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聖魔剣奪還
神官剣士と魔剣士
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~城壁近郊…
純白城周辺の城壁は、隣国からの襲撃に耐えれる様に、大きな堀が作られ、人工の用水路が儲けられていた。過去リムア姫が王位に即位してから以後100年以上は純白城が異国に寄って襲撃された事が無かった。
辺境の砦では、100年の間に何度か、異国との諍いはあったが、激しい争いになる程の騒ぎまでには至らず、短期間で収集がつく程度に騒ぎは終っている。
城壁近郊…周辺の草原地帯を少し進んだ場所に、彼等が狙っている中規模程度の魔獣の姿があった。
魔獣近くまで近付くと、サリサが周辺を見回した。草原から少し離れた位置には、森があった。森の手前には岩山などが見えた。
周囲を見回して居ると、彼女は何か違和感らしい気配に気付いた。それと同時にアーレスが彼女に声を掛ける。
「害虫が1匹うろついている様だね」
「ええ…殺気を際立たせているわ。フ…あれで隠れているつもりかしら?」
「頼めるか?」
「任せて、駆除なら…直ぐに片付けてやるわ」
「すまない」
彼等が何か話て居ると、リーミアが気になって彼に近付く。
「何かありましたか?」
「何でもないよ、さあ…リーミアちゃん、君は、目の前の魔獣討伐の主催者だ。その為の手順を僕が教えよう」
「は…はい」
そう返事しながら、サリサを見ると、彼女はその場に残って軽く手を振る。
「サリサさんは、どうしたのですか?」
「ちょっとね、ゴミ掃除をしてくるんだよ」
「え…ゴミ掃除って?あ…でしたら私が…」
「君は目の前の事に集中して、余計な者は僕や彼女が責任持って済ませるからね」
「は…はあ?」
アーレスは、無理矢理彼女の腕を引っ張り、魔獣の方へと行かせる。
「王女様、初の討伐頑張って下さい」
サリサは軽く胸を押し当てながら一礼する。
アーレスと一緒に魔獣へと向かう姿が遠くなるのを確認すると、彼女は足元の小石を拾い上げて、すかさず森の茂みの中へと投げ付ける。
ガンッ
「グワッ」
森の中で、何か物音が響き、それと同時に呻き声が聞こえた。
サリサは袋の中から甲冑を取り出し、装備して剣を携えて、森の中へと入る。
「光の紋様を授かりし者に近付く不届き者よ。其方の相手はこの私だ!」
小石を頭に当てられた赤黒い鎧をした者は、いきなりの不意打ちに苛立っていた。
「何者だ貴様、こんな事してタダで済むと思うな!」
「フ…勝手な言い掛かりを、聖魔剣を奪って置いて良く言う」
その言葉に彼は更に苛立ちを見せた。
「その剣を奪ったのは俺では無い。ルディアンスだ!貴様らは俺達の区別も付かないのか?」
「そう…ルディアンスね分かったわ。まあ…それは良いとして、貴方が彼女を狙って居るのは事実。今この場から去りなさい。でなければ…この場は私が相手します」
サリサは剣を鞘から抜き出す。
銀色に研ぎ澄まされた刃を煌めかせ、切れ味の鋭そうな細身の長剣を彼女は片手に持つ。
「フン、弱い奴ほど良く吠える…と、言うな」
「弱いか、どうか…試して見る事ね」
「ああ、やってやるさ」
彼は棒状の柄を腰から取り出し、軽く振ると柄の先から長剣が現れた。
「行くぞ!」
「掛かって来なさい!」
キーンッ!
激しい勢いで2つの金属がぶつかり合う。
キン、キンッ
両者は一歩も譲らず、激突する。
(何だ、この女は、恐ろしく強い…)
激しく剣を交えたセドラは、少し後退してしまう。
「グ…これならどうだ!」
剣を軽く振り、その後勢い良く剣を振りかざした。
ゴオッー!
凄まじい疾風が吹き荒れて、周囲の木々が切り裂かれ倒れる。
ズササーッ
砂煙に巻き込まれながらセドラは仮面の下から満面の笑みを浮かべた。
「フ…口程にも無かったな」
勝ち誇って、彼はその場から立ち去ろうとした時だった。
「残念ね、この程度の技では、私は倒せないわよ」
彼女の声を聞いて、セドラはギョッとして木々が倒れた方を見ると、サリサが立っていた。しかも彼女の周囲には薄い幕が貼られていた。サリサは、軽く長い髪を手で靡かせると、余裕の表情で前へと一歩踏み出す。
「き…貴様は何者だ!」
「ああ…そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は神官剣士のサリサ。現在は大神官様の命により光の紋様を授かりし者を護衛に就いているのよ。貴方の様な害虫を彼女に近づけさせない為にね。言って置くけど私を侮らない事ね。勝負するなら全力で掛かって来なさい。こう見えても私は神殿の神官剣士騎士団長の下に着く7剣士の1人。ギルドの称号で言うなら金の称号ってところかしら?」
「グウウ…」
メヌザから何も情報を聞かず、勝手に突っ張り出て来てしまった事をセドラは少し後悔した。
彼は、更に剣を振り、赤黒い剣先へと剣を変化させると、凶暴な勢いで彼女へと挑んだ。
キン、キンッ!
勢いが増し、更に攻撃性が上がってサリサを追い詰める。
「クハハー、どうだ、俺の方が強いだろう!思い知ったかー!」
彼女の剣が刃こぼれする。セドラが勢い良く剣を振りかざすと、キーンッと音を立てて、サリサの剣先が折れてしまった。
ザッ…
2人は少し間合いを取った。
「ハァハァ…どうだ、思い知ったか、貴様は所詮その程度だ…」
セドラの言葉にサリサは相変わらず余裕の表情だった。
「貴方のご期待に応えられなくて残念ね…」
サリサは折れた剣を鞘に収める、その剣を再び鞘から抜くと、折れた剣先は元通りに戻っていた。
「ま…魔法剣!」
「私の剣は単なる魔法剣では無いわよ」
彼女は軽く指先で剣の刃を撫でると剣は仄かな光を放つ。
「光の魔法を受け継ぎし魔法剣よ。今までは貴方の実力を見る為の小手調に過ぎなかったわ。大体の素性は読めたし…貴方にはここで消えて貰うわね」
サリサは剣を構えてセドラを見つめた。
「グヌ…」
「行くわよ!」
サリサは、そう掛け声を出すと同時に、素早く動いた。セドラは一瞬の動きに彼女を見失う、次の瞬間、彼女は目の前に現れて、剣を振りかざす。
キンッ!
激しく刃がぶつかり合う。
「たああー!」
ガキンッ!
細い腕に細身の剣だが…光の魔法を纏った剣は、凄まじく強烈な力を増していた。
「グワッ!」
セドラは激痛に耐えきれなく、思わず剣を手から落としてしまった。
「グググ…」
セドラは苦悶の表情を浮かびながらサリサを見た。
「こんなヤツに負けるとは…」
「ああ、そう言えば、最後に大事な事を忘れていたわ。仮に貴方が私を倒したとしても、彼女のそばには、もう1人護衛がいるわ。ちなみにその護衛は、今の私よりも遥かに強いのよ。まあ…それ以上に正統な光の紋様を授かりし方は、既に7つの光の魔法を習得したから、貴方が万が一にでも彼女に近付いても、光の魔法の効果を受ける事になるわよ。こんなん風にね」
彼女は、光らせた剣先を赤色に変える。
「斜陽!」
サリサが魔法を唱えると同時に、周囲が赤く眩くなり、赤い刃が上空から降り注いだ。
「グワッ、何だこれは!」
慌てて逃げ惑うセドラは、足や腕に刃が当たり、苦痛の表情をする。
「ク…くそぉ、妙な術を使いやがって」
サリサは逃げ惑うセドラにゆっくりと近付く。
「聖光!」
眩い白銀の光が剣全体を照らす。美しく輝く光をセドラに近付けると…その光を近付けられただけで、セドラは苦悶の表有情で激しくもがく。
「ウギャー、何だソレは!や、やめろ…近づけるなー!グワー!」
「魔を滅する聖なる光よ、己の体を蝕む邪気を追い払い、真っ当な人間になりなさい」
「お…おのれぇー」
彼は懐から黒い球を出すと、それを地面に叩きつける。
ボンッ
黒い煙が周囲に広がった、セドラはその隙に剣を拾い上げて逃げ出す。サリサは煙を吸わない様に結界を張る。
「今日のところは…これぐらいにしておいてやる…覚えていろ!」
そう言いながら、煙が消えると周囲からセドラの姿が消えて無くなっていた。
「逃げられてしまったか…まあ、でも、テリオンの剣を奪ったのが、ルディアンスと言う奴は分かったわし、一応収穫があった…と言う事にしておきましょう」
彼女は剣を鞘に収めて、森を出て草原の方を見る。
「さて…リーミア様が、どんな戦いをしているのか拝見しなければ…」
サリサは森を抜けて、草原の方へと走って行く。
純白城周辺の城壁は、隣国からの襲撃に耐えれる様に、大きな堀が作られ、人工の用水路が儲けられていた。過去リムア姫が王位に即位してから以後100年以上は純白城が異国に寄って襲撃された事が無かった。
辺境の砦では、100年の間に何度か、異国との諍いはあったが、激しい争いになる程の騒ぎまでには至らず、短期間で収集がつく程度に騒ぎは終っている。
城壁近郊…周辺の草原地帯を少し進んだ場所に、彼等が狙っている中規模程度の魔獣の姿があった。
魔獣近くまで近付くと、サリサが周辺を見回した。草原から少し離れた位置には、森があった。森の手前には岩山などが見えた。
周囲を見回して居ると、彼女は何か違和感らしい気配に気付いた。それと同時にアーレスが彼女に声を掛ける。
「害虫が1匹うろついている様だね」
「ええ…殺気を際立たせているわ。フ…あれで隠れているつもりかしら?」
「頼めるか?」
「任せて、駆除なら…直ぐに片付けてやるわ」
「すまない」
彼等が何か話て居ると、リーミアが気になって彼に近付く。
「何かありましたか?」
「何でもないよ、さあ…リーミアちゃん、君は、目の前の魔獣討伐の主催者だ。その為の手順を僕が教えよう」
「は…はい」
そう返事しながら、サリサを見ると、彼女はその場に残って軽く手を振る。
「サリサさんは、どうしたのですか?」
「ちょっとね、ゴミ掃除をしてくるんだよ」
「え…ゴミ掃除って?あ…でしたら私が…」
「君は目の前の事に集中して、余計な者は僕や彼女が責任持って済ませるからね」
「は…はあ?」
アーレスは、無理矢理彼女の腕を引っ張り、魔獣の方へと行かせる。
「王女様、初の討伐頑張って下さい」
サリサは軽く胸を押し当てながら一礼する。
アーレスと一緒に魔獣へと向かう姿が遠くなるのを確認すると、彼女は足元の小石を拾い上げて、すかさず森の茂みの中へと投げ付ける。
ガンッ
「グワッ」
森の中で、何か物音が響き、それと同時に呻き声が聞こえた。
サリサは袋の中から甲冑を取り出し、装備して剣を携えて、森の中へと入る。
「光の紋様を授かりし者に近付く不届き者よ。其方の相手はこの私だ!」
小石を頭に当てられた赤黒い鎧をした者は、いきなりの不意打ちに苛立っていた。
「何者だ貴様、こんな事してタダで済むと思うな!」
「フ…勝手な言い掛かりを、聖魔剣を奪って置いて良く言う」
その言葉に彼は更に苛立ちを見せた。
「その剣を奪ったのは俺では無い。ルディアンスだ!貴様らは俺達の区別も付かないのか?」
「そう…ルディアンスね分かったわ。まあ…それは良いとして、貴方が彼女を狙って居るのは事実。今この場から去りなさい。でなければ…この場は私が相手します」
サリサは剣を鞘から抜き出す。
銀色に研ぎ澄まされた刃を煌めかせ、切れ味の鋭そうな細身の長剣を彼女は片手に持つ。
「フン、弱い奴ほど良く吠える…と、言うな」
「弱いか、どうか…試して見る事ね」
「ああ、やってやるさ」
彼は棒状の柄を腰から取り出し、軽く振ると柄の先から長剣が現れた。
「行くぞ!」
「掛かって来なさい!」
キーンッ!
激しい勢いで2つの金属がぶつかり合う。
キン、キンッ
両者は一歩も譲らず、激突する。
(何だ、この女は、恐ろしく強い…)
激しく剣を交えたセドラは、少し後退してしまう。
「グ…これならどうだ!」
剣を軽く振り、その後勢い良く剣を振りかざした。
ゴオッー!
凄まじい疾風が吹き荒れて、周囲の木々が切り裂かれ倒れる。
ズササーッ
砂煙に巻き込まれながらセドラは仮面の下から満面の笑みを浮かべた。
「フ…口程にも無かったな」
勝ち誇って、彼はその場から立ち去ろうとした時だった。
「残念ね、この程度の技では、私は倒せないわよ」
彼女の声を聞いて、セドラはギョッとして木々が倒れた方を見ると、サリサが立っていた。しかも彼女の周囲には薄い幕が貼られていた。サリサは、軽く長い髪を手で靡かせると、余裕の表情で前へと一歩踏み出す。
「き…貴様は何者だ!」
「ああ…そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は神官剣士のサリサ。現在は大神官様の命により光の紋様を授かりし者を護衛に就いているのよ。貴方の様な害虫を彼女に近づけさせない為にね。言って置くけど私を侮らない事ね。勝負するなら全力で掛かって来なさい。こう見えても私は神殿の神官剣士騎士団長の下に着く7剣士の1人。ギルドの称号で言うなら金の称号ってところかしら?」
「グウウ…」
メヌザから何も情報を聞かず、勝手に突っ張り出て来てしまった事をセドラは少し後悔した。
彼は、更に剣を振り、赤黒い剣先へと剣を変化させると、凶暴な勢いで彼女へと挑んだ。
キン、キンッ!
勢いが増し、更に攻撃性が上がってサリサを追い詰める。
「クハハー、どうだ、俺の方が強いだろう!思い知ったかー!」
彼女の剣が刃こぼれする。セドラが勢い良く剣を振りかざすと、キーンッと音を立てて、サリサの剣先が折れてしまった。
ザッ…
2人は少し間合いを取った。
「ハァハァ…どうだ、思い知ったか、貴様は所詮その程度だ…」
セドラの言葉にサリサは相変わらず余裕の表情だった。
「貴方のご期待に応えられなくて残念ね…」
サリサは折れた剣を鞘に収める、その剣を再び鞘から抜くと、折れた剣先は元通りに戻っていた。
「ま…魔法剣!」
「私の剣は単なる魔法剣では無いわよ」
彼女は軽く指先で剣の刃を撫でると剣は仄かな光を放つ。
「光の魔法を受け継ぎし魔法剣よ。今までは貴方の実力を見る為の小手調に過ぎなかったわ。大体の素性は読めたし…貴方にはここで消えて貰うわね」
サリサは剣を構えてセドラを見つめた。
「グヌ…」
「行くわよ!」
サリサは、そう掛け声を出すと同時に、素早く動いた。セドラは一瞬の動きに彼女を見失う、次の瞬間、彼女は目の前に現れて、剣を振りかざす。
キンッ!
激しく刃がぶつかり合う。
「たああー!」
ガキンッ!
細い腕に細身の剣だが…光の魔法を纏った剣は、凄まじく強烈な力を増していた。
「グワッ!」
セドラは激痛に耐えきれなく、思わず剣を手から落としてしまった。
「グググ…」
セドラは苦悶の表情を浮かびながらサリサを見た。
「こんなヤツに負けるとは…」
「ああ、そう言えば、最後に大事な事を忘れていたわ。仮に貴方が私を倒したとしても、彼女のそばには、もう1人護衛がいるわ。ちなみにその護衛は、今の私よりも遥かに強いのよ。まあ…それ以上に正統な光の紋様を授かりし方は、既に7つの光の魔法を習得したから、貴方が万が一にでも彼女に近付いても、光の魔法の効果を受ける事になるわよ。こんなん風にね」
彼女は、光らせた剣先を赤色に変える。
「斜陽!」
サリサが魔法を唱えると同時に、周囲が赤く眩くなり、赤い刃が上空から降り注いだ。
「グワッ、何だこれは!」
慌てて逃げ惑うセドラは、足や腕に刃が当たり、苦痛の表情をする。
「ク…くそぉ、妙な術を使いやがって」
サリサは逃げ惑うセドラにゆっくりと近付く。
「聖光!」
眩い白銀の光が剣全体を照らす。美しく輝く光をセドラに近付けると…その光を近付けられただけで、セドラは苦悶の表有情で激しくもがく。
「ウギャー、何だソレは!や、やめろ…近づけるなー!グワー!」
「魔を滅する聖なる光よ、己の体を蝕む邪気を追い払い、真っ当な人間になりなさい」
「お…おのれぇー」
彼は懐から黒い球を出すと、それを地面に叩きつける。
ボンッ
黒い煙が周囲に広がった、セドラはその隙に剣を拾い上げて逃げ出す。サリサは煙を吸わない様に結界を張る。
「今日のところは…これぐらいにしておいてやる…覚えていろ!」
そう言いながら、煙が消えると周囲からセドラの姿が消えて無くなっていた。
「逃げられてしまったか…まあ、でも、テリオンの剣を奪ったのが、ルディアンスと言う奴は分かったわし、一応収穫があった…と言う事にしておきましょう」
彼女は剣を鞘に収めて、森を出て草原の方を見る。
「さて…リーミア様が、どんな戦いをしているのか拝見しなければ…」
サリサは森を抜けて、草原の方へと走って行く。
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