転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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魔の森、攻略!

魔の森、潜入(2)

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 ティオロの言葉を聞いたリーミアは真剣な眼差しで彼を見た。

「僕達が君と久しぶりに会った時、1人足りない事に気付かなかったかな……?」

 それを聞いたリーミアは、以前フォルサと一緒だったカルファと言う男性が居ない事を思い出す。

「何が……あったの?」

 ティオロとリーミアが一緒になっている場所から、少し離れた位置で、他の男性達と一緒に肉を食べながら酒を呑んでいたフォルサが、ティオロの様子に気付き、腰を上げて彼の方へと歩き出す。

「君が光の神殿で修行始めてからしばらくして、僕はフォルサチームに入ったんだ。それから……しばらくの間、色んな地域で魔物狩をしていたんだけど……。ある野営地が連立している場所を攻略しようと、幾つかのチームと組んで討伐に挑んだ時の事だったんだ……。その野営地で僕が魔物に襲われそうになった時、カルファさんが咄嗟に僕を庇ってくれて、彼が魔物に殺されてしまったんだ……」

「そうだったの……」

 リーミアは、どう答えて良いか迷い……上手く返事が出来ず慰めの言葉が思い付かなかった……。

 その直後だった。

「そうやって、何時までも過ぎた事で自分を責めるな……て、いつも言っているだろう!」

 背後から声が聞こえて、振り向くとフォルサが2人の側に立っていた。

「フォルサさん!」

 ティオロが思わず大声で叫んでしまう。

「確かに……カルファはお前を庇って命を落としたが……。あの後、お前は強くなるって言ったろう。だったら、過去を教訓に強くなって、立派な剣士を目指せ!そうすれば……カルファの魂も浮かばれるだろう。いつまでもクヨクヨせずに、前だけを見て突き進むのが一番だ……」

「そうですね……過去に捕らわれてはダメですね……」

 ティオロは少し涙が溢れて、それを指で拭き取ると……リーミアが持ってきてくれた皿のパンや肉を食べ始める。

「美味しいよ……」

 彼が美味しそうに食べるのを見つめていたリーミアはクスッと微笑みを浮かべる。

 ティオロは、リーミアの微笑んだ顔を見て、少し落ち着きを取り戻した。その時……彼は何気なく彼女が腰に携えている聖魔剣を見つめると……ふと、何か大切な事を思い出した。

「そう言えば……君の聖魔剣に良く似た武器を持っている人に以前出会ったよ」

 それを聞いたリーミアは「えッ!」と、驚いた表情をした。

「それって……もしかして、炎の属性の人なの?」

「え……?全然違うよ。水の属性を操っていたよ、とても綺麗な藍色の髪をした、可愛い少女だったよ」

「エ、ナニソレ?」

 微笑んでいたリーミアは『綺麗』と『可愛い』と、言う彼が他の少女と思われる相手に対して用いた事に、少しばかり妬いていた。

 そんな彼等のやり取りに対してフォルサがティオロを小突き、(相手を良く見ろ)と、振る舞いで示した。それに気付いたティオロも言い方を改める。

「で、でも……君の方が数倍とても綺麗で可愛いよ」

「そ……そうなの?」

 リーミアは、頬を紅くしながら返事をする。

「本当だよアイナちゃんよりも、ずっと君の方が可愛いよ!」

「アイナって誰よ?」

 その言葉に対してティオロはドキッとした。

「え……あ、誰だろうね?ハハ……」

 ティオロは慌てながら答えるが、既にリーミアの表情は真剣な眼差しで相手を捉えていた。

「そのアイナと貴方の関係は『ちゃん』付けする程に親しい関係なのね?」

「あ……いえ、その……全然違います……」

「じゃあ、どう言う関係なの?私が知らない間に一体……どれだけ沢山彼女を作ったのよ?」

「そんな事ありません。本当に……ただ、聖魔剣を持っている少女に会っただけです」

「その女がアイナなのね?」

「はい、そうであります……」

 そう返事をするとリーミアは納得した様子で「判ったわ」と、返事をして機嫌を取り直した。

 ティオロはホッと胸を撫でおろす。

「でも……何故、その水の属性の聖魔剣の人が、今回の作戦に参加しなかったの?」

「彼女は、別の魔物狩に参加したんだよ。元々別のチームに入っていたからね」

「そうなの……どんな人なのか、少し気になるわね」

 リーミアは夜空を見上げながら呟いた。

「そのアイナだが……」

 フォルサがリーミアに向かって話し掛ける。

「彼女、光の洗礼を受けた事があるらしいぜ」

「え、そうだったの……?」

 意外な彼の言葉に対してリーミアは驚いた。それと同時に、一つ疑問が沸いた。

「でも……何故、水の属性の彼女が、光の洗礼を受けるのかしら……?」

「王位継承権に興味があったのかもしれないな……多分、自分が王女の生まれ変わりだと思ったのだろう?」

「そうなのね……」

「一応、彼女には嬢ちゃんの事を話して置いたさ。いずれ機会が在れば会いたい……と言っていたさ」

「そう……私も是非とも会いたいわ。もし……今後彼女と会う機会があれば、声を掛けて置いてね」

「ああ……そうするよ」

 フォルサが返事をするのを見て、リーミアは改めてティオロを見た。

「是非ともアイナちゃんに、宜しく伝えておてね!」

 リーミアは皮肉交じりティオロに向かって言う。

「はい、分かりました……」

 ティオロは蛇に睨まれたカエルの様に縮こまりながら返事をした。

 少し賑やかな会話を終えると、彼等は……皆の場所へと戻り、楽しい談話をしながら、夜が深けるまで和やかなひと時を送った。

 翌日、早朝……

 周辺が朝霧に覆われ、木々さえ白い靄の中に隠れてしまう様な中、まだ周りが眠りから覚めていない様子だった。その中で1人早起きしたリーミアがアーレスとサリサのコテージのある場所へと向かった。

 本来なら見えない様に周囲と同じ景色に変えて隠してあるコテージだが、敵に襲われない場合は扉を現して置く事も可能だった。

 リーミアが扉を軽くノックすると、中からサリサが扉を開けて出て来た。

「おはようございます」

「あら、お早う!早起きね。良かったら入って」

「はい、すみません」

 サリサに招かれてリーミアはコテージの中へと入り扉を閉める。彼女を招いたサリサは広間のテーブルへと案内させる。そこには魔の森に関する資料に埋め尽くされていた。

「御免なさい、アーレスはまだ起きていないのよ」

「そうでしたか……」

 そう返事をすると、サリサがお茶を淹れてカップをリーミアの居るテーブルの上へと置いた。
「ところで、本日はどんな作戦で行くのでしょうか?」

 その言葉に対してサリサが残念そうに首を横に振った。

「まだ、作戦を模索中なのよ……」

 そう言っていると、奥の部屋からフードを頭に被り、メガネを掛けた姿でアーレスが現れた。

「あ、リーミアちゃん……お早う」

 眠たそうな姿でアーレスが彼女の前に現れる。

「だらしないわよアーレス」

「昨夜、遅くまで……色々と調べていたんだよ……」

 そう言っていると、部屋に用意されている伝書箱に伝聞が届いた。

「おや?何だろう……」

 アーレスが届いた羊皮紙を見ると、宛名がサリサ宛と記されている事に気付く。

「君宛ての伝聞だよ」

「私宛て……?」

 ふと……不思議そうにサリサは羊皮紙を広げる。

「これは、女神官長様からよ!」

 サリサは震えながら書かれている文面に目を通した。

「まさか……!そんなこと……」

「どうしたの?」

 サリサは慌てた表情でリーミアを見つめる。

「リーミアちゃん、急いで全員を呼び起こして!緊急事態よ!」

「え?何……なんで?」

 そう言っている直後だった。
 外からドンドンッと扉を叩く音が響く。

「どうしたの?」

 サリサが慌てて扉を開けると、外にいたのはアメリだった。彼女は慌てた様子で扉の前に立っていた。

「た……大変よ!今……2人の男性が、無断で魔の森に向かって行ったわ!」

「何だって!」

 アーレスが大声で言う。

「光花のアルムって言う人が、彼等を連れ戻そうとして追い掛けに行ったのよ!」

 それを聞いたリーミアは慌てた表情でアーレスとサリサを見る。

「どうしましょう?」

「連れ戻しに行くぞ。アメリちゃんだったね。急いで全員を呼び起こしに行ってくれ!」

「はい!」

 アメリが他のコテージに向かうのを見て、アーレスは外に出る。

「リーミアちゃん、僕達は魔の森に向かうぞ、急いで出発する準備をしてくれ」

「分かりました!」

 リーミアは準備をする為に、コテージへと戻って行く。
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