転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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魔の森、攻略!

捕らわれた少女

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 リーミアを取り囲んだ騎士団の中から老兵とも言える、騎士団の長が一歩前に出る。

「幼な子よ、我等の指示に従えば、命までは取らない。素直に従え」

 それを遠くから見ていた神官達は慌てふためいていた。

「ど……どうする?」

「とにかく……先ずは神殿に報告よ!」

「そ、そうだった!」

 男性神官は、ピーッと指笛を鳴らすと鷲を呼び寄せた。

「おい、小娘、貴様……妙な武器を持っているな、没収だよこせ!へへへ……俺が頂いてやるぜ」

 騎士団の1人がリーミアの腰に携えている短剣を持とうとした。

 その瞬間……

 バアーンッ!

 短剣を手にした瞬間、騎士団は遥か遠くまで吹き飛ばされた。

「え……?」

 皆が唖然とした表情で吹き飛ばされた方を眺める。

「お……おい、貴様、今……何か妖術を使ったのか?」

「何もして無いわよ。欲しいのでしょ?これ……」

 リーミアは手前にいる騎士団に短剣を渡す。

 すると、騎士団はズドンッと、両手を差し伸べた状態で、立てなくなり、そのまま地面に横たわってしまう。

「お……重い!だ……誰か、この短剣を外してくれー……」

 それを聞いた他の騎士団が、短剣を触ろうとすると……

「ぎゃあー!あ……熱い!な……何なんだこれはー?」

 と、大騒ぎしだす。

「な……何だ、一体……これは?」

 騎士団の長が、唖然とした表情をしながら、奇妙な出来事に目を丸くしていた。

「光の聖魔剣は、選ばし者にしか扱え無いのよ」

 リーミアは、そう言いながら、騎士団の両手から短剣を取る、その仕草はまるで小石を摘む様に軽く手にした。

「ひ……光の聖魔剣だと……戯言を抜かすな!貴様が光の紋様を授かっていると言う証拠はあるのか?」

 騎士団の長は、長剣を抜き取り、リーミアに剣を突き立てる。

「これが証拠よ!」

 リーミアは額飾りを外すと、その下には紛れも無い光の紋様が浮かび上がっていた。

「う……ウウ……」

 騎士団の長は、光の紋様を知って居たので、反論出来なかった。光の紋様と同じ物を刻む行為は斬首に当る行為であり、無闇に刻む事は許されなかった。

「これでも信用でき無いのなら、これならどうかしら?」

 そう言って、リーミアは短剣に軽く口付けして、短剣を鞘から抜き出す。その剣は鞘とは比較なら無い程の長さになる。

 その魔法剣を見た周囲の騎士団達は、見慣れ無い魔法剣に驚きの表情を浮かべていた。

 リーミアは、光の聖魔剣を頭上高く突き上げる。

「光皇!」

 魔法陣を浮かび上がらせ、光の魔法を唱えると、頭上高く、光の柱が浮かび上がる。


 ー神殿……

 神官達の伝聞を届けに来た鷲が神殿に着く頃、神官剣士長の女性とサリサが、市場の端から光の柱が立ち上るのを見て、彼女達は慌てて大神官の元へと駆け込んだ。

 ー純白城……

 代理王アスレイウが、たまたま近くの渡り廊下を歩いている時、彼は市場から立ち上る光の柱に気付く。

 リーミアは光の魔法を称えると、剣を鞘に収める。

「これでも納得出来無いのなら、私を縛り上げると良いわ」

 長は震えていた。彼は……幼少期の頃から祖母等に何度も聞かされた、悲劇の王女の話を知っていた。正に……その王女が転生したと思われる少女が目の前に居ると思うと、何も出来なくなる。

「騎士長殿よ、この者を捕らえましょう。この者の妖術は国にとって災いでしかありません!」

 騎士団の1人が大声で叫んだ。

「いや……ダメだ、この者は……」

 長が口ずさみながら言う。

「どうしたのですか?」

「この者を捕らえてはならない!」

(紋様……聖魔剣……そして、今の魔法……目の前に居る少女は紛れも無く……)

 長は震えていた。この者を捕らえると、場合によっては我々が反逆者になってしまう……彼は内心で理解していた。

「何故ですか?」

「何故なら、この方は……」

 長が言おうとした時だった、1人の騎士団が両手に縄を持ち、リーミアへと近付く。

「構わない。俺が縛り上げてやる!」

 そう言って彼はリーミアの身体に縄を掛けて縛り上げられて、捕らわれの身となった。

 その直後……

 ピューー!

 上空から天馬に乗った女性と、翼竜に乗った男性が現れた。

「女神官長リーラ様!」

 神官達は、天馬に跨がる女性を見て叫んだ。

「え?ルセディ将軍!」

 騎士団達は、翼竜に跨る男性を見て驚く。

 翼竜と天馬から降りた2人のうち、ルセディ将軍と呼ばれる人物がリーミアに近付き、自分の剣で彼女の体の縄を切り裂く、2人はリーミアの側に立つと、片膝を付いて深く頭を下げる。

「大神官の命により、貴女をお迎えに馳せ参じました」

「代理王の命により参りました。此度は我が王国騎士団が、お騒がして申し訳有りません……」

 それを見た騎士団達は唖然とした表情で、その光景を目の当たりにする。

 女神官長は、黄金色に輝く魔法の杖を持ち、騎士団達の前に立ち、その懐から1枚の羊皮紙を出すと、それをルセディ将軍へと手渡す。

「大神官からです……」

「かたじけない」

 彼は騎士団の前に立つと羊皮紙を両手で広げて、そこに書かれている文面を読み解いた。
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