見回すと、周辺から大型の魔物と同じ体型の魔物達が数匹現れ彼等を取り囲んでしまう。
「う……嘘だろ⁉︎」
フォルサ達メンバーは完全に相手を追い詰めたと思われていたが……僅かな一瞬の隙に立場は形成逆転されてしまった。
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