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魔術師の館
魔術師の館④
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グゴオオーッ!
激しい咆哮と共にルガンの攻撃が来た。
体形、力とも、人間の非とは比べものにならない勢いのある猛攻だった。
ブンッ、バコォ!ブンッ、ズドォン!
リーミアやアルム達に向けて大きな棍棒を振りまし、激しく振り落とされた棍棒が地面や壁に当たり、地響きを鳴らし砂塵を周囲に撒き散らされ、破壊される音が週に響き渡る。
彼等は寸でのところで避けて、直撃を交わしているが、それでも……圧倒的にリーミア達は不利な状況下であった。
ルガンの攻撃を交わしながらリーミアは周囲を見回す。部屋に来るまでに、他に出口らしき場所は無かった。更に現時点でのメンバーは4人だが、実戦で活躍できるのはアルムと自分だけだった。ティオロは震えて本来の実力が発揮できなそうに見えた。シャリナは戦意喪失で、戦闘に加わりそうになさそうだった。
本来なら戦闘では前衛と後衛で、戦闘するのが理想だったが、回復系と前衛の両方リーミアがこなす事になった。野良狩り程度の魔物なら、それでも充分だったが、相手は他の魔物以上の強さだった。
相手の攻撃を交わした時、アルムがリーミアの側まで近付く。
「今の状況だと、我々が奴に勝てる割合はどの程度ですか?」
「そうね……多く見積もっても5割程度かしら……」
そう呟く瞬間、ルガノの棍棒が彼等の側に振り落とされる、それを上手く交わした彼等は、再び側に近寄る。
「3割弱の間違いでは?」
それを聞いたリーミアは軽く微笑んだ。
「それよりも、この付近に出口は無い見たいね」
「それが何か……?」
「アイツ、どうやって、この地下に入れたのかしら?」
「魔法の力で入ったとか?」
「それは有り得ないわ。仮に転移石で移動にするとなると、あの巨体だから、相当な大きさが必要になるはずよ。そんな大きな転移石聞いた事が無いわ。きっと何処かに出入りする場所があるはずよ」
それを聞いてアルムも納得した。その直後、ルガンの更なる攻撃でを交わしたアルムは、ある疑問に気付く。相手は地下の部屋とはいえ、壁付近からあまり遠ざかろうとはしなかった。自分達が部屋の外側まで離れると、相手は攻撃の手を止める。
(妙だな……)
その瞬間、アルムは相手の後ろの壁が一部分、色が変わっている事に気付いた。
(なるほどね……そう言う事か!)
「盟主殿、分かりましたよ!盟主殿の推測通り、出入り口から此奴入って来たのです。それにコイツは出入り口がある壁を守って居るんです!」
それを聞いたルガンは自分の秘密をしられて激怒して「ウヌゥ!」と、噴気を高めて逃げ惑う一派に対し、乱れ打ちの様な攻撃を繰り出す。
流石に彼等も予測不可能な攻撃には戸惑い、逃げるのに必死になる。その時リーミアは目の前に巨体な魔物に怯えてしまって立ち竦んでいるティオロの姿を見つける。
「逃げて!」
リーミアの声に気付いたティオロは、ルガンが自分に気付いて接近し攻撃仕掛けるのに気付いた、逃げるのが遅れたティオロは盾で相手の攻撃を交わすが……、その反動で彼は部屋の反対側まで弾き飛ばされる。
「イタタ……」
「大丈夫?」
ティオロが攻撃され、心配になったリーミアが彼の側に駆け寄る。彼が無事な様子を見てリーミアは安堵した。
「何とかね、それよりも……盾が壊れちゃったよ」
ティオロはリーミアと一緒に武器屋に行った時に購入した盾を見せる、ルガンのたった一撃で彼は大事にしていた盾が破壊されてしまった。その様子を見たリーミアはクスッと笑みを浮かべながら軽く首を振った。
「大丈夫、気にしないで。この戦いが終わったら、また……新しいの買いましょうね」
そう言いながらリーミアはティオロに回復魔法を掛ける。
そんな彼等の様子を片目に見ていたアルムが溜息を吐く。
(一応……俺も怪我してるんだけどね)
そう思いながら、アルムは怪我した左腕を布で巻く。彼等は部屋の外まで戻ると、ルガンは壁の側まで戻り彼等に攻撃するのを止める。
「こっちまで襲って来ないのが唯一の救いだね」
そんなアルムはリーミアを見るなり不機嫌そうな表情をする。
「盟主殿、貴女とそちらの少年との関係に口出すつもりはありませんが、せめて戦闘中は個人的関係はお控えください」
「ご……ごめんなさい、気をつけるわ」
アルムはそれ以上リーミアには何も言わなかった。
「あ……あのぉ」
彼等3人に忍び寄る様な感じでシャリナが戻って来た。
「私も参戦します……」
そうは言うが、シャリナはまだ少し震えている様子だった。
「大丈夫なの?」
「へ……平気です、皆が頑張っているのに、私だけ隅っこにいるのは失礼ですから!」
「ありがとう、貴女が戻って来てくれただけでも助かるわ」
正直リーミアとしては、それでも相手との力の差が大きいのは感じていた。長期戦に持って行って、光花のメンバーやサリサ達がここに来るまで奮闘すれば勝算があるかも知れないと、そう低い確率を想定した。
しかし……現在地が分からない状況で、皆が助けに来てくれる確率は低いと感じた。そもそも館にどれだけの魔物がいて、皆が何処にいるのかさえも把握出来てない。もしかしたら大広間で待機しているかも知れない。そう考えると、早めに合流する方が先決であると判断した。
「では……私が正面から魔法と聖魔剣で攻撃するから、アルムとティオロは、両側から回り込んで相手に攻撃をお願いね」
「分かりました。ちなみに……その作戦で勝てる確率は……?」
「まあ、3割強と言ったくらいかしら?」
リーミアの言葉にアルムは軽く微笑んだ。
3人が巨体な魔物に近付く後ろ姿を見て、シャリナは杖を強く握り締めて(お願い勝って!)と、強く心に祈った。
再び圧倒的力の差が違う戦闘が開始される。
リーミアが上級魔法並みの攻撃魔法を繰り出すが、相手にはほとんんど効果が無かった。敢えて相手の注意を自分に向けている程度しか効果が無かった。それでも……そのおかげで、アルムとティオロが両側から剣と熊手で攻撃出来る隙を与えた。
しかし……アルムの自慢の熊手が、相手の肉体を攻撃するも、頑丈な皮膚と濃い体毛に当たるとガンガンと、硬い音が響き、しまいには熊手の先端が欠けてしまった。
ティオロも剣で足を攻撃していたが、相手の頑丈な皮膚に剣が負けてしまい、パキッと剣が折れてしまう。
「ひええ……何て丈夫な体だよー!」
最終的にリーミアだけが頼みの綱となってしまうが、強力な魔法を使い続け、聖魔剣で応戦しているリーミア自身にも疲労と焦りがの色が見え始めていた。
ルガンの猛攻で聖魔剣で交わし、剣先に綻びが見えて、鞘に入れた時だった。剣を鞘から抜こうとした直後、ガキっと剣が鞘に収まって抜けなくなった。
「何で、こんな時に⁉︎」
『今のお主は疲労と焦りの症状が大きい、少し落ち着き体力を回復をしろ』
(そんな事言っている場合では無いのに……!)
戦局が圧倒的に不利な状況になって来た。その瞬間、リーミアは最後の切り札として、以前試練で使った『神光』を思い出す。
(あれに賭けてみよう。あの力なら絶対に)
そう思い込み、リーミアは魔法の杖を地面に突き刺した。
リーミアが意外な行動に出たのをアルムやシャリナ、ティオロを目を丸くして見た。
「どうしたんだ盟主殿は?」
「何をするの?」
皆が不思議な表情をする中、リーミアは祈るような姿勢で目を閉じて叫んだ。
「神光!」
そう叫んだが、彼女の体に何も変化は表れなかった。
「え……何で、どうして?」
そう慌てている時だった。
ルガンの強烈な一撃が飛び交う、彼女は慌てて魔法の杖で庇った。
バキッ!
魔法の杖が折れて、小さな身体が壁際まで弾き飛ばされる。
「ウグ……」
致命傷は逃れたが、全身に激痛が走って上手く立てなかった。
「コレデ終ワリダ!」
そう叫びながらルガンが鋭い爪を振り落とした。
「危ない!」
アルムが叫んだ、その直後だった。
バシュッ!
リーミアの目の前で何かが切り裂かれ、その血飛沫が彼女の頬に飛び散る。
「え……?」
一瞬目の前で何が起きたのか理解出来なかった少女は、しっかりと目を見開き前を見ると、巨体な魔物の爪で体を切り裂かれたティオロが、力無く彼女の前に倒れ込んだ。
「イヤァー!」
リーミアは悲痛な叫び声を上げた。
激しい咆哮と共にルガンの攻撃が来た。
体形、力とも、人間の非とは比べものにならない勢いのある猛攻だった。
ブンッ、バコォ!ブンッ、ズドォン!
リーミアやアルム達に向けて大きな棍棒を振りまし、激しく振り落とされた棍棒が地面や壁に当たり、地響きを鳴らし砂塵を周囲に撒き散らされ、破壊される音が週に響き渡る。
彼等は寸でのところで避けて、直撃を交わしているが、それでも……圧倒的にリーミア達は不利な状況下であった。
ルガンの攻撃を交わしながらリーミアは周囲を見回す。部屋に来るまでに、他に出口らしき場所は無かった。更に現時点でのメンバーは4人だが、実戦で活躍できるのはアルムと自分だけだった。ティオロは震えて本来の実力が発揮できなそうに見えた。シャリナは戦意喪失で、戦闘に加わりそうになさそうだった。
本来なら戦闘では前衛と後衛で、戦闘するのが理想だったが、回復系と前衛の両方リーミアがこなす事になった。野良狩り程度の魔物なら、それでも充分だったが、相手は他の魔物以上の強さだった。
相手の攻撃を交わした時、アルムがリーミアの側まで近付く。
「今の状況だと、我々が奴に勝てる割合はどの程度ですか?」
「そうね……多く見積もっても5割程度かしら……」
そう呟く瞬間、ルガノの棍棒が彼等の側に振り落とされる、それを上手く交わした彼等は、再び側に近寄る。
「3割弱の間違いでは?」
それを聞いたリーミアは軽く微笑んだ。
「それよりも、この付近に出口は無い見たいね」
「それが何か……?」
「アイツ、どうやって、この地下に入れたのかしら?」
「魔法の力で入ったとか?」
「それは有り得ないわ。仮に転移石で移動にするとなると、あの巨体だから、相当な大きさが必要になるはずよ。そんな大きな転移石聞いた事が無いわ。きっと何処かに出入りする場所があるはずよ」
それを聞いてアルムも納得した。その直後、ルガンの更なる攻撃でを交わしたアルムは、ある疑問に気付く。相手は地下の部屋とはいえ、壁付近からあまり遠ざかろうとはしなかった。自分達が部屋の外側まで離れると、相手は攻撃の手を止める。
(妙だな……)
その瞬間、アルムは相手の後ろの壁が一部分、色が変わっている事に気付いた。
(なるほどね……そう言う事か!)
「盟主殿、分かりましたよ!盟主殿の推測通り、出入り口から此奴入って来たのです。それにコイツは出入り口がある壁を守って居るんです!」
それを聞いたルガンは自分の秘密をしられて激怒して「ウヌゥ!」と、噴気を高めて逃げ惑う一派に対し、乱れ打ちの様な攻撃を繰り出す。
流石に彼等も予測不可能な攻撃には戸惑い、逃げるのに必死になる。その時リーミアは目の前に巨体な魔物に怯えてしまって立ち竦んでいるティオロの姿を見つける。
「逃げて!」
リーミアの声に気付いたティオロは、ルガンが自分に気付いて接近し攻撃仕掛けるのに気付いた、逃げるのが遅れたティオロは盾で相手の攻撃を交わすが……、その反動で彼は部屋の反対側まで弾き飛ばされる。
「イタタ……」
「大丈夫?」
ティオロが攻撃され、心配になったリーミアが彼の側に駆け寄る。彼が無事な様子を見てリーミアは安堵した。
「何とかね、それよりも……盾が壊れちゃったよ」
ティオロはリーミアと一緒に武器屋に行った時に購入した盾を見せる、ルガンのたった一撃で彼は大事にしていた盾が破壊されてしまった。その様子を見たリーミアはクスッと笑みを浮かべながら軽く首を振った。
「大丈夫、気にしないで。この戦いが終わったら、また……新しいの買いましょうね」
そう言いながらリーミアはティオロに回復魔法を掛ける。
そんな彼等の様子を片目に見ていたアルムが溜息を吐く。
(一応……俺も怪我してるんだけどね)
そう思いながら、アルムは怪我した左腕を布で巻く。彼等は部屋の外まで戻ると、ルガンは壁の側まで戻り彼等に攻撃するのを止める。
「こっちまで襲って来ないのが唯一の救いだね」
そんなアルムはリーミアを見るなり不機嫌そうな表情をする。
「盟主殿、貴女とそちらの少年との関係に口出すつもりはありませんが、せめて戦闘中は個人的関係はお控えください」
「ご……ごめんなさい、気をつけるわ」
アルムはそれ以上リーミアには何も言わなかった。
「あ……あのぉ」
彼等3人に忍び寄る様な感じでシャリナが戻って来た。
「私も参戦します……」
そうは言うが、シャリナはまだ少し震えている様子だった。
「大丈夫なの?」
「へ……平気です、皆が頑張っているのに、私だけ隅っこにいるのは失礼ですから!」
「ありがとう、貴女が戻って来てくれただけでも助かるわ」
正直リーミアとしては、それでも相手との力の差が大きいのは感じていた。長期戦に持って行って、光花のメンバーやサリサ達がここに来るまで奮闘すれば勝算があるかも知れないと、そう低い確率を想定した。
しかし……現在地が分からない状況で、皆が助けに来てくれる確率は低いと感じた。そもそも館にどれだけの魔物がいて、皆が何処にいるのかさえも把握出来てない。もしかしたら大広間で待機しているかも知れない。そう考えると、早めに合流する方が先決であると判断した。
「では……私が正面から魔法と聖魔剣で攻撃するから、アルムとティオロは、両側から回り込んで相手に攻撃をお願いね」
「分かりました。ちなみに……その作戦で勝てる確率は……?」
「まあ、3割強と言ったくらいかしら?」
リーミアの言葉にアルムは軽く微笑んだ。
3人が巨体な魔物に近付く後ろ姿を見て、シャリナは杖を強く握り締めて(お願い勝って!)と、強く心に祈った。
再び圧倒的力の差が違う戦闘が開始される。
リーミアが上級魔法並みの攻撃魔法を繰り出すが、相手にはほとんんど効果が無かった。敢えて相手の注意を自分に向けている程度しか効果が無かった。それでも……そのおかげで、アルムとティオロが両側から剣と熊手で攻撃出来る隙を与えた。
しかし……アルムの自慢の熊手が、相手の肉体を攻撃するも、頑丈な皮膚と濃い体毛に当たるとガンガンと、硬い音が響き、しまいには熊手の先端が欠けてしまった。
ティオロも剣で足を攻撃していたが、相手の頑丈な皮膚に剣が負けてしまい、パキッと剣が折れてしまう。
「ひええ……何て丈夫な体だよー!」
最終的にリーミアだけが頼みの綱となってしまうが、強力な魔法を使い続け、聖魔剣で応戦しているリーミア自身にも疲労と焦りがの色が見え始めていた。
ルガンの猛攻で聖魔剣で交わし、剣先に綻びが見えて、鞘に入れた時だった。剣を鞘から抜こうとした直後、ガキっと剣が鞘に収まって抜けなくなった。
「何で、こんな時に⁉︎」
『今のお主は疲労と焦りの症状が大きい、少し落ち着き体力を回復をしろ』
(そんな事言っている場合では無いのに……!)
戦局が圧倒的に不利な状況になって来た。その瞬間、リーミアは最後の切り札として、以前試練で使った『神光』を思い出す。
(あれに賭けてみよう。あの力なら絶対に)
そう思い込み、リーミアは魔法の杖を地面に突き刺した。
リーミアが意外な行動に出たのをアルムやシャリナ、ティオロを目を丸くして見た。
「どうしたんだ盟主殿は?」
「何をするの?」
皆が不思議な表情をする中、リーミアは祈るような姿勢で目を閉じて叫んだ。
「神光!」
そう叫んだが、彼女の体に何も変化は表れなかった。
「え……何で、どうして?」
そう慌てている時だった。
ルガンの強烈な一撃が飛び交う、彼女は慌てて魔法の杖で庇った。
バキッ!
魔法の杖が折れて、小さな身体が壁際まで弾き飛ばされる。
「ウグ……」
致命傷は逃れたが、全身に激痛が走って上手く立てなかった。
「コレデ終ワリダ!」
そう叫びながらルガンが鋭い爪を振り落とした。
「危ない!」
アルムが叫んだ、その直後だった。
バシュッ!
リーミアの目の前で何かが切り裂かれ、その血飛沫が彼女の頬に飛び散る。
「え……?」
一瞬目の前で何が起きたのか理解出来なかった少女は、しっかりと目を見開き前を見ると、巨体な魔物の爪で体を切り裂かれたティオロが、力無く彼女の前に倒れ込んだ。
「イヤァー!」
リーミアは悲痛な叫び声を上げた。
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