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聖魔剣奪還
居酒屋
しおりを挟む~数日後…
森林地帯での騒ぎが近くの村で話題になった。
ギルドのメンバー達が凶悪そうな魔物に襲われ、生き残ったのが2人だけで、しかも…助けてくれた男性は、謎の人物で聖魔剣を持っていた…と言う事だった。
~村にある居酒屋
「それにしても、俺は聖魔剣の所有者ってのは、今まで綺麗なお姫様ばかりだと思っていたが、まさか…男性だったとは全く予想外だな」
「お前な…聖魔剣とは、聖なる魔剣と言う意味なんだよ、つまり…聖剣でもあり魔剣でもあるのだ。それによ…昔、国を救ったお姫様が、転生しても必ずしも美しい女性とは限らないんだよ」
「ほお…つまり、お前さんが言いたいのは、ギルドに参加している者を救ったと言うのは、転生した王女だと言うのかね?」
「そうは言わんが、可能性として無いとも言えないだろう?話を聞く限りだと…」
「まあ、そうだな~」
などと酒呑みの男性達の会話を耳にしながら、1人カウンター席で発泡酒を呑んでいる黒色のマントに、三角帽を被った男性の姿があった。
彼は、数日前の事を思い出していた。
~マネニーゼ市場、宿の前…早朝
リーミアは神殿に行く為に、荷物の整理をしていた。サリサもリーミアの荷造りの準備の手伝いをしていた。
宿の主人と女将は、数日前に帰宅したばかりのリーミアを見て残念そうな表情をしていた。
「神殿での修行が終わったら、是非ともまたご利用してください!」
宿の女将が悲しそうにリーミアの両手を掴みながら言う。
それを傍で見ていたセフィーの姿があった。彼は大神官の依頼で、旅に出る準備をしていた。出発前に一度宿に来て欲しいとリーミアに言われて、馬を連れて宿の近くで待機していた。
(全く賑やかな連中だな…)
そう思いながら1人で空を見上げながら立っていると、リーミアが彼の側へと来た。
「祠に向かうのですね」
「ああ…結界を張るだけの簡単な仕事だ。直ぐに戻って来るよ」
「良かったら、道中の資金として使ってください」
リーミアは、金貨の入った袋を彼に渡す。セフィーは袋の中身を確認して驚いた。
「い…良いのかよ、こんなに貰っちゃって?」
「いずれ貴方には、私の為に働いてもらうつもりですから、その為の前払いとして受け取ってください」
「悪いけど、俺は剣士じゃないんだ。戦闘ではもう少し腕の立つ人を雇った方が俺なんかよりも良いぜ」
「いえ、貴方には貴方に適した仕事をして頂こうと思っております。宝探しなんかお得意でしょう?」
それを聞いたセフィーは、一瞬唖然としたが、直ぐに笑い出した。
「クハハ、こりゃ良いわ。気に入ったぜお嬢ちゃん、俺の事を良くわかっているな!まあ…乗り掛かった船だ。とことん付き合わせてもらうぜ、取り敢えず…この前払い金は頂いておこう!」
セフィーとリーミアが話をしている中、リーミアの側にティオロが来た。
「ねえ、何でセフィーさんに金貨あげて、俺には金貨くれないの?ずるいじゃないか!」
「順番で渡すから、ジッとしていなさい。言う事聞かないと上げませんよ!」
「はあ~い」
そう返事をしながら、ティオロは宿の方へと戻って行く。
少し呆れた表情で見ていたサリサがリーミアの側へと来た。
「あの様な者に、貴女が手を差し伸べる必要はありませんよ。彼には自分で金を稼ぐ様に躾けるべきです」
「分かっています。でも…彼のおかげで、私も色々学習させて頂いので、それなりに尽くしてますからね…それに放って置けないでしょう」
その言葉を聞いたサリサはフウッと溜息を吐きながらリーミアを見た。
「お優しいのですね、まあ…国を纏める者にとっては器量の深さも大切になりますから…そう言う意味では、宜しいかと思いますね。ただし甘やかし過ぎるのはダメですよ」
「分かってますよ」
話が一段落すると、彼は馬に跨り改めてリーミアを見た。
「じゃあ、ちょっと仕事を済ませに行ってくるので、失礼するよ」
「気をつけて!」
リーミアは手を振りながら、セフィーを見続けていた。
~現在…
彼は、少し前の事を思い出して発泡酒を飲んでいると、カウンターの向かい側に居る店の店員が「君、初めて見る顔だね」と、声を掛けて来た。
彼の言葉にセフィーは顔を上げて店員を見る。
「この辺では、あまり見掛けない容姿だ。旅の途中かね?」
「まあ…ちょっとね」
「こんな辺境に近い場所に来ても、見る物も無いし、この辺に住む人達の雑談しくらいしか話題がないよ」
「そうですな、まあ…自分は、ちょっとこれから北へと向かうので、その道中に立ち寄ったまでですよ」
「ほお、ここから北へ行くとなると…王家の遺跡がある場所にでも向かうのですか?」
「そうです。ちょっと、遺跡を見て見たいと思いまして」
「でしたら…表参道を通るのをお勧めしますよ、少し前なら森を抜けて近道出来ましたが、最近は魔物が巣食う様になりまして…先日も魔物狩りに来たギルドのメンバーが、2人だけ残して、他は魔物に喰われたらしいので…」
彼はそれを聞いて、先程飲み屋で大声で話をしていた男性達を見る。
「不思議な魔法剣を持った男性が助けてくれた…と言う話ですか?」
「ええ、そうです。もしかして貴方ですか?」
その問いに彼はフッと笑いながら自分の所有する剣を見せる。
「残念ながら、自分の持っている剣は無名の安物です。ずっと使い続けている為、最近は刃も痩せて来ていてね…」
「そうだったんですね。もしや聖魔剣の使い手かと思いまいたよ」
「俺も、その人物が気になりますね。一体どんな者なのか…」
「話だけなら、現在医者で治療受けている少年から話は聞けます。ただ…もし聖魔剣の使い手なら、国を救った王女様の生まれ変わりなのでは…と、皆が噂しています」
その言葉にセフィーはフフ…と軽く笑った。
「本物の王女様の生まれ変わりは、現在神殿に居ますよ」
「え、そうなんですか?」
店員は大声で驚き、周囲の人はそちらに目を向ける。
「色々と事情があって、現在は光の魔法の鍛錬を受けています。俺が王家の遺跡に向かうのも、それに関連した事なのですよ、多分…ギルドのメンバーを救ったのは複数あると言われる聖魔剣の一つだと俺は考える」
「なるほど…そうだったのですか…」
彼が席を立とうとした時だった、彼の側に1人の中年男性が来た。
「本当に王女様は復活したのですか?」
「ええ、先日神殿で光の洗礼を受けて、光の文様を授かりました」
セフィーの言葉に飲み屋に居た男性が「アッ!」と、大声を出す。
「そう言えば、俺の友人が純白城のある方向を何気なく見たら、夕暮れ時に城の方が輝いたと言っていたよ!」
「それが、光の洗礼を受けた時の事だ。俺もその場に居たんだ。とてつもない輝きだったよ」
彼の言葉に周囲の人は唖然とした表情で彼を見る。
セフィーは、勘定を払って店を出ようとした、その時、中年男性が更に声を掛けてくる。
「な…なあ、王女様が復活したなら、王位は彼女の物になるのだろう?」
その言葉にセフィーは首を横に振った。
「残念ながら王位継承権の競技は続く。姫様の生まれ変わりで在ろうとも、国や神殿は競技に参加させて、最終競技を勝ち抜いてもらう方向で考えているのだ。更に言えば、そのお姫様の転生した子は、現在その競技に参加出来るのか難しい状況にある。俺が王家の遺跡に向かうのも、彼女が光の魔法を習得した後に、光の聖魔剣を手にする為に、その間…良からぬ者が立ち入らない為の結界を張るためだ」
「そう言う事なら、我々も喜んで協力するさ、この国の為に身を犠牲にしながらも護った方の王位復活を遮る輩が居るのなら、我々が彼等を許さないさ」
「そう思って頂くのは光栄だが…その反面、暗躍も蠢いているのも事実。国の何処かで、侵略を練っているのが居るらしい。だから、俺の行動もここだけの話にして欲しい。下手に外部に情報が流れて、彼女を襲う者が現れかね無いからね。現在の王女様の生まれ変わりは、転生した時に持っていた力を失っているから、普通の少女と変わりない状況だ。今もし…仮に襲われたら、多分…エルテンシア国は、正統な王位を永遠に失う事になるだろうな…」
「そう言う事なら、誓って我々は誰にも言わない。お前達もこの事は誰にも言うなよ!」
それを聞いた周囲の人達は皆「オオッ!」と、威勢良く黙って返事をした。
彼等の勇ましそうな表情を見たセフィーは、軽く微笑んで手を振って店を出て行く。
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