転生少女と聖魔剣の物語

じゅんとく

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光の聖魔剣

光の聖魔剣

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 祭壇の前に居た神官達は、目の前でリーミアが光の魔法を唱えたと思い、突然眩い光が発したかと思った、次の瞬間……突然、彼女が祭壇から現れて落ちて来たのだった。

「あ……危ない!」

 女性神官が、そう叫び。男性神官と一緒に彼女を受け止める。

 彼等にとっては僅か一瞬の出来事の間に、リーミアは意識を失った状態で現れた。彼女の衣服は激しくボロボロの状態だった。しかも……傷で所々出血の跡が見えていた。それ以上に驚いたのは、彼女の右手に白銀に煌めく短剣を手にしていた事だった。

「王女様、身体が弱っているわ。直ぐに回復魔法を」

「分かった!」

 男性が回復魔法を唱える。

 治癒魔法でリーミアは無事回復し、ルメンを食べると元気になる。

 一体僅か一瞬の間に何が起きたのか、神官達は気になり、彼女から出来事の一部始終を聞くと、彼等は唖然とした表情をしていた。

「そんな事が起きていたの……」

「ぼ……僕等には、とても想像も付かない世界の話だ……」

 彼等は噂には聞いて居たが……彼女の話を聞いて想像を絶する程の試練に愕然とした。

 彼等と会話したリーみあは、改めて自分に託された聖魔剣を見つめる。まだ、短剣を鞘から抜き取っていないが、テリオンの聖魔剣と同等……若しくは、それ以上の鼓動を感じている。

「取り敢えず、祠から出ましょう」

 リーミアが言うと、彼等は少し迷った様な表情を浮かべていた。

「どうしたの?」

「出るにしても……外には、まだ……数十匹以上の魔物の群れが居るんだよね……」

「正直言って、転移石を使うにも、僅かに時間が掛かるわ。もし……その間に魔物が魔法の空間に飛び込んできたら、一緒に移動する事になってしまうわよ」

「平気よ、私に任せて」

「ですが……王女様、貴女は武器が……」

 女性神官が言おうとした瞬間、男性神官が彼女を押さえて、目で合図を送る。

「まさか、ソレを使うおつもりで……?」

「やってみる価値はあるわ。もし……使えない場合に備えて、転移石の準備をしておいてね」

「は……はい」

 話が決まると、彼等は祠の出入り口へと進み、扉を開けて外へと出た。

「キキキ……」

 祠に入る前、半分以上倒して、残り数十匹位と思われた魔物達の群れは、彼等が祠に入っている間に、更に仲間を読んだのか、その群れの数は更に多くなっていた……その数はおよそ200以上と思われる。その群れは彼等が登って来た山道まで埋め尽くす程の数だった。

「ギギギ……」

「ゲヘヘヘ……」

 まるで血に飢えた様な形相で、魔物達は不気味な唸り声を上げて、祠から出て来た獲物を睨み付ける。

「離れていて……」

 リーミアは神官達を少し後方へと置き、祠から少し前へと歩み出す。彼女は軽く聖魔剣に口づけをする。

「お願い……」

 彼女はスウッと息を吸い込み、腰に携えた短剣を手にする。その短剣は相手の意思に呼応すると、柄が少し伸びて彼女の手に合う長さへと変わる。

 握り易い形になった柄から、彼女はスウッと短剣を鞘から抜き出すと……その剣は長剣の長さへと変わる。

 眩い鏡面の様に磨き抜かれた、銀光の鋭い切れ味を見せる長剣。

 キラリと、その長剣が陽の光を反射させながら、魔物達の前にその刃を見せた瞬間だった。

 魔物達は、本能でゾクッと身震いし『コレはヤバイ』と瞬間的に感じて、一斉に逃げ出そうと飛び去る。

 しかし……リーミアはそれを許さなかった。

 聖魔剣を天を突く様に真上に伸ばした状態で、光の魔法を唱える。

 白銀に光る魔法陣を浮かび上がらせると、眩い閃光と共に旋風が巻き起こる。

「怒りと憎しみの邪悪のものに、安らぎと清らかさのさざ波を、浄化!」

 その瞬間ー

 ブワーーッ!

 光子の様な波風が、彼女から発せられた。気流の様な風が放たれたかと思った。次の瞬間……神官達は目の前の光景を見て驚いた。

 200匹以上居たかと思われた魔物の群れが一瞬で消滅してしまった。

 周囲は墓所がある穏やかな山脈の景観へと移り変わる。何処からか小鳥の鳴き声が聞こえて来る。

 穏やかな景観の中、リーミアは自分が手にした聖魔剣を改めて眺めると、剣を鞘へと戻した。

「お見事です」

「素晴らしいですね」

 神官達が笑顔で拍手しながら近付いて来た。

「それほどでも無いですが……」

 リーミアは愛想笑いしながら答える。

「いえ……生前の貴女が成し得なかった魔法と聖魔剣を、貴女は完全に手中に納めて魔を滅したのです。誇るべき事ですよ。さあ……急いで帰還して大新官様に吉報を届けましょう!」

「そうですね!」

 リーミアは神官の言葉に従う事に決める。

 彼等は転移石を使って、その場から瞬間的に姿を消した。
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