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聖魔剣奪還
副盟主(6)
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その日、マイリアがドアをノックして部屋に入って来た。
「盟主様、お客様がお見えになりました。面会の間でお待ちになっています」
彼女はリーミアに向かって、軽く一礼しながら言う。
「あ、はい……分かりました」
リーミアは返事をして席を立った。部屋を出る時、彼女はふと……立ち止まった。
「どんな御用件ですか?」
「副盟主を希望したいとの事でした」
それを聞いてリーミアは驚いた。昨日あんな言われ方したから、当面の間は副盟主に適した人物は現れないと諦めかけていたが……その条件を軽く越えられる人物が出て来た事に彼女自身、本心から予想外であると感じた。
一体相手はどんな人物なのか、リーミアは少し嬉しい気持ちで面会の間へと向かう。
彼女は初めて面会の間で話をする事になった。
本来なら入隊希望者が来た場合、面会の間を利用するのであった。が……リーミア自身が特にそれに拘らず、依頼者が居る場所で面談をしてしまう為、今まで使う事が無かった。レネラやマイリアが相手を見て判断する事に決めてから面談を勧める事になった為、来客者を面会の間に迎える様になった様である。
面会の間の近くへと向かうと、レネラが面会の間の前に立っていた。
「お客様がお待ちですよ」
彼女は特に不機嫌そうな感じでは無く、普通にしていた。
(どんな人が来たんだろう……)
そう思いながら、リーミアは軽くノックしてドアを開けて部屋に入る。
小さな部屋には若い男性が1人座っていた。華やかな模様が刻まれた木製のテーブルを挟んで向かい側の椅子へと腰掛けて、リーミアは相手の顔を見た。
「初めまして」
「あ……初めまして!よ、宜しくお願いします!」
面談するリーミアが少し緊張した感じで挨拶する。
「貴女が僕を面談するのでしょう?」
彼は愛想笑いしながら言う。
「あ……そうでしたね!すみません、えっと……お名前を聞かせてくれますか?」
「アルファリオと言います」
「え……と、アルファリオ様は、これまでどんな場所にいましたか?あと……現在の称号等教えてくれますか?」
「そうですね……自分は、数年前まで……あるグループに居ました。そちらでは主にグループの管理関係及び、新人等の人材育成に勤めて参りました。後継人が育ち自分が居なくてもグループがやって行けると感じて、自分はグループを離れて、最近まで小さなチームで魔物狩をしておりました。現在の称号は、最近になって……やっと金の称号を得ました」
アルファリオの話を彼女は頷きながら聞いていた。
「そうでしたか……こちらには、どの様な経緯で入隊を希望しましたか?」
「マネニーゼには、およそ25以上のグループがあり、それぞれが階級上げや派閥を競い合っております。老舗のグループになる程、知名度が高く人員も多くなります。内部でも階級を競い合う位、規律等に縛られてます。そう言った枠組から外れ、独自の路線でありながら、周囲からも常に目を向けられているグループがあれば、気にならざるには無いと思いますね」
「なる程……気になって来たのですね」
「はい、このグループはまだ、出来たばかりですが……僕から言わせれば、大きな地盤を固められて造られて、これから高く大きく伸びようとする、一種の巨大な塔の様に感じられます。その塔が何処まで伸びて行くのか興味を感じて、自分は貴女に会いに来ました」
「私は、それ程までとは想像していませんでしたが……」
リーミアの言葉にアルファリオは愛想笑いする。
「ご謙遜を……それとも、自分の足元は見て無いだけですかね?」
「どの様にですか?」
「巷では、貴女の事は話題になっていますよ。ギルドに参加登録して約3ヶ月……その間に8等級まで称号を上げ、聖魔剣の使い手として名を馳せている……と、言う噂は……他のギルド集会所にも声が聞こえてますよ」
「なる程……私の噂を聞いて、貴方はこちらのギルド集会所に移動の手続きをしたのですね」
「はい、貴女のグループに入り、このグループが何処まで成長するのかを見届けたく思いまして……」
「分かりました。貴方の真意は了承いたしました。今後はこちらで頑張って頂きますが……ただ、貴方の称号は金だと仰いましたね。そうなると……私よりも階級が2つ上になりますね。如何でしょうか?貴方が盟主となり、このグループを引っ張って行っては?」
リーミアの言葉に彼はフッと笑った。
「何か勘違いをなされておりますね」
「何を……ですか?」
「グループとは、簡単に盟主を変える事は出来ない物です。いえ……安易に変えてはいけないのです。貴女が立ち上げた組織だから、現在居るメンバーは貴女に付き添って来ているのです。当主が変われば、それに反旗を翻し、内部から崩壊する事だって起こり得る……それが組織と言うものです。貴女の階級は現在の僕よりも低いかもしれないですが……僕から言わせれば、階級や称号なんて、所詮飾りでしか無いと思っております。人の価値基準なんて称号や階級で決め付けられる程、安っぽくは無いと思っております。それに……貴女自身も既に気付いておられるのでは無いでしょうか?自身の存在が、この国でどれ程の影響を与えているのか……ご存知であるかと、思っておりましたが……」
そう言われて、リーミアは少しアルファリオに教えられた……と、少し反省の色を見せた。
「そうですね、貴方の言うとおりでした。私も、もう少し勉強が必要ですね。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ、少し言い過ぎました」
彼は軽く一礼をした。
ドアの向こう側で彼等の話を聞いていたレネラとマイリアは、微笑みながら「今回は正解だったね」と、呟いた。
「では……これから、副盟主として……色々と教えて頂けますか?」
「はい、貴女が望むのであれば、喜んで教えさせて行きます」
「ありがとうございます。ところで……貴方がどの程度の実力か、少しお手合わせ願いますか?」
「え……はあ、構いませんが……?」
「では、こちらへ……」
リーミアはアルファリオを連れて面会の間を出て、練習場へと向かう。
練習場ではケイレムとルファが練習をしていた。
彼等は、見慣れ無い人物が現れた事に驚く。
「こんにちは、盟主様。そちらの方は?」
「今日、入隊の方です。名前はアルファリオです。宜しくね」
「初めまして、よろしくお願いします」
2人は一緒に挨拶する。
「私が、お手合わせしますので、ちょっと離れてくださいね」
「え……盟主様が!」
そう言われて、彼等は急いで練習場の観戦出来る場所まで立ち去る。観戦出来る場所には、レネラとマイリアの姿もあった。
「あれ?管理人と秘書も見学ですか?」
「ええ……もしかしたら期待の副盟主誕生の瞬間が見られるかもしれないから……」
「そうなんですか?」
「へえ、皆は貴女の実力を把握している様ですね」
「まあ……ある意味怖がられてますが……」
そう言いながら、リーミアは木剣を手にする。アルファリオも、両手に木剣を手に構えた。
簡単な腕試しが始まったが……2人とも互いを見つめたまま、動かなかった。
「珍しい……」
ルファが少し驚いた表情で言う。
「どうしたの?」
「あの盟主様が、躊躇しているわ……相当強いわね、あの男性……」
2人が構えたまま動かなかった事に、ケイレムはルファの言葉を聞いて気付いた。
(隙がないわ……どう、攻めても交わされてしまう……この人、見た目以上に強い!)
リーミアは今まで会った事の無い相手に驚いていた。
(恐ろしい、一瞬でも、隙を見せたら命取りだな、一番相手にしたくないタイプだ)
アルファリオも、リーミアの実力を肌で感じていた。
しばらく互いを見ていたが、先に攻撃に転じたのはリーミアだった。
バッ!
物凄い速さで相手の懐へと飛び出す。
「速ッ!」
アルファリオは驚いた。
それを見ていたケイレムとルファも驚く。
「え、一瞬!」
カン、カン、カンッ!
一瞬の間に、数回木剣が激しくぶつかり合う音が響く。
バッ!
リーミアとアルファリオは、互いに距離を取る。
「す……スゴ過ぎる……」
ルファは、盟主の動きにも驚いたが、その動きを交わしている相手にも驚いた。
光花メンバーが、誰も相手に出来なかったリーミアの攻撃を交わせる人物を見てケイレムは、本当に副盟主に相応しい人物が現れたのだと気付いた。
「盟主様、お客様がお見えになりました。面会の間でお待ちになっています」
彼女はリーミアに向かって、軽く一礼しながら言う。
「あ、はい……分かりました」
リーミアは返事をして席を立った。部屋を出る時、彼女はふと……立ち止まった。
「どんな御用件ですか?」
「副盟主を希望したいとの事でした」
それを聞いてリーミアは驚いた。昨日あんな言われ方したから、当面の間は副盟主に適した人物は現れないと諦めかけていたが……その条件を軽く越えられる人物が出て来た事に彼女自身、本心から予想外であると感じた。
一体相手はどんな人物なのか、リーミアは少し嬉しい気持ちで面会の間へと向かう。
彼女は初めて面会の間で話をする事になった。
本来なら入隊希望者が来た場合、面会の間を利用するのであった。が……リーミア自身が特にそれに拘らず、依頼者が居る場所で面談をしてしまう為、今まで使う事が無かった。レネラやマイリアが相手を見て判断する事に決めてから面談を勧める事になった為、来客者を面会の間に迎える様になった様である。
面会の間の近くへと向かうと、レネラが面会の間の前に立っていた。
「お客様がお待ちですよ」
彼女は特に不機嫌そうな感じでは無く、普通にしていた。
(どんな人が来たんだろう……)
そう思いながら、リーミアは軽くノックしてドアを開けて部屋に入る。
小さな部屋には若い男性が1人座っていた。華やかな模様が刻まれた木製のテーブルを挟んで向かい側の椅子へと腰掛けて、リーミアは相手の顔を見た。
「初めまして」
「あ……初めまして!よ、宜しくお願いします!」
面談するリーミアが少し緊張した感じで挨拶する。
「貴女が僕を面談するのでしょう?」
彼は愛想笑いしながら言う。
「あ……そうでしたね!すみません、えっと……お名前を聞かせてくれますか?」
「アルファリオと言います」
「え……と、アルファリオ様は、これまでどんな場所にいましたか?あと……現在の称号等教えてくれますか?」
「そうですね……自分は、数年前まで……あるグループに居ました。そちらでは主にグループの管理関係及び、新人等の人材育成に勤めて参りました。後継人が育ち自分が居なくてもグループがやって行けると感じて、自分はグループを離れて、最近まで小さなチームで魔物狩をしておりました。現在の称号は、最近になって……やっと金の称号を得ました」
アルファリオの話を彼女は頷きながら聞いていた。
「そうでしたか……こちらには、どの様な経緯で入隊を希望しましたか?」
「マネニーゼには、およそ25以上のグループがあり、それぞれが階級上げや派閥を競い合っております。老舗のグループになる程、知名度が高く人員も多くなります。内部でも階級を競い合う位、規律等に縛られてます。そう言った枠組から外れ、独自の路線でありながら、周囲からも常に目を向けられているグループがあれば、気にならざるには無いと思いますね」
「なる程……気になって来たのですね」
「はい、このグループはまだ、出来たばかりですが……僕から言わせれば、大きな地盤を固められて造られて、これから高く大きく伸びようとする、一種の巨大な塔の様に感じられます。その塔が何処まで伸びて行くのか興味を感じて、自分は貴女に会いに来ました」
「私は、それ程までとは想像していませんでしたが……」
リーミアの言葉にアルファリオは愛想笑いする。
「ご謙遜を……それとも、自分の足元は見て無いだけですかね?」
「どの様にですか?」
「巷では、貴女の事は話題になっていますよ。ギルドに参加登録して約3ヶ月……その間に8等級まで称号を上げ、聖魔剣の使い手として名を馳せている……と、言う噂は……他のギルド集会所にも声が聞こえてますよ」
「なる程……私の噂を聞いて、貴方はこちらのギルド集会所に移動の手続きをしたのですね」
「はい、貴女のグループに入り、このグループが何処まで成長するのかを見届けたく思いまして……」
「分かりました。貴方の真意は了承いたしました。今後はこちらで頑張って頂きますが……ただ、貴方の称号は金だと仰いましたね。そうなると……私よりも階級が2つ上になりますね。如何でしょうか?貴方が盟主となり、このグループを引っ張って行っては?」
リーミアの言葉に彼はフッと笑った。
「何か勘違いをなされておりますね」
「何を……ですか?」
「グループとは、簡単に盟主を変える事は出来ない物です。いえ……安易に変えてはいけないのです。貴女が立ち上げた組織だから、現在居るメンバーは貴女に付き添って来ているのです。当主が変われば、それに反旗を翻し、内部から崩壊する事だって起こり得る……それが組織と言うものです。貴女の階級は現在の僕よりも低いかもしれないですが……僕から言わせれば、階級や称号なんて、所詮飾りでしか無いと思っております。人の価値基準なんて称号や階級で決め付けられる程、安っぽくは無いと思っております。それに……貴女自身も既に気付いておられるのでは無いでしょうか?自身の存在が、この国でどれ程の影響を与えているのか……ご存知であるかと、思っておりましたが……」
そう言われて、リーミアは少しアルファリオに教えられた……と、少し反省の色を見せた。
「そうですね、貴方の言うとおりでした。私も、もう少し勉強が必要ですね。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ、少し言い過ぎました」
彼は軽く一礼をした。
ドアの向こう側で彼等の話を聞いていたレネラとマイリアは、微笑みながら「今回は正解だったね」と、呟いた。
「では……これから、副盟主として……色々と教えて頂けますか?」
「はい、貴女が望むのであれば、喜んで教えさせて行きます」
「ありがとうございます。ところで……貴方がどの程度の実力か、少しお手合わせ願いますか?」
「え……はあ、構いませんが……?」
「では、こちらへ……」
リーミアはアルファリオを連れて面会の間を出て、練習場へと向かう。
練習場ではケイレムとルファが練習をしていた。
彼等は、見慣れ無い人物が現れた事に驚く。
「こんにちは、盟主様。そちらの方は?」
「今日、入隊の方です。名前はアルファリオです。宜しくね」
「初めまして、よろしくお願いします」
2人は一緒に挨拶する。
「私が、お手合わせしますので、ちょっと離れてくださいね」
「え……盟主様が!」
そう言われて、彼等は急いで練習場の観戦出来る場所まで立ち去る。観戦出来る場所には、レネラとマイリアの姿もあった。
「あれ?管理人と秘書も見学ですか?」
「ええ……もしかしたら期待の副盟主誕生の瞬間が見られるかもしれないから……」
「そうなんですか?」
「へえ、皆は貴女の実力を把握している様ですね」
「まあ……ある意味怖がられてますが……」
そう言いながら、リーミアは木剣を手にする。アルファリオも、両手に木剣を手に構えた。
簡単な腕試しが始まったが……2人とも互いを見つめたまま、動かなかった。
「珍しい……」
ルファが少し驚いた表情で言う。
「どうしたの?」
「あの盟主様が、躊躇しているわ……相当強いわね、あの男性……」
2人が構えたまま動かなかった事に、ケイレムはルファの言葉を聞いて気付いた。
(隙がないわ……どう、攻めても交わされてしまう……この人、見た目以上に強い!)
リーミアは今まで会った事の無い相手に驚いていた。
(恐ろしい、一瞬でも、隙を見せたら命取りだな、一番相手にしたくないタイプだ)
アルファリオも、リーミアの実力を肌で感じていた。
しばらく互いを見ていたが、先に攻撃に転じたのはリーミアだった。
バッ!
物凄い速さで相手の懐へと飛び出す。
「速ッ!」
アルファリオは驚いた。
それを見ていたケイレムとルファも驚く。
「え、一瞬!」
カン、カン、カンッ!
一瞬の間に、数回木剣が激しくぶつかり合う音が響く。
バッ!
リーミアとアルファリオは、互いに距離を取る。
「す……スゴ過ぎる……」
ルファは、盟主の動きにも驚いたが、その動きを交わしている相手にも驚いた。
光花メンバーが、誰も相手に出来なかったリーミアの攻撃を交わせる人物を見てケイレムは、本当に副盟主に相応しい人物が現れたのだと気付いた。
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