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24.あたしと女騎士と捜索ルート
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あれからずっと、あたしとルーシェはレオンを探して走り回っている。
エルファリアのお屋敷を飛び出して、北へ向かったあたし達。
ひたすらに馬を走らせてレオンの居場所を探しているのだけれど、数日経っても特に手がかりを得られないまま。
途中で立ち寄った町で聞き込みをしてみたのだけれど、それらしき目撃情報すらも見つからない。
今日はもう夜も遅いから、適当に宿をとって、明日からまたレオン探しを再開しようと思う。
「全く……! どうしてレオンは、こうも手のかかる幼馴染なのかしらね!」
町で一番良い宿を探してくれたルーシェが、その部屋の鍵を開けて中を確認した。
「……特に危険は無いかと思われます。どうぞお入り下さい、お嬢様」
「だから、その『お嬢様』って呼ぶのはやめなさいって言ったでしょ? あたし達は『ただの旅人』なの。この前も説明したじゃない!」
「申し訳ございません……。どうにも慣れないものですから」
そう。あたしとルーシェは、ただの旅人。
何せあたしは、第二王子との縁談を放り出して家を飛び出した身ですもの。ここで下手に目立ってしまったら、お父様に連れ戻されてしまうかもしれない。
もしそうなってしまったら、あたしはレオンを探さなくなってしまう。それに……。
「……ダメよ、あたし! 最悪の場合を想定するならまだしも、それで落ち込んでたら最高の結果なんて叩き出せるはずがないわ!」
危ない危ない。
ネガティブになっても、プラスになることなんて何も無い。むしろパフォーマンスが低下して、本来ならやれたはずのことを失敗してしまう危険性が高まってしまうもの!
あたしは絶対諦めない。
何が何でもレオンを見つけ出して、あたしの本当の気持ちを知ってもらわないといけないんだもの。
このまま何も言えず終いで、一生の別れになんてさせてたまるものですか!
あたしは改めて気持ちを引き締めて、急に大声を出したあたしを不思議そうに見下ろすルーシェの顔を見上げた。
「ルーシェ! とにかく明日からは、捜索範囲を絞っていくわよ!」
「と仰いますと……具体的には、どのようになさるおつもりで?」
今日までは闇雲に聞き込みをしたり、人が多く集まりそうな市場やお店を回って、しらみ潰しにレオンを探していた。
でも、こんな方法で簡単に見付かるはずがないのよ。
それは分かっていたのだけれど、あたしはどうにも焦りすぎていた。
あたしは部屋の中央に置かれたソファに腰を下ろし、ルーシェが部屋の内側から施錠したのを見ながら、再度口を開く。
「そもそもね、あたし達は探し方を間違っていたのよ。こんな町中にレオンが居るはずないわ。だってあたし、聞いたのよ。レオンはゴードンから『空気の良い場所で療養すべきだ』と勧められていたってね!」
「ゴードン医師の勧め……ですか。ならばお嬢様……ではなく、ティナの仰る通り、王都に近いこの町よりも離れた土地を探すべきですね」
それを聞いて、ルーシェが腰の剣を壁に掛けながら返事をする。
ちなみにこの『ティナ』という呼び方は、このあたし、ラスティーナの愛称である。
まだあたしもレオンも子供だった頃、彼もあたしのことをティナと呼んでくれていたのよね。
年齢を重ねていくにつれて、もうその愛称を口にしてくれることは無くなってしまったけれど……。
それに『ティナ』なんて名前はそれなりにありふれているだろうから、身分を隠して活動するにはピッタリだと思う。
なのでルーシェには、特別にその名前で呼ぶように言い付けている。まあ、それでもたまにお嬢様呼びが抜けないことが多々あるので、厳しく教育していく必要がありそうね。
着ている服はお互いに旅人風の服装なので、普段の振る舞いに注意しておけば大丈夫……だと思いたい。
「そこであたしは閃いてしまったの! 空気が良くて、あたしの居る王都から離れていて、レオンが行きそうな場所をね!」
あたしはフフンと口元を緩めながら、こう告げた。
「つまり……この町から更に北。あたしが国立学校に通っていた間にレオンが修行をしていた、北の里に向かったに決まっているのよ‼︎ ああっ、自分の推理力の高さが恐ろしい……!」
「北の里……。確かそこは、レオン殿の魔法のお師匠様がいらっしゃるという隠れ里のことでしたか」
「ええ! レオンの話が事実なら、あの里は貴重な薬草が生育する自然豊かな森の中にあるそうよ。そんな環境なら、療養するにはもってこいの場所だと思わない?」
「はい、流石はお嬢……ティナですね。お師匠様がいらっしゃる里でしたら、弟子であるレオン殿が事情を話せば、すぐに住まわせて下さることでしょう」
「そうでしょう、そうでしょう⁉︎」
うんうん、やっぱりルーシェもそう思うわよねっ!
「そうと決まれば、夜明けと共に北の里を目指してかっ飛ばしていきましょ!」
「はい。その為にも、今夜はたっぷりと休息を取っておきましょう」
あまりにも完璧すぎるレオン追跡計画に、我ながら酔いしれてしまいそう……!
あたし達はすぐに寝る準備を済ませ、明日からの長距離移動に向けて英気を養うことで意見が一致した。
けれどもこの決断が、更にあたしとレオンの物理的距離を伸ばしてしまうことになるだなんて……。
この時のあたしは、それを全く想像もせず、ウキウキ気分でベッドに潜り込んでいくのであった。
エルファリアのお屋敷を飛び出して、北へ向かったあたし達。
ひたすらに馬を走らせてレオンの居場所を探しているのだけれど、数日経っても特に手がかりを得られないまま。
途中で立ち寄った町で聞き込みをしてみたのだけれど、それらしき目撃情報すらも見つからない。
今日はもう夜も遅いから、適当に宿をとって、明日からまたレオン探しを再開しようと思う。
「全く……! どうしてレオンは、こうも手のかかる幼馴染なのかしらね!」
町で一番良い宿を探してくれたルーシェが、その部屋の鍵を開けて中を確認した。
「……特に危険は無いかと思われます。どうぞお入り下さい、お嬢様」
「だから、その『お嬢様』って呼ぶのはやめなさいって言ったでしょ? あたし達は『ただの旅人』なの。この前も説明したじゃない!」
「申し訳ございません……。どうにも慣れないものですから」
そう。あたしとルーシェは、ただの旅人。
何せあたしは、第二王子との縁談を放り出して家を飛び出した身ですもの。ここで下手に目立ってしまったら、お父様に連れ戻されてしまうかもしれない。
もしそうなってしまったら、あたしはレオンを探さなくなってしまう。それに……。
「……ダメよ、あたし! 最悪の場合を想定するならまだしも、それで落ち込んでたら最高の結果なんて叩き出せるはずがないわ!」
危ない危ない。
ネガティブになっても、プラスになることなんて何も無い。むしろパフォーマンスが低下して、本来ならやれたはずのことを失敗してしまう危険性が高まってしまうもの!
あたしは絶対諦めない。
何が何でもレオンを見つけ出して、あたしの本当の気持ちを知ってもらわないといけないんだもの。
このまま何も言えず終いで、一生の別れになんてさせてたまるものですか!
あたしは改めて気持ちを引き締めて、急に大声を出したあたしを不思議そうに見下ろすルーシェの顔を見上げた。
「ルーシェ! とにかく明日からは、捜索範囲を絞っていくわよ!」
「と仰いますと……具体的には、どのようになさるおつもりで?」
今日までは闇雲に聞き込みをしたり、人が多く集まりそうな市場やお店を回って、しらみ潰しにレオンを探していた。
でも、こんな方法で簡単に見付かるはずがないのよ。
それは分かっていたのだけれど、あたしはどうにも焦りすぎていた。
あたしは部屋の中央に置かれたソファに腰を下ろし、ルーシェが部屋の内側から施錠したのを見ながら、再度口を開く。
「そもそもね、あたし達は探し方を間違っていたのよ。こんな町中にレオンが居るはずないわ。だってあたし、聞いたのよ。レオンはゴードンから『空気の良い場所で療養すべきだ』と勧められていたってね!」
「ゴードン医師の勧め……ですか。ならばお嬢様……ではなく、ティナの仰る通り、王都に近いこの町よりも離れた土地を探すべきですね」
それを聞いて、ルーシェが腰の剣を壁に掛けながら返事をする。
ちなみにこの『ティナ』という呼び方は、このあたし、ラスティーナの愛称である。
まだあたしもレオンも子供だった頃、彼もあたしのことをティナと呼んでくれていたのよね。
年齢を重ねていくにつれて、もうその愛称を口にしてくれることは無くなってしまったけれど……。
それに『ティナ』なんて名前はそれなりにありふれているだろうから、身分を隠して活動するにはピッタリだと思う。
なのでルーシェには、特別にその名前で呼ぶように言い付けている。まあ、それでもたまにお嬢様呼びが抜けないことが多々あるので、厳しく教育していく必要がありそうね。
着ている服はお互いに旅人風の服装なので、普段の振る舞いに注意しておけば大丈夫……だと思いたい。
「そこであたしは閃いてしまったの! 空気が良くて、あたしの居る王都から離れていて、レオンが行きそうな場所をね!」
あたしはフフンと口元を緩めながら、こう告げた。
「つまり……この町から更に北。あたしが国立学校に通っていた間にレオンが修行をしていた、北の里に向かったに決まっているのよ‼︎ ああっ、自分の推理力の高さが恐ろしい……!」
「北の里……。確かそこは、レオン殿の魔法のお師匠様がいらっしゃるという隠れ里のことでしたか」
「ええ! レオンの話が事実なら、あの里は貴重な薬草が生育する自然豊かな森の中にあるそうよ。そんな環境なら、療養するにはもってこいの場所だと思わない?」
「はい、流石はお嬢……ティナですね。お師匠様がいらっしゃる里でしたら、弟子であるレオン殿が事情を話せば、すぐに住まわせて下さることでしょう」
「そうでしょう、そうでしょう⁉︎」
うんうん、やっぱりルーシェもそう思うわよねっ!
「そうと決まれば、夜明けと共に北の里を目指してかっ飛ばしていきましょ!」
「はい。その為にも、今夜はたっぷりと休息を取っておきましょう」
あまりにも完璧すぎるレオン追跡計画に、我ながら酔いしれてしまいそう……!
あたし達はすぐに寝る準備を済ませ、明日からの長距離移動に向けて英気を養うことで意見が一致した。
けれどもこの決断が、更にあたしとレオンの物理的距離を伸ばしてしまうことになるだなんて……。
この時のあたしは、それを全く想像もせず、ウキウキ気分でベッドに潜り込んでいくのであった。
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