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魔術師の館
激戦(3)
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予想外の素早さで攻撃を交わした魔獣。その意外な一手に翻弄されたアスファードは、渾身の一撃が大きく外れてしまって、体制を崩して地面へと落ちてしまう。
「くッ……!」
地面に着く直前に受け身の姿勢を取り、落下の衝撃を和らげて地面に着地する。
着地直後、アスファードは一撃が相手に外れた事に対して悔しそうな表情で魔獣を睨み付ける。
予想外の難敵が現れた事にメンバー達は困惑の色を隠せず、魔獣の攻撃に備えて構えを取っていた。
「グォオオオーッ!」
魔獣は大きな雄叫びを上げる。その雄叫びは強烈な咆哮とも言える程で、メンバー達は全身がビリビリする様な衝撃を受け、周囲の草木も激しく揺れる程であった。
「ほお……随分と威勢が良いな!ならば……こちらも!」
アスファードは聖魔剣を一旦鞘に納めて、再び抜き出すと……今度は剣先が先ほどよりも短い状態の長剣となった。アスファードは炎の魔法を唱える、すると刃に真っ赤な業火が剣先から現れる、火の粉が舞い上がり、熱気で周囲にある雑草が次第に蒸発して枯れはじめ……やがて茶色になり焼かれて行く。
「貴様を、この炎の聖魔剣で地獄に送ってやる!」
アスファードが聖魔剣を構えて、相手に一撃をお見舞いしようとした時だった。
「お願い止めて!」
突然の呼び止めに驚いたアスファードは振り返ると、シャリナとアメリが困惑し、涙目で震えている様子に戸惑いを感じた。
「どうしたんだ?」
「森の中で……そんな強い炎の攻撃は危険すぎるわ!」
「森が火事になったら私達まで巻き添えになってしまいます」
それを聞いたアスファードは、自分の足元の雑草が黒くなって焼かれている事に気付く。
「クッ……森の中では、実力が発揮出来ないとは……」
彼女達の言葉を聞き入れたアスファードは止むを得ず聖魔剣を鞘に納めて槍に持ち替えて、魔獣に対して構えを取った。
魔獣は相手が攻撃して来ない隙を付き、再びメンバー達へと猛攻を仕掛けて来る。魔獣はメンバー達を次々と狙って攻撃して来る。
アスファードは、シャリナとアメリを庇いながら魔獣の攻撃を槍で交わした。
「くぅうう……あと少しで魔術師の館なのに……何んなんだよ、コイツはァ……」
ルビィは悔しそうに言う。
ルビィの言葉を聞いたアーレスは北部に見える小高い山を見つめると、建物の灯と思われしき物が見えて、既に魔術師の館に辿り着きそうな距離まで近付いている事に気付く。しかし……それを遮るかの様に現れた魔獣に足止めをされてしまった事が大きな痛手の様に感じていた。
「こ……こんな規格外のバケモノ、放って置いてさっさと逃げよう!」
ティオロが震えながら言う。
それを聞いたエムランやフォルサも内心(そうだな)と思っている中、アルムがティオロの側へと近寄る。
「それには……まず、君の彼女を説得する事の方が優先だと思うな」
それを聞いたティオロは、アルムがリーミアの方を指して言う。周囲が唖然としている中、魔獣への視線を逸さずに居た。
(全く、戦闘好きと言うべきなのか……)
彼等が会話している中、サリサとルフィラが少し離れた位置で魔獣を見ていた。
魔獣を見ていたサリサは少し不信な表情を浮かべる。
「妙ね……」
「どうしたのかしら?サリサ様」
「何故、あの魔獣は……我々の居る場所まで突進してきたのかしら?」
「それは、どう言う事ですか?」
「魔獣が人を襲うのは、大概は自分達のテリトリーに人が入って来るからであって、魔獣から人を襲う確率は低いわ。まして……我々の居場所を見付けて襲うなんて、まず有り得ない事よ」
それを聞いたルフィラが、ある一つの見解を予測する。
「つまり……あの魔獣は何者かに操られている……と、言う事ですか?」
「可能性としてはね。何よりも……これだけ巨体となると、本来なら……個別に襲う事は無いわ。むしろ……逃げる集団を襲うのであって、個別に人を狙う事なんてしないからね」
「なるほどね……」
サリサの説明にルフィラは頷いた。
「それと……先程のアスファードさんの攻撃、まるで……あの魔獣は、彼の攻撃を予測していたかの様な避け方をしていたわね。あの避け方……魔獣としての動きにしてはあまりにも不自然過ぎると感じたわ」
「言われてみれば……」
そう話して居る間にも、魔獣がメンバー達に向かって、大きな爪を振り下ろしに来る。
ズバーンッ!
魔獣の攻撃に全員が避ける。
その傍、アーレスがリーミアに声を掛ける。
「魔獣を討伐するか?それとも……一斉に撤退する?」
「撤退しても、この子は追い掛けて来るわね。私達の居る場所を狙って来る程だから……」
2人が話して居ると、魔獣が的確な位置でメンバー達を襲い、その傍にリーミア達に攻撃しに来た。
リーミアは結界の魔法で魔獣の攻撃を交わす。
「では……どうする?一斉攻撃なら僕が指示しても構わないけど……」
「いえ、貴方ばかりに頼ってしまっては申し訳ないから……私にやらせて」
そう言うと、リーミアは周囲を見渡す。魔獣の攻撃でメンバー達が四方に散り散りになっている事に気付く。
「まずは皆を集めないと駄目ね」
そう言うと、リーミアは魔獣の前へと近付く。
「グロロロ……」
目の前に少女が現れると気付いた魔獣は唸り声を上げながら相手を睨み付ける。
巨体な魔獣を前にリーミアは聖魔剣を鞘から抜き出す。長剣の形をした刃からは薄らと光が放たれていた。
「グオオオー!」
魔獣はリーミア目掛けて突進して来た。
相手が自分目掛けて襲いに掛かる瞬間、リーミアは剣を構えて魔法陣を浮かび上がらせて魔法を唱える。
「夢幻の迷宮への誘い、幻光!」
不思議な眩い光が剣先から放たれる。まるで虹の様に赤から青へと変色する光が現れて、魔法を唱えた者の姿が複数現れる様な幻覚を見せる。それと同時に魔獣が幻覚に襲われ混乱してしまう。
「ガウッ!ガウッ!」
魔獣は、見えない何かと闘っている様で、空中を見上げながらアチコチに噛みつこうとしたり、前足で何かを引っ掻こうとして、彼等メンバー達から少し遠ざかる。
「今のうちよ。皆……こっちへ来て!」
リーミアの呼び声と共に、拡散していたメンバーが集まる。
「流石だ盟主!魔獣を混乱させるとはね!」
エムランが嬉しそうに言う。
「別に対した事では無いわ。敵を混乱させる程度なら一般の魔術師でも可能よ、ただ……光の魔法で聖魔剣の威力なら、しばらくは安全だわ」
そう言いながらメンバーを見ると、魔獣の強襲からの困惑に皆は動揺が払い切れない様子だった。
「ねえ、このまま館まで逃げちゃおうよ」
ティオロがリーミアに向かって言う。
「いいえ、私達は。ここで魔獣を倒します」
その言葉に周囲から「ええー!?」と、驚きの声が響き渡った。
「しょ……正気か!?」
フォルサが慌てた素振りで言う。
「館までは、まだ少し距離があります。幻光の魔法効果など、一時的な気休め程度よ。館まで走っている間に魔獣の速さなら、直ぐに追い付いて……私達は襲われてしまうわ。それに……館には、魔剣士と魔獣に以上に手強い魔族が居ます。この程度の敵に動揺していたら、私達は奴等に勝てないわ」
館に入ったら、また別の敵がお迎えが有る事を知ると……メンバー達の戸惑いは隠し切れなかった。
「では……盟主殿よ、どうするの?」
レトラが少し不機嫌そうな表情でリーミアに問い掛ける。
「私なりに提案はあるけど……予め、皆さんからの意見も聞きたいわ。何か……策があれば教えて欲しいわ」
その言葉にアスファードが手を上げる。
「僕が……」と、彼が何か言おうとした時だった。
「アスファードさん!」
シャリナとアメリが同時に声を揃えて、ジロッと彼に対して険しい表情で睨み付ける。
「どうしたの?」
「いえ、な……何でもありません……」
アスファードは声を低くしながら下がる。
「良いかしら?」
そう言って手を上げたのはルフィラだった。
「はい、どうぞルフィラさん」
「私からの提案ですけど……」
ルフィラは自分の提案を皆の前で話し始める、それを聞いたリーミアは納得した様子で頷く。柔かな表情で「成程……」と、返事をする。
「では、その作戦で行きましょう!」
「くッ……!」
地面に着く直前に受け身の姿勢を取り、落下の衝撃を和らげて地面に着地する。
着地直後、アスファードは一撃が相手に外れた事に対して悔しそうな表情で魔獣を睨み付ける。
予想外の難敵が現れた事にメンバー達は困惑の色を隠せず、魔獣の攻撃に備えて構えを取っていた。
「グォオオオーッ!」
魔獣は大きな雄叫びを上げる。その雄叫びは強烈な咆哮とも言える程で、メンバー達は全身がビリビリする様な衝撃を受け、周囲の草木も激しく揺れる程であった。
「ほお……随分と威勢が良いな!ならば……こちらも!」
アスファードは聖魔剣を一旦鞘に納めて、再び抜き出すと……今度は剣先が先ほどよりも短い状態の長剣となった。アスファードは炎の魔法を唱える、すると刃に真っ赤な業火が剣先から現れる、火の粉が舞い上がり、熱気で周囲にある雑草が次第に蒸発して枯れはじめ……やがて茶色になり焼かれて行く。
「貴様を、この炎の聖魔剣で地獄に送ってやる!」
アスファードが聖魔剣を構えて、相手に一撃をお見舞いしようとした時だった。
「お願い止めて!」
突然の呼び止めに驚いたアスファードは振り返ると、シャリナとアメリが困惑し、涙目で震えている様子に戸惑いを感じた。
「どうしたんだ?」
「森の中で……そんな強い炎の攻撃は危険すぎるわ!」
「森が火事になったら私達まで巻き添えになってしまいます」
それを聞いたアスファードは、自分の足元の雑草が黒くなって焼かれている事に気付く。
「クッ……森の中では、実力が発揮出来ないとは……」
彼女達の言葉を聞き入れたアスファードは止むを得ず聖魔剣を鞘に納めて槍に持ち替えて、魔獣に対して構えを取った。
魔獣は相手が攻撃して来ない隙を付き、再びメンバー達へと猛攻を仕掛けて来る。魔獣はメンバー達を次々と狙って攻撃して来る。
アスファードは、シャリナとアメリを庇いながら魔獣の攻撃を槍で交わした。
「くぅうう……あと少しで魔術師の館なのに……何んなんだよ、コイツはァ……」
ルビィは悔しそうに言う。
ルビィの言葉を聞いたアーレスは北部に見える小高い山を見つめると、建物の灯と思われしき物が見えて、既に魔術師の館に辿り着きそうな距離まで近付いている事に気付く。しかし……それを遮るかの様に現れた魔獣に足止めをされてしまった事が大きな痛手の様に感じていた。
「こ……こんな規格外のバケモノ、放って置いてさっさと逃げよう!」
ティオロが震えながら言う。
それを聞いたエムランやフォルサも内心(そうだな)と思っている中、アルムがティオロの側へと近寄る。
「それには……まず、君の彼女を説得する事の方が優先だと思うな」
それを聞いたティオロは、アルムがリーミアの方を指して言う。周囲が唖然としている中、魔獣への視線を逸さずに居た。
(全く、戦闘好きと言うべきなのか……)
彼等が会話している中、サリサとルフィラが少し離れた位置で魔獣を見ていた。
魔獣を見ていたサリサは少し不信な表情を浮かべる。
「妙ね……」
「どうしたのかしら?サリサ様」
「何故、あの魔獣は……我々の居る場所まで突進してきたのかしら?」
「それは、どう言う事ですか?」
「魔獣が人を襲うのは、大概は自分達のテリトリーに人が入って来るからであって、魔獣から人を襲う確率は低いわ。まして……我々の居場所を見付けて襲うなんて、まず有り得ない事よ」
それを聞いたルフィラが、ある一つの見解を予測する。
「つまり……あの魔獣は何者かに操られている……と、言う事ですか?」
「可能性としてはね。何よりも……これだけ巨体となると、本来なら……個別に襲う事は無いわ。むしろ……逃げる集団を襲うのであって、個別に人を狙う事なんてしないからね」
「なるほどね……」
サリサの説明にルフィラは頷いた。
「それと……先程のアスファードさんの攻撃、まるで……あの魔獣は、彼の攻撃を予測していたかの様な避け方をしていたわね。あの避け方……魔獣としての動きにしてはあまりにも不自然過ぎると感じたわ」
「言われてみれば……」
そう話して居る間にも、魔獣がメンバー達に向かって、大きな爪を振り下ろしに来る。
ズバーンッ!
魔獣の攻撃に全員が避ける。
その傍、アーレスがリーミアに声を掛ける。
「魔獣を討伐するか?それとも……一斉に撤退する?」
「撤退しても、この子は追い掛けて来るわね。私達の居る場所を狙って来る程だから……」
2人が話して居ると、魔獣が的確な位置でメンバー達を襲い、その傍にリーミア達に攻撃しに来た。
リーミアは結界の魔法で魔獣の攻撃を交わす。
「では……どうする?一斉攻撃なら僕が指示しても構わないけど……」
「いえ、貴方ばかりに頼ってしまっては申し訳ないから……私にやらせて」
そう言うと、リーミアは周囲を見渡す。魔獣の攻撃でメンバー達が四方に散り散りになっている事に気付く。
「まずは皆を集めないと駄目ね」
そう言うと、リーミアは魔獣の前へと近付く。
「グロロロ……」
目の前に少女が現れると気付いた魔獣は唸り声を上げながら相手を睨み付ける。
巨体な魔獣を前にリーミアは聖魔剣を鞘から抜き出す。長剣の形をした刃からは薄らと光が放たれていた。
「グオオオー!」
魔獣はリーミア目掛けて突進して来た。
相手が自分目掛けて襲いに掛かる瞬間、リーミアは剣を構えて魔法陣を浮かび上がらせて魔法を唱える。
「夢幻の迷宮への誘い、幻光!」
不思議な眩い光が剣先から放たれる。まるで虹の様に赤から青へと変色する光が現れて、魔法を唱えた者の姿が複数現れる様な幻覚を見せる。それと同時に魔獣が幻覚に襲われ混乱してしまう。
「ガウッ!ガウッ!」
魔獣は、見えない何かと闘っている様で、空中を見上げながらアチコチに噛みつこうとしたり、前足で何かを引っ掻こうとして、彼等メンバー達から少し遠ざかる。
「今のうちよ。皆……こっちへ来て!」
リーミアの呼び声と共に、拡散していたメンバーが集まる。
「流石だ盟主!魔獣を混乱させるとはね!」
エムランが嬉しそうに言う。
「別に対した事では無いわ。敵を混乱させる程度なら一般の魔術師でも可能よ、ただ……光の魔法で聖魔剣の威力なら、しばらくは安全だわ」
そう言いながらメンバーを見ると、魔獣の強襲からの困惑に皆は動揺が払い切れない様子だった。
「ねえ、このまま館まで逃げちゃおうよ」
ティオロがリーミアに向かって言う。
「いいえ、私達は。ここで魔獣を倒します」
その言葉に周囲から「ええー!?」と、驚きの声が響き渡った。
「しょ……正気か!?」
フォルサが慌てた素振りで言う。
「館までは、まだ少し距離があります。幻光の魔法効果など、一時的な気休め程度よ。館まで走っている間に魔獣の速さなら、直ぐに追い付いて……私達は襲われてしまうわ。それに……館には、魔剣士と魔獣に以上に手強い魔族が居ます。この程度の敵に動揺していたら、私達は奴等に勝てないわ」
館に入ったら、また別の敵がお迎えが有る事を知ると……メンバー達の戸惑いは隠し切れなかった。
「では……盟主殿よ、どうするの?」
レトラが少し不機嫌そうな表情でリーミアに問い掛ける。
「私なりに提案はあるけど……予め、皆さんからの意見も聞きたいわ。何か……策があれば教えて欲しいわ」
その言葉にアスファードが手を上げる。
「僕が……」と、彼が何か言おうとした時だった。
「アスファードさん!」
シャリナとアメリが同時に声を揃えて、ジロッと彼に対して険しい表情で睨み付ける。
「どうしたの?」
「いえ、な……何でもありません……」
アスファードは声を低くしながら下がる。
「良いかしら?」
そう言って手を上げたのはルフィラだった。
「はい、どうぞルフィラさん」
「私からの提案ですけど……」
ルフィラは自分の提案を皆の前で話し始める、それを聞いたリーミアは納得した様子で頷く。柔かな表情で「成程……」と、返事をする。
「では、その作戦で行きましょう!」
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