13 / 18
サプライズ
しおりを挟む
いつもより少し早く寝たので少し早く起きることに成功する。
だが隣にルリの姿はない。
俺より早く起きて服作りをしているのだろう。
「これより作戦に取り掛かる。ツバサ隊員、準備はいいか? サーイエッサー!」
自問自答をしてベッドから起き上がる。
こんなバカをしていてもルビィは夢の中のようで目が覚めることはない。
元より今からやることにルビィに手伝ってもらおうなんて考えちゃいない。
「錬金術は俺がやらないとな」
錬金釜へと向かう。
軟膏以来何も作ってはいなかったけど、定期的に綺麗にしていたのでそのまま使える。
「えーと、まずは水か」
基本的に初めは釜に水を入れる。
この水の量次第で作る量も決まってくる。
バケツに水を組んで錬金釜へと大量にぶち込み、釜の火をつける。
三人分って考えたら多い方がいい。
不味かったら魚の餌にするのも良いだろう。
「沸騰してきたらケーキの花を入れる……っと」
この前ルビィが小声で教えてくれたのはマーガレットのように綺麗に咲いた花びらが白くてテカテカしたケーキの花。
何でもケーキのように甘いからその名が付けられたらしい。
入れる前に嗅いでみたけどまさしくそんな感じだ。
でも匂いだけで食べたらあんまりおいしくないとかなんとか。
「後はみかんの実だな」
今度は潰して入れないようで小粒のまま円を描きながらボトボトと釜の中に入れていく。
入れる実によって甘かったり酸っぱかったりするらしい。
みかんの実は酸っぱい系なので今回は酸っぱいケーキが出来るはず。
「混ぜ混ぜ~、マゼンタ~」
混ぜる時は変な声が出る。
でも混ぜるのが楽しいのだ。
完成するまでひたすら混ぜ続けた。
「んー、固まらないなぁ」
軟膏と違って釜の中の色が変わっていく気配がない。
失敗か? それとも俺にはお菓子を作る才能がなかったのだろうか。
「何やってんのよ。これ入れるの忘れてるわよ」
いつの間にかルビィが起きていて、隣から何かを釜に放り込む。
それは、まだら模様の大きな何かの卵。
確かに手帳を見ると卵を入れると書いてあった。
しかも、殻ごと。
「あぁ、助かる」
「ふん。私が居なかったら何にも出来ないんだから」
そっぽを向いてはいるが、顔は赤らめていた。
それから混ぜ混ぜすること数分、釜の中の色は変わっていき、モクモクと煙が上がる。
「何これ、失敗か!?」
混ぜれば混ぜる度煙が勢いを増し、俺とルビィに襲いかかる。
「も、もう何やってんのよ──っうわぁ!?」
かき混ぜていた木の棒を取り上げようとした瞬間、煙が最高潮に盛り上がり俺たちを襲い、堪らず俺たちは尻もちをつく。
そして俺の左膝と、ルビィの右膝にはある物が乗っている。
ズッシリとしていて重たい。
「いたた……何やってんのよ! ……って何よこれ!」
ルビィが怒っているかと思えば、自分の膝にある物を見て驚いている。
実に忙しいやつだ。
だが内心ルビィのことは理解出来る。
「ど、どうしましたか!? す、凄い音が聞こえたんですが」
床下からルリが這い上がってくる。
どうやら俺たちが尻もちをついた音が床下に居たルリの元まで届いてしまったらしい。
でもちょうどいい。
「錬金術でケーキを作ってみたんだ。驚かせてごめんな? ルリ、いつも俺たちのために色々してくれてありがとな」
俺とルビィの膝に置かれていた完成したケーキを持ちながら照れくさいが感謝の意を伝える。
ケーキは俺の顔のふた周りも大きく、三人分にしてはちょっと多いかもしれない。
みかんの実の紫色は一切なく、俺が知っているみかんと生クリームがふんだんにあしらわれた美味しそうなケーキになっている。
そして、手に持てるように皿も錬金出来ているのは驚きだった。
「ふん。私も素材を探したんだから」
自分も協力したんだぞ、と言いたげで腕を組みながらルリに言い放っていた。
態度はツンケンしていて直して欲しいところだが、ルビィの力がなければこのケーキは完成しなかっただろう。
「つ、ツバサお兄ちゃん……ルビィちゃん……あ、ありがとうございます。わ、私、みなさんに貰ってばっかりで何もお返し出来てないです」
ぽろぽろと涙を零しながら自分は何も出来ず、貰ってばかりだと泣きながら言っているが、貰ってばかりなのは俺の方。
ルリが居なければ今頃俺は生きていなかった。
「そんなことはないさ。俺はこの島に来てからルリの世話になりっぱなしだ。朝からケーキはちょっと胃もたれしそうだけど、サプライズするにはこの時間しかなかったんだよな」
本当は昼や夜に作りたかったが、ルリも一緒に住んでいる手前、こうやってサプライズをするには今しかなかったことを右頬をかきながら白状する。
「い、胃もたれどんとこいです! 今お茶を淹れますね」
首を左右に振り、涙を振り払うと笑顔でキッチンの方へ向かっていく。
そんなルリを見て俺とルビィは自然と目が合う。
「喜んでもらえてよかったじゃない」
と、ルビィも嬉しそうな顔をしながらルリの元へと駆け寄って言った。
サプライズは無事、大成功と言っても過言ではないだろう。
だが隣にルリの姿はない。
俺より早く起きて服作りをしているのだろう。
「これより作戦に取り掛かる。ツバサ隊員、準備はいいか? サーイエッサー!」
自問自答をしてベッドから起き上がる。
こんなバカをしていてもルビィは夢の中のようで目が覚めることはない。
元より今からやることにルビィに手伝ってもらおうなんて考えちゃいない。
「錬金術は俺がやらないとな」
錬金釜へと向かう。
軟膏以来何も作ってはいなかったけど、定期的に綺麗にしていたのでそのまま使える。
「えーと、まずは水か」
基本的に初めは釜に水を入れる。
この水の量次第で作る量も決まってくる。
バケツに水を組んで錬金釜へと大量にぶち込み、釜の火をつける。
三人分って考えたら多い方がいい。
不味かったら魚の餌にするのも良いだろう。
「沸騰してきたらケーキの花を入れる……っと」
この前ルビィが小声で教えてくれたのはマーガレットのように綺麗に咲いた花びらが白くてテカテカしたケーキの花。
何でもケーキのように甘いからその名が付けられたらしい。
入れる前に嗅いでみたけどまさしくそんな感じだ。
でも匂いだけで食べたらあんまりおいしくないとかなんとか。
「後はみかんの実だな」
今度は潰して入れないようで小粒のまま円を描きながらボトボトと釜の中に入れていく。
入れる実によって甘かったり酸っぱかったりするらしい。
みかんの実は酸っぱい系なので今回は酸っぱいケーキが出来るはず。
「混ぜ混ぜ~、マゼンタ~」
混ぜる時は変な声が出る。
でも混ぜるのが楽しいのだ。
完成するまでひたすら混ぜ続けた。
「んー、固まらないなぁ」
軟膏と違って釜の中の色が変わっていく気配がない。
失敗か? それとも俺にはお菓子を作る才能がなかったのだろうか。
「何やってんのよ。これ入れるの忘れてるわよ」
いつの間にかルビィが起きていて、隣から何かを釜に放り込む。
それは、まだら模様の大きな何かの卵。
確かに手帳を見ると卵を入れると書いてあった。
しかも、殻ごと。
「あぁ、助かる」
「ふん。私が居なかったら何にも出来ないんだから」
そっぽを向いてはいるが、顔は赤らめていた。
それから混ぜ混ぜすること数分、釜の中の色は変わっていき、モクモクと煙が上がる。
「何これ、失敗か!?」
混ぜれば混ぜる度煙が勢いを増し、俺とルビィに襲いかかる。
「も、もう何やってんのよ──っうわぁ!?」
かき混ぜていた木の棒を取り上げようとした瞬間、煙が最高潮に盛り上がり俺たちを襲い、堪らず俺たちは尻もちをつく。
そして俺の左膝と、ルビィの右膝にはある物が乗っている。
ズッシリとしていて重たい。
「いたた……何やってんのよ! ……って何よこれ!」
ルビィが怒っているかと思えば、自分の膝にある物を見て驚いている。
実に忙しいやつだ。
だが内心ルビィのことは理解出来る。
「ど、どうしましたか!? す、凄い音が聞こえたんですが」
床下からルリが這い上がってくる。
どうやら俺たちが尻もちをついた音が床下に居たルリの元まで届いてしまったらしい。
でもちょうどいい。
「錬金術でケーキを作ってみたんだ。驚かせてごめんな? ルリ、いつも俺たちのために色々してくれてありがとな」
俺とルビィの膝に置かれていた完成したケーキを持ちながら照れくさいが感謝の意を伝える。
ケーキは俺の顔のふた周りも大きく、三人分にしてはちょっと多いかもしれない。
みかんの実の紫色は一切なく、俺が知っているみかんと生クリームがふんだんにあしらわれた美味しそうなケーキになっている。
そして、手に持てるように皿も錬金出来ているのは驚きだった。
「ふん。私も素材を探したんだから」
自分も協力したんだぞ、と言いたげで腕を組みながらルリに言い放っていた。
態度はツンケンしていて直して欲しいところだが、ルビィの力がなければこのケーキは完成しなかっただろう。
「つ、ツバサお兄ちゃん……ルビィちゃん……あ、ありがとうございます。わ、私、みなさんに貰ってばっかりで何もお返し出来てないです」
ぽろぽろと涙を零しながら自分は何も出来ず、貰ってばかりだと泣きながら言っているが、貰ってばかりなのは俺の方。
ルリが居なければ今頃俺は生きていなかった。
「そんなことはないさ。俺はこの島に来てからルリの世話になりっぱなしだ。朝からケーキはちょっと胃もたれしそうだけど、サプライズするにはこの時間しかなかったんだよな」
本当は昼や夜に作りたかったが、ルリも一緒に住んでいる手前、こうやってサプライズをするには今しかなかったことを右頬をかきながら白状する。
「い、胃もたれどんとこいです! 今お茶を淹れますね」
首を左右に振り、涙を振り払うと笑顔でキッチンの方へ向かっていく。
そんなルリを見て俺とルビィは自然と目が合う。
「喜んでもらえてよかったじゃない」
と、ルビィも嬉しそうな顔をしながらルリの元へと駆け寄って言った。
サプライズは無事、大成功と言っても過言ではないだろう。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界の無人島で暮らすことになりました
兎屋亀吉
ファンタジー
ブラック企業に勤める普通のサラリーマン奥元慎吾28歳独身はある日神を名乗る少女から異世界へ来ないかと誘われる。チートとまではいかないまでもいくつかのスキルもくれると言うし、家族もなく今の暮らしに未練もなかった慎吾は快諾した。かくして、貯金を全額おろし多少の物資を買い込んだ慎吾は異世界へと転移した。あれ、無人島とか聞いてないんだけど。
烙印騎士と四十四番目の神
赤星 治
ファンタジー
生前、神官の策に嵌り王命で処刑された第三騎士団長・ジェイク=シュバルトは、意図せず転生してしまう。
ジェイクを転生させた女神・ベルメアから、神昇格試練の話を聞かされるのだが、理解の追いつかない状況でベルメアが絶望してしまう蛮行を繰り広げる。
神官への恨みを晴らす事を目的とするジェイクと、試練達成を決意するベルメア。
一人と一柱の前途多難、堅忍不抜の物語。
【【低閲覧数覚悟の報告!!!】】
本作は、異世界転生ものではありますが、
・転生先で順風満帆ライフ
・楽々難所攻略
・主人公ハーレム展開
・序盤から最強設定
・RPGで登場する定番モンスターはいない
といった上記の異世界転生モノ設定はございませんのでご了承ください。
※【訂正】二週間に数話投稿に変更致しましたm(_ _)m
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺わかば
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる