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漂着!? 目が覚めるとそこは……
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目が覚めるとそこは──
照りつける太陽、鳴り止まないさざ波、そして……ジャリジャリとした砂浜。
そこに俺は倒れるように横たわっていた。
「ぺっ、ぺっ…………うへぇ」
口の中に砂利が沢山入っていたようで、たまらず吐き出す。
海水の味と苔を口に入れてしまった味。
一言で表すならば、最悪だ。
「どこなんだここは……」
着ていた服はずぶ濡れ、照りつける太陽のお陰で寒くはないが、服は潮の香りがもろに浸透しているのでベタベタと肌に付着し、気持ちが悪い。
オマケに海藻もズボンの中に入り込んでいた。
「いやらしい海藻め!」
引き抜き、砂浜にベシンと叩きつける。
なんか虚しい。
そして、俺は分からないことが他にもあることに気付く。
「俺は……誰なんだ?」
ただの厨二病患者ならどれほどよかったことか。
考えれば考える度に謎は深まり、吐き気を伴う頭痛が襲ってくる。
「くそぉ……何か身元が分かるものは無いのか」
痛む頭を抑えながら辺りを散策する。
すると直ぐにある物を見つけた。
カーキ色の小さなリュックと、オールの代わりにしていたのか自分の身長より少し小さな木の棒。
どうしてこんなモノを使っていたのか?
漕ぐものがなくなってたまたま漂流していた木の棒を使っていたのか?
と思って木の棒を手に取ると、よく馴染み何故かこの棒が愛おしい。
俺はこんなのを大切にしていだろうか。
とりあえず、木の棒とリュックを手にし何処へ行こうかと辺りを見渡す。
後ろには我が物顔で生えに生えきった草木がこれまでか! と言わんばかりに生え広がる。
あの草木を進むのは抵抗がある。
ならば海に……とも思えない。
何処までも広がる綺麗なコバルトブルー色の海は船の一隻も見当たらない。
「とりあえずリュックの中身でも見ておくか」
せめて身元の分かるものが入っていればいいが。
期待と不安がせめぎ合う。
恐る恐るリュックを開けて、中身を確認すると、そこにあったのは──
「手帳? それと……時計か?」
リュックに入っていたのは水浸しの古びた手帳。
もう一つはこれまた古びた懐中時計。
このまま手帳を広げたらボロボロになりそうなので砂浜に置いて乾かすとして、懐中時計は……完全に壊れてやがる。
短針と長針はどちらも十二を指していた。
昼の十二時丁度に海へ投げ出されて壊れてしまったのか、夜の十二時に海へ投げ出されて壊れてしまったのか。
「どちらでもいいか……この状態を何とかしないと」
俺の腹が栄養をよこせとぎゅるぎゅると鳴り渡る。
「腹が減った……」
食べるなら山の幸か海の幸か。
ずぶ濡れになって少し乾いてきた服をもう一度濡らすのは嫌だな。
それに動いてる魚を捕えられる自信はない。
木の実があると嬉しいのだが……。
俺は覚悟を決めて木の棒を杖のように使い、草木が生え渡る緑へと足を運ぼうと進む。
幸いにも人が一人だけ通れるような道が出来ていた。
「無人島ではないのかな」
人が居るなら俺を知っている者や空腹もどうにかなるかもしれない。
時々道を邪魔する草木がチクチクと腕や足を刺激するが、そんなことより早く空腹を満たしたい。
歩けば歩くほど草木が段々と濃くなっていく一方で人や食べられそうな木の実などは見つからなかった。
何分歩いたのか分からないが、いま目の前には砂浜が見える。
どうやら反対側の砂浜に辿り着いてしまった。
「まじかぁ……」
立つのもやっとだった俺はその場に崩れ落ちる。
一体何時間食べ物を口にしていないのか、腹が減っていると分かると余計に力が出なくなっていく。
「ここまでか……」
疲労もあってか視界が段々とボヤけてくる。
照りつける太陽があるのにも関わらず、俺の身体は震えるほど寒くなっていた。
そうして俺は気を失う。
◆
バチバチという音がして目が覚める。
俺は火葬でもされているのだろうか。
んなわけない。
火葬されてたら意識なんてないだろ。
重い瞼を無理して開ける。
いつの間にか辺りは夜になっていて、バチバチと音を立てていたのは焚き火が近くにあったからだ。
「お、お気付きになられましたか?」
女の子の声だ。
それも顔の前から聞こえる。
俺は細めで辺りを睨むように見ていたからか怯えながらも気を使って訊ねている。
「キミは……?」
青い宝石のように輝く長い髪と、これまた黄色い宝石のように輝く綺麗な瞳。
白いスモックのような物を着ていて、例えるならば──
「天使だ」
そう天使なのだ。
これはもしかしたらもしかすると、異世界転生とかしちゃったのではなかろうか。
そんな天使が俺の頭を自分の膝に乗せている。
男が女の人にやってもらいたいことベストIIIに入る膝枕と言うやつだ。
「ぴぇ、て、天使!? わ、わたしはルリって言います。この島に住んでいる、に、人間です。天使ではありません」
「そうか……」
「え、ど、どうして急に残念そうな顔をするんですか?」
天使じゃないと分かるとやるせない気持ちになる。
当たり前か。天使なんて存在しないんだから。
それより自分がまだ生きているのを喜ぼう。
「あなたは……熱中症? になっていて倒れていたんです」
ねぇ、チューしよう?
彼女の言葉が頭の中何度も反芻する。
可愛い子が俺とキスを所望しているだと?
こんなチャンス二度と訪れるだろうか。
否、金輪際訪れることはない。
口をタコのように突き出し、彼女から来るのを待つ。
だが待てど暮らせど彼女の唇が俺の唇に近付いてくることはなかった。
「な、何してるんです? あ、暑さでおかしくなってしまったのでしょうか。またお水を持ってきましょうか?」
代わりに心配そうに見つめられた。
どうやら俺の聞き間違いのようだ。
ともあれこの子は命の恩人だ。
「キミのお陰で窮地は脱却──」
したみたい、ありがとう。
とお礼を言いたかったがタイミング悪く腹が鳴る。
「し、してないみたいですね。あ、歩けますか? わ、わたしの家でご飯にしませんか?」
彼女は苦笑いを浮かべて、そう提案する。
何から何まで申し訳ない。
だが背に腹はかえられぬ、俺は重い身体を無理やり起こし、彼女を先頭にして再び生え渡る草木へと足を運んだ。
月明かりだけが頼りの道を歩き進む。
さっきの半分ほど歩くと、彼女は左に曲がる。
一度道はなくなるが、再び道が現れた。
そして、木製の小さなログハウスがそこにはあった。
「わ、わたしの工房、兼お家へようこそ。と言ってもおばあちゃんが生きていた時に営んでいたもので、わ、わたしは何も出来ないんですが」
彼女は両手を広げ覚束無い笑顔を見せたかと思うと、今度は落胆させ「自分は何も出来ない」と言わんばかりに不安そうな表情を浮かべた。
「おばあさんは何を──」
何を営んでいたのか、訊ねようとした瞬間。
早く栄養をよこせもう我慢できない、と俺の腹は再びぎゅるると訴えかける。
「さ、先にご飯にしましょう。中へどうぞ」
両開きのドアの片方を彼女は開けてくれ、中に入るよう促す。
言われるがまま中に入ると、木製のテーブルと椅子、これまた木製のベッド、それから奥の方には何やら布を被されている物が目に付いた。
長年捲られることはなかったのか布にホコリが被りに被りまくっている。
「す、座って待っててください」
そう言うと彼女はキッチンらしき場所に向かい、背を向けて調理を始めた。
だがここで問題が発生する。
潮が乾き、バリバリになってしまった服とズボン。
この状態でベッドにダイブをしてしまうと彼女を悲しませるかもしれない。
かと言って椅子に座ると、これまたバリバリの汚いズボンが椅子を汚し、彼女を悲しませるかもしれない。
床で坐禅でも組もう。
靴を脱ぎ、俺は椅子の前で坐禅を組む。
果たして記憶がある頃の俺は座禅なんか組んでいたのだろうか。
答えはノーだ。
胡座の進化系みたいな感じの独学の坐禅は止めようにも止められない。
「か、絡まった……」
まだズボンは完全に乾いていないようでベタベタとベリベリのハイブリッド。
ノリのようにくっついてしまい、元に戻せない。
やばい、助けて。
ガタガタと藻掻く俺だが必死すぎて声が出ない。
代わりに魚介だろうか、美味しそうな匂いが近付く。
「ぴ、ぴぇい!? な、何してるんですか?」
お盆の上に皿を乗せてやってきた彼女は俺が坐禅を組んでいるのに今気付いたようで、ビクンと驚き、皿からはスープが飛び出す。
お盆へびちゃびちゃと零していた。
「た、たちゅけて……」
震えながらも俺は必死に声を振り絞り、これまた必死に助けを求めた。
照りつける太陽、鳴り止まないさざ波、そして……ジャリジャリとした砂浜。
そこに俺は倒れるように横たわっていた。
「ぺっ、ぺっ…………うへぇ」
口の中に砂利が沢山入っていたようで、たまらず吐き出す。
海水の味と苔を口に入れてしまった味。
一言で表すならば、最悪だ。
「どこなんだここは……」
着ていた服はずぶ濡れ、照りつける太陽のお陰で寒くはないが、服は潮の香りがもろに浸透しているのでベタベタと肌に付着し、気持ちが悪い。
オマケに海藻もズボンの中に入り込んでいた。
「いやらしい海藻め!」
引き抜き、砂浜にベシンと叩きつける。
なんか虚しい。
そして、俺は分からないことが他にもあることに気付く。
「俺は……誰なんだ?」
ただの厨二病患者ならどれほどよかったことか。
考えれば考える度に謎は深まり、吐き気を伴う頭痛が襲ってくる。
「くそぉ……何か身元が分かるものは無いのか」
痛む頭を抑えながら辺りを散策する。
すると直ぐにある物を見つけた。
カーキ色の小さなリュックと、オールの代わりにしていたのか自分の身長より少し小さな木の棒。
どうしてこんなモノを使っていたのか?
漕ぐものがなくなってたまたま漂流していた木の棒を使っていたのか?
と思って木の棒を手に取ると、よく馴染み何故かこの棒が愛おしい。
俺はこんなのを大切にしていだろうか。
とりあえず、木の棒とリュックを手にし何処へ行こうかと辺りを見渡す。
後ろには我が物顔で生えに生えきった草木がこれまでか! と言わんばかりに生え広がる。
あの草木を進むのは抵抗がある。
ならば海に……とも思えない。
何処までも広がる綺麗なコバルトブルー色の海は船の一隻も見当たらない。
「とりあえずリュックの中身でも見ておくか」
せめて身元の分かるものが入っていればいいが。
期待と不安がせめぎ合う。
恐る恐るリュックを開けて、中身を確認すると、そこにあったのは──
「手帳? それと……時計か?」
リュックに入っていたのは水浸しの古びた手帳。
もう一つはこれまた古びた懐中時計。
このまま手帳を広げたらボロボロになりそうなので砂浜に置いて乾かすとして、懐中時計は……完全に壊れてやがる。
短針と長針はどちらも十二を指していた。
昼の十二時丁度に海へ投げ出されて壊れてしまったのか、夜の十二時に海へ投げ出されて壊れてしまったのか。
「どちらでもいいか……この状態を何とかしないと」
俺の腹が栄養をよこせとぎゅるぎゅると鳴り渡る。
「腹が減った……」
食べるなら山の幸か海の幸か。
ずぶ濡れになって少し乾いてきた服をもう一度濡らすのは嫌だな。
それに動いてる魚を捕えられる自信はない。
木の実があると嬉しいのだが……。
俺は覚悟を決めて木の棒を杖のように使い、草木が生え渡る緑へと足を運ぼうと進む。
幸いにも人が一人だけ通れるような道が出来ていた。
「無人島ではないのかな」
人が居るなら俺を知っている者や空腹もどうにかなるかもしれない。
時々道を邪魔する草木がチクチクと腕や足を刺激するが、そんなことより早く空腹を満たしたい。
歩けば歩くほど草木が段々と濃くなっていく一方で人や食べられそうな木の実などは見つからなかった。
何分歩いたのか分からないが、いま目の前には砂浜が見える。
どうやら反対側の砂浜に辿り着いてしまった。
「まじかぁ……」
立つのもやっとだった俺はその場に崩れ落ちる。
一体何時間食べ物を口にしていないのか、腹が減っていると分かると余計に力が出なくなっていく。
「ここまでか……」
疲労もあってか視界が段々とボヤけてくる。
照りつける太陽があるのにも関わらず、俺の身体は震えるほど寒くなっていた。
そうして俺は気を失う。
◆
バチバチという音がして目が覚める。
俺は火葬でもされているのだろうか。
んなわけない。
火葬されてたら意識なんてないだろ。
重い瞼を無理して開ける。
いつの間にか辺りは夜になっていて、バチバチと音を立てていたのは焚き火が近くにあったからだ。
「お、お気付きになられましたか?」
女の子の声だ。
それも顔の前から聞こえる。
俺は細めで辺りを睨むように見ていたからか怯えながらも気を使って訊ねている。
「キミは……?」
青い宝石のように輝く長い髪と、これまた黄色い宝石のように輝く綺麗な瞳。
白いスモックのような物を着ていて、例えるならば──
「天使だ」
そう天使なのだ。
これはもしかしたらもしかすると、異世界転生とかしちゃったのではなかろうか。
そんな天使が俺の頭を自分の膝に乗せている。
男が女の人にやってもらいたいことベストIIIに入る膝枕と言うやつだ。
「ぴぇ、て、天使!? わ、わたしはルリって言います。この島に住んでいる、に、人間です。天使ではありません」
「そうか……」
「え、ど、どうして急に残念そうな顔をするんですか?」
天使じゃないと分かるとやるせない気持ちになる。
当たり前か。天使なんて存在しないんだから。
それより自分がまだ生きているのを喜ぼう。
「あなたは……熱中症? になっていて倒れていたんです」
ねぇ、チューしよう?
彼女の言葉が頭の中何度も反芻する。
可愛い子が俺とキスを所望しているだと?
こんなチャンス二度と訪れるだろうか。
否、金輪際訪れることはない。
口をタコのように突き出し、彼女から来るのを待つ。
だが待てど暮らせど彼女の唇が俺の唇に近付いてくることはなかった。
「な、何してるんです? あ、暑さでおかしくなってしまったのでしょうか。またお水を持ってきましょうか?」
代わりに心配そうに見つめられた。
どうやら俺の聞き間違いのようだ。
ともあれこの子は命の恩人だ。
「キミのお陰で窮地は脱却──」
したみたい、ありがとう。
とお礼を言いたかったがタイミング悪く腹が鳴る。
「し、してないみたいですね。あ、歩けますか? わ、わたしの家でご飯にしませんか?」
彼女は苦笑いを浮かべて、そう提案する。
何から何まで申し訳ない。
だが背に腹はかえられぬ、俺は重い身体を無理やり起こし、彼女を先頭にして再び生え渡る草木へと足を運んだ。
月明かりだけが頼りの道を歩き進む。
さっきの半分ほど歩くと、彼女は左に曲がる。
一度道はなくなるが、再び道が現れた。
そして、木製の小さなログハウスがそこにはあった。
「わ、わたしの工房、兼お家へようこそ。と言ってもおばあちゃんが生きていた時に営んでいたもので、わ、わたしは何も出来ないんですが」
彼女は両手を広げ覚束無い笑顔を見せたかと思うと、今度は落胆させ「自分は何も出来ない」と言わんばかりに不安そうな表情を浮かべた。
「おばあさんは何を──」
何を営んでいたのか、訊ねようとした瞬間。
早く栄養をよこせもう我慢できない、と俺の腹は再びぎゅるると訴えかける。
「さ、先にご飯にしましょう。中へどうぞ」
両開きのドアの片方を彼女は開けてくれ、中に入るよう促す。
言われるがまま中に入ると、木製のテーブルと椅子、これまた木製のベッド、それから奥の方には何やら布を被されている物が目に付いた。
長年捲られることはなかったのか布にホコリが被りに被りまくっている。
「す、座って待っててください」
そう言うと彼女はキッチンらしき場所に向かい、背を向けて調理を始めた。
だがここで問題が発生する。
潮が乾き、バリバリになってしまった服とズボン。
この状態でベッドにダイブをしてしまうと彼女を悲しませるかもしれない。
かと言って椅子に座ると、これまたバリバリの汚いズボンが椅子を汚し、彼女を悲しませるかもしれない。
床で坐禅でも組もう。
靴を脱ぎ、俺は椅子の前で坐禅を組む。
果たして記憶がある頃の俺は座禅なんか組んでいたのだろうか。
答えはノーだ。
胡座の進化系みたいな感じの独学の坐禅は止めようにも止められない。
「か、絡まった……」
まだズボンは完全に乾いていないようでベタベタとベリベリのハイブリッド。
ノリのようにくっついてしまい、元に戻せない。
やばい、助けて。
ガタガタと藻掻く俺だが必死すぎて声が出ない。
代わりに魚介だろうか、美味しそうな匂いが近付く。
「ぴ、ぴぇい!? な、何してるんですか?」
お盆の上に皿を乗せてやってきた彼女は俺が坐禅を組んでいるのに今気付いたようで、ビクンと驚き、皿からはスープが飛び出す。
お盆へびちゃびちゃと零していた。
「た、たちゅけて……」
震えながらも俺は必死に声を振り絞り、これまた必死に助けを求めた。
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