転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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魔術師の館

甦る記憶①

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 「姫ー!姫様は何処ですかー⁉︎」

 少年近衛兵のセティオロスが、大声で後宮内を大声を出しながら走り回っていた。

 「どうしたんだ?」

 彼が大声を出している事に気付いた城内を警備してる騎士が声を掛ける。

 「リムア姫を探しているのです。午後から勉学の時間なのに、姿が全く見当たりません」

 「そうだったか……全く、あのお姫様は、結構お転婆だからな……」

 後宮内を抜け出して、見つからない様に隠れていたリムアが騎士とセティオロスが何やら話し合っている姿を見付ける。セティオロスと一緒にいる騎士は後宮では人気者で良い人と噂されている人物で、リムアも信頼している人物だった。

 (何を話しているのだろう?)

 騎士が何を話している様子が気になって岩場の陰から覗き見しようとする。

 「ん……?」

 何か気配を感じた騎士が岩場の方へと視線を向けた。それに気付いたリムアは慌てて岩場の影へと隠れる。

 (……おやあ……?)

 騎士は何かに気付いた様子で、しばらく考え込むとセティオロスに向かって話し掛ける。

 「リムア姫と言うのは、自分が言うのも何ですが……結構ワガママで、何かと周囲に問題の種をばら撒く事があるんだよね」

 (な……!)

 信頼していた筈の騎士の口から意外な発言がされてリムアは驚いた。

 「ま……まあ、確かに言われて見ると、そう思われる節もありますね……」

 騎士の意外な会話にセティオロスも少し驚いた口調で答える。

 「イタズラ好きで、結構周囲が驚いたり困ったりするのを見て楽しむ傾向があるのです。お姫様と言うよりも、小悪魔が人の皮を被った様な者ですね」

 「そ……それはちょっと、言い過ぎでは……」

 流石のセティオロスも少し困惑し始める。

 「大体、あの姫様は……」

 彼が何か言いかけた時だった。

 「ちょっとー!」

 流石のリムアも我慢の限界が来たのか、不貞腐れた表情で岩場の陰から飛び出して来て、騎士の前に現れる。

 「酷いじゃないですか!何でそこまで言われなきゃならないのよ!」

 「おやまあ……聞いておられたのですか?困ったなぁ、アハハ……」

 ムスッとした表情でリムアは騎士の顔を見ていた。

 「私は、イタズラはするけど、そんなに酷いことはしませんよ」

 「ほお……では、どんな事を?」

 騎士に問われたリムアはモジモジと恥ずかしそうに話し始める。

 「たとえば……その、物を隠したりして、皆んなが困って探し回ったりする程度で……」

 (いや、充分酷すぎるって……と、言うか、普通に後宮で働いて居る者がやったら、即刻辞職か牢獄行きだよ)

 セティオロスは心の中で呟いた。

 「なるほどね……では、私が先程申した事は取り消して、もう二度と姫様の悪口は言わないと約束すると同時に、姫様も私からの約束お願いできますか?」

 「ええ……良いわよ、どんな事ですか?」

 「分かりました。先ずは……人が困る様なイタズラはしない事と。あと勉学に励む事です」

 その言葉を聞いたリアムは少し気難しそうな表情をする。自分がしている事を取り上げられるのは少しつまらない様な気がしてならなかった。

 「ま……まあ、分かったわ約束する」

 「ありがとう、では……セティオロス君、君も一緒に勉学に参加して来てね」

 「え……何で僕が?」

 「彼女1人で受けるよりも、付き添いが居た方が励みになるからね」

 「うう……そんなぁ……」

 「ホラ、貴方も一緒に来なさい!」

 リアムが無理矢理彼の手を引っ張って、セティオロスと一緒に講習部屋へと向かった。

 彼女にとって大の苦手である勉学の、長いとも思われる授業が始まる。無理矢理付き添われて乗り気では無かったセティオロスであったが、勉学の授業は、彼にとってそれまで疑問に思われていた事が理解出来て、とても為になる時間でもあった。

 かたや……リアムは授業開始5分で、睡魔が襲って来てウツラ……ウツラと、瞼が重くなり、講師が何を話して居るのか全く理解出来なかった。

 授業が終わる頃には、机の上に頭を乗せた状態で、夢の中に入っていた。

 「姫様、起きてください姫様!」

 「ふあい……」

 口元に涎を垂らしながらリアムは顔を上げる。

 「あら、先生おはよう……」

 「おはよう……ではありません、授業中ずっと寝ていて、全く……」

 「とても有り難い説法感謝の至りにございます。おかげでとても良い夢を見られました」

 リアムは両手を合わせて深くお辞儀をする。

 それを見た講師の女性はハア……と深く溜息を吐きながら、少し髪を掻いてリアムを見つめた。

 「本日の勉学は終了します。なお宿題として今度の授業までに、こちらの羊皮紙に単語を書き込んで下さいね。宿題が出来なかったら、補習授業させますので……」

 そう言われて羊皮紙を10枚程手渡される。

 (え……こんなに⁉︎)

 そう思っていると、講師は部屋を出て行った。講師が居なくなるのを見計らってリアムは受け取った羊皮紙を全てセティオロスに渡した。

 「貴方全部やっておいてね」

 「ちょっと、どう言う事だよ!」

 「貴方近衛兵として付き添って居るのでしょ?じゃあ……私の代わりに宿題済ませて置いてね」

 「これは君が課されたものでしょ、自分がやらなきゃ……」

 「こう見えても、私忙しい身なの、貴方どうせ暇でしょ」
 
 「あのね……!」

 呆れた口調でセティオロスが何か言い掛けようとする前に、リアムは部屋を飛び出してしまう。

 「ちょ……ちょっと、姫様!」

 そう言いながらセティオロスが部屋を出ると、既にリアムの姿は見当たらなかった。

 「全く、何て姫様だ……本当に光の洗礼で紋様を授かった人なのか?」

 呆れた表情でセティオロスは受け取った羊皮紙を持って部屋を出て行く。彼は羊皮紙の束を抱えて後宮の廊下を歩いていると、目の前に先程の警備してる騎士と再び出会う。彼はセティオロスに気付くなり「やあ」と、陽気な声を掛ける。

 「あ……先程はどうも、え……と」

 「私はラメティアスと言うんだ。以後お見知りおきを」

 ラメティアスは軽く一礼をする。

 「セティオロスと言います。よろしく近衛兵で、姫の護衛係を務めてます」

 彼もラメティアスに向かって自己紹介をする。

 「なるほどね……ちなみに、その両手に担いでいるのは?」

「姫が講習を終えて、講師から宿題を出されたのですが、部屋から逃げ出したので、これから姫の部屋に持って行く途中です」

「それはご苦労様ですな」

 彼は陽気に笑う。

 そんなラメティアスを見て、ふとセティオロスは疑問に感じていた事を彼に尋ねた。

 「ラメティアスさんは、随分と姫の扱いに慣れていますね」

 「まあ……自分も昔は問題児だったから、多少……ああ言う少しつむじ曲りの扱いには慣れっこなんだよ。姫様も成長すれば大人しくなと思うよ」

 「そうでしたか……」

 「まあ……私からの助言としては、姫様みたいな性格には親切に接すると、逆に跳ね返りがあるから、むしろ少し意地悪っぽく接した方が効果的だよ」

 それを聞いたセティオロスは、先程の彼の振る舞いを思い出した。彼は敢えて意地悪そうに振る舞っていたんだと気付かされる。

 「なるほど……勉強になります」

 そう答えると、セティオロスはラメティアスに向かって深く礼して、その場を去って行った。立ち去る時彼はセティオロスに軽く手を振った。

 そんな囁やかな出来事からしばらくした、ある日の事だった。平穏な日々が過ぎている中、リムアは王国騎士団と一緒に城を出た。
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