転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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魔の森、攻略!

魔の森、潜入(7)

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 近くの岩陰から何か動く音が聞こえて、アーレスは小石を投げ付けた。ガンッと何か弾く音が聞こえて、岩陰の後ろへと周ったアーレスは岩陰に隠れていたモノを見て驚いた。

「こ……コレは!」

「どうしたの?」

 アーレスを追ってリーミアが岩陰の後ろに顔を覗かせる。

 2人が見た物は、古びた大きな布の塊だった。既に使い古してあり……所々に穴があった。

「大きなズタ袋だな……コレは……」

 少し呆れた様な表情でアーレスは言う。

「何で……これが、動いたのかしら?」

「さあ、どうせ……誰かが放置して置いたのが、時間が経過して落ちたのだろう」

 少し拍子抜けした様子のアーレスは、振り返って来た道を少し歩き出す。

「そ……そう、なの……?」

 リーミアは、アーレスの方へと振り向いた。

 その時だった。

「イデデ……」

 大きなズタ袋から声が聞こえた。

「全く……誰だよ、石を投げたヤツは……?」

「え……?」

 リーミアは思わず振り返ると、そこにはズタ袋から顔を出した……ボサボサの黒髪に、肌が地黒の少年の姿があった。

「あ、貴方は!」

 驚きながらリーミアが言う。

 少年はリーミアに気づくとムッと険しい表情で、いきなり飛びかかった。

「お前か!今、僕に石を投げたヤツは!」

 少年が襲って来るが、リーミアはそれを軽く交して、彼を地面に抑え込んだ。

「御免なさい、ちょっと待ってね」

 リーミアは彼が石を当てられた頭部から出血しているのに気付き、治癒魔法で彼の傷を癒した。回復系の魔法のあと、リーミアは魔法の袋からルメンを出して、少年に1つ差し上げる。それを食べた少年は、体力が回復して元気になる。

「あ……ありがとう、お姉ちゃん。元気になれたよ!」

「そう、元気に慣れて良かったわね」

 リーミアは笑顔で答える。

「どうした……。何をしている?」

 少し森の中を探索していたアーレスが戻って来た。彼はリーミアが見知らぬ少年と一緒に居る事に気付く。

 少年は、アーレスを見るなりムスッと不機嫌そうな表情をする。

「貴様だな……さっきオイラに石を投げたのは?」

「石?ああ……投げたけど……」

「コノォー!」

 少年はアーレス目掛けて飛び掛かる。

「あ、ダメよ!」

 リーミアが叫ぶが、少年は聞く耳を持た図ず、アーレスに突進して行く。

「おのれぇ!」

 彼が取っ組みした瞬間!

 グルンッと彼は身体を反転されて、いつの間にか地面に叩き付けられる。

「グワッ……!」

 少年は、体力が回復した為、直ぐに起き上がって……再びアーレスに飛び掛かる。

「クッ、畜生!」

 しかし……アーレスは身構える様子も無く、片手で彼の身体を掴み上げ、少年の両腕を後ろに押さえ込んだ状態で、ドスッと勢いよく地面に押し付けた。

「なんだ、コイツは……?」

「うう……何でだぁ、今まで誰にも負けた事がないのに……。何で勝てないんだぁ……」

 その言葉を聞いたリーミアはハッとした表情で少年を見る。

「誰にも……て、どう言う事なの!?」

「グウウ……離してくれたら教える……」

 少年の言葉に対してリーミアはアーレスを見上げて目で合図した。それを悟ったアーレスは、無言で頷き、少年の側から離れる。

「話してくれるかしら……?」

 自由の身になった少年は、腕や首を摩りながら「良いよ」と、軽く答えながら2人を見て話を始める。

「まず先にオイラの名前は、ルビィと言うんだ……」

「改めまして、ルビィ君。私はリーミア、彼はアーレスと言う方よ。宜しくね」

「ああ……分かった。宜しく」

 ルビィと言う名の少年は軽く2人に向かって挨拶を交した。

「ところで……先ほどの、誰にも負けた事が無いって、どう言う事かしら?」

「オイラは、昔居たギルドのチームでも負け知らずで、この魔の森でも、どんなヤツにも負けた事は無かったんだ……」

「それって……つまり、魔物に対しても……て事なの?」

「そうだ……大体、襲って来る魔物に対しては、相手をぶちのめしているさ!」

 彼は自慢げに話す。そのルビィの言葉に対してアーレスは一握りの疑問を感じた。

「話を聞く限り、君はチームでこの魔の森に入ったらしいけど……君と一緒だったチームのメンバーは何処にいるのだね?そもそも、何故森の外に出ずに、ずっと森の中に居るのだ?」

「オイラと一緒だったチームのメンバーはオイラ以外全員魔物に殺されたんだ。森の外に出たくても、特殊な道具が無いから、出られないんだよ。それに……お姉ちゃん見たいに森に入って来た人を何人も見て来たさ。でも……皆、逃げたり殺されたりして……結局、オイラ1人だけになってしまったんだよ!」

 それを聞いたリーミアとアーレスは無言の表情でルビィを見た。

「そう言えば……昔居たギルドのチームって言って居たけど、登録した時の会員証がある筈だろ。今も持っているかね?」

「ああ……大事に持っているよ。コレだろう?」

 ルビィは自分用の会員証をアーレスに手渡す。

 アーレスはルビィが持っていたボロボロの会員証を受け取り、それを確認する……。彼は会員証を見るなり「何だ、これは!」と、大声で叫んでしまった。

「どうしたの?」

「き……君、ここに書かれているのは、紛れも無い本物何だよね?」

「疑い深いな……それは、オイラの物なんだよ。何か変か?」

「ここに書かれている日付が本物なら、君の年齢は既に40歳以上になるぞ!なのに……少年の姿って……一体どう言う事だ?君は一体何時から、この魔の森の中で生きているんだ?」

「そんな……信じられ無いわ!?」

 アーレスの言葉にリーミアも思わず大声で叫んでしまった。

「そう……なのかな?そう言えば、前にも同じ事を言っていた人がいた様な……?」

 彼は髪を掻きながら言う。

 アーレスの言葉に、リーミアはルビィの言っていた負け知らず……。と言う意味が何となく納得出来た。

「魔の森に入ると、年を取らなくなるのかしら?」

「分からない……」

 アーレスは首を横に振りながら答える。

 2人はルビィと言う不思議な少年を見つめた。彼は突然現れた人物に対して、地面に座り込み、腕を組んで考え込んだ。

「そう言えば……この森って、不思議なんだよね……」

「どう言う風に……?」

「何て言うかな……。倒した筈の魔物が一定期間経過すると、復活するんだよ……。それにさ……仮に魔物に怪我されても、その期間が経過したら、まるで何も無かったかの様に元通りになるんだ」

 それを聞いたリーミアは、つい先程自分が倒した魔物を見た。魔物は死んで、身動きして居なかった。

「なるほど……」

 アーレスはフムフム……と頷きながら、何か納得した様子だった。

「この森のカラクリが読めたぞ」

「え……もう、分かったの?」

 リーミアは少し驚いた表情でアーレスを見た。

「ああ……、この森は魔力によって、定期的に時間が巻き戻る仕掛けがしてある様だ。そう考えると……彼が、何時までも少年の姿のままな姿も辻褄が合う。それと同時に……この森に入ったら、早いうちに魔術師の館へ行き、魔力の根源を断ち切る必要がある。そうしないと、我々は半永久的に魔物達と果てしない合戦を繰り返す事になるんだ」

 それを聞いたリーミアはハッと大切な事を思い出される。

「そうなると、急いで魔剣士と戦わなければいけないわね!」

「そうだが……今は、それ以上にあの2人を捕まえる事が先決だ。奴等が魔剣士と手を組んだら、それこそ我々にとって脅威になりかねない……」

「そうだったわ……」

 少し俯きながらリーミアは答えた。

「では……この森を、光の魔法で浄化しましょう。そうすれば、魔物が居ないうちに魔術師の館へ行けるかも……?」

「辞めた方が良い。森の中だと木々が邪魔して完全に魔物を消滅させらない。魔物を完全消滅させるには、平原の様な場所でなければ意味が無い。この様な森の中なら高台の上から放つのが効果的だ。それに……上位の光の魔法は君にとって負担が大きい。君が光の魔法を放って数日間休んでいる間に、魔物が復活してしまったら逆効果になるだろう。使うのはこちらのタイミングを見計らってから、使うべきだ」

 アーレスの言葉にリーミアは反論出来なかった。

「分かったわ、取り敢えず彼等を捕まえるのを優先しましょう……」

「ああ、あの連中を捕らえたら、一旦森を出て、皆を集めて魔術師の館を目指そう!」

「ええ、そうしましょう!」

 リーミアが納得してくれたのを見て、アーレスはルビィを見た。

「君、魔術師の館までの位置は分かるかね?」

 アーレスの言葉に彼はプイッと首を横に向けた。

「オイラは、いきなり小石を投げて、謝りもしないヤツには教えたく無いね」

 ルビィはベエッと舌を出しながら言う。それを見ていたアーレスは(コイツはー……)と、叫びたかった。

「ねえ……ルビィ君、良かったら魔術師の館まで私達を案内してくれるかしら?」

 リーミアが言うと、ルビィは柔かな表情で「うん、良いよ」と、嬉しそうに返事をする。

 話が決まるとリーミアは魔法の杖を手にして魔法を唱える。魔法陣が浮かび上がらせて魔除けの魔法を唱えると、パアッと仄かに魔法の杖の先端から光が発せられた。

「こうしとけば低階級の魔物は襲っては来ないわ。さあ……行きましょうか」

「へへへ……うん、そうだね。お姉ちゃん良い人だから、森の事詳しく何でも教えて上げる。さあ一緒に行こう!」

 ルビィはリーミアの杖を持っていない方の手を握りながら一緒に歩き始める。彼は後方にいるアーレスをジロッと睨み付ける。

「オイ、お前もしっかり着いて来いよ。離れて魔物のエサになるんじゃねえぞ!お姉ちゃんが悲しむからな……」

(この野郎め……)

 アーレスは少しムッとしながら2人の後を付いて行く。


 その頃……

 ヒイヒイ……と息を切らしながら、メオスとシャラムは森の中を走っていた。

「どう言う事だよ、コレは!」

「うるさい、とにかく逃げろ!」

 彼等は、洞穴を見付けると一目散に身を隠した。

「ハアハア……お前の言う通りにしたから、こうなったんだぞ……」

「仕方無いだろ。まさか……突然魔物が現れるなんて、予想もしなかったんだ」

「そのせいで、カンテラが壊れてしまったんだ。どうすんだよ……これから?もう外には出られないんだろう?」

「うなったら……光花が来るのを待つか、若しくは……自力で魔術師の館へ向かうしかない」

「光花に見つかったら……俺達はギルドを追放されるぞ」

「分かっているさ!」

 メオスは大声で叫んだ。

 その時だった……。洞穴の奥からグルル……と、唸り声が聞こえて来た。

「おい、中に何かいるぞ……」

 シャラムが呟いた直後、洞穴の奥から大きな狼に似た魔物が目を光らせながら現れた。

「ヒエエエー!」

 彼等は叫び声を上げながら洞穴を飛び出した。

 ゼエゼエ……と息を切らしながら彼等は走り続けた。

 森の小高い丘の上まで逃げた彼等は大きな樹の下まで駆けて、ひとまず休んだ。

「どうするの……これから……」

「と……取り敢えず、一旦休もう……」

 彼等は息を切らしながら話し合う。

 フウッと少し間を置き汗を拭いた直後だった。

 ピューッと何か上空で音が聞こえて来た。

「ん……何だアレ?」

 メオスは薄らと曇っている空を見上げて呟いた。

「どうしたの?」

 シャラムがメオスを見ながら言う。

「アレは……一体?」

 そう呟いた瞬間だった。

 ズウウーン……

 地面を叩く様な激しい轟音と共に砂埃を巻き上げて、上空を旋回していたモノが彼等の目の前に着陸した。砂埃で姿はハッキリと確認は出来ないが、それでも……その影から察するに、彼等の身の丈よりも大きな生き物である事は察した。

「ヒィイイー……」

 彼等は互いに抱き合いながら恐怖で震え上がっていた。
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