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王立魔法学園編Ⅲ
筆記と実地
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ターシャさんとアリアちゃんが消えてから初めての学園。
少しの憂鬱さが拭いきれないけれど今の私は王立魔法学園に通いながら自らに生えてしまった獣耳と尻尾をどうにかして取り除くのが本来の目的だ。
……目的なのだが。
「来週、テストを行います。もちろん一般生徒と同じ課題です。王族、または貴族としてくれぐれも一般生徒より低い点数は取らないように」
今朝、教室にやってくるなりレナ先生は声を張り何故か闘志を燃やしていた。
☆
「ごきげんよう、マリア様」
「はーい、ごきげんよう」
今朝の騒動があってからのお昼休み、食堂でご飯を食べる私に向かい慕う眼差しと挨拶をして過ぎ去っていく女の子に向かって適当にあしらう。
もちろんいつものメンバーが居るのにも関わらず挨拶をされるのは私だけだ。
もう慣れたけどね。
「テストだなんて聞いてないよ……今度は筆記と何だっけ?」
「実地テストですわ」
実技と名前が似ていたのは覚えていたが何だったか忘れていたので訊ねるとセシリーがすぐに答えてくれる。
少し前に実技テストを終えたばかりだと言うのに今度は筆記のテストと実地のテストがあるだなんて王立魔法学園is大変過ぎる。
「今年はうちのクラスの実技テストがイマイチだったからレナ先生も張り切ってる。噂では実地テストはレナ先生が推進したとか」
ミオがボソッと喋りながらご飯を食べている。
その姿は小動物さながらで可愛いね。
「去年の実技テストはどうだったの?」
「去年は王族貴族クラスも一般クラスも同じくらいの力量差でしたわ。ですが今年の力量差は明白、まさかあそこまで高い命中力を有しているだなんて驚きましたわね」
なるほどね。私が自分のことしか頭になかったせいで一般クラスの魔法見ていなかったけど、そこまで凄かったとは。
でもどうしてそこまで?
「一般クラスには魔法の実技に熱心な先生が居るんです。非常勤ですが実力とルックスが相まって女生徒からは大人気なんですよ」
どうして一般クラスとの差が開いたかと疑問に思っているとミレッタは理由を教えてくれる。
私の顔はきっとそのことについて物凄く考えていたように見えたのでしょうね。
非常勤で実力もルックスもあるだなんてそりゃ女の子から人気も出る。
「ミレッタもその人に教えてもらったの?」
「いえ、私……その、恥ずかしくて」
てっきりミレッタもそのイケメン非常勤講師に教えてもらったのかと思ったが、ミレッタの性格を考えると自分から教えて欲しいだなんて言い出しづらそうだよね。
「良い機会ですから放課後行ってみませんこと?」
人差し指をピンと立たせて名案かのように言っているがそう考えるのはセシリーだけではないだろう。
「セシリー、多分みんな同じことを考えてるはず。行くなら実地テストが終わってからにしよう」
ミオも同じことを考えたのかセシリーの肩を掴んで首を左右に振り彼女の考えは浅はかなことを伝えた。
実地テストがあるのならそれを理由にイケメン非常勤講師に会いに行く口実が出来る。
そして上手く行けば自分の魔法も上手くなる……魔力がほとんどない私には無関係だね。
「それより実地ってどんなことやるのかな?」
「詳しい話は聞いてないけど三人のチームに別れて指定された場所にある物を取って戻ってくるみたい」
「そこまで危険性がある訳ではありませんが魔物も出るそうです」
夜にやるのならミオの話だけ聞けばまるで肝試しのようだった。
だがミレッタの話も付け加えると魔物も出るのなら肝試しなんて生易しいもんじゃないね。
「三人ってことは──」
正面に座っているセシリーとミオを見て私は息を飲む。
「もちろんですわ」
「うん、マリアと組む」
二人とも頷いてくれて私と一緒のチームになってくれるようだ。
「良かった~これで他の人と組めなんて言われたら大変だったよ」
それを聞いて心底安心したよ。
ゴウとは組みたくないし、何ならゴウはモルとグレイルと一緒に組むだろうし。
そうなると私は数回しか会話したことのないクラスメイトと組まなきゃいけなくなっていた。
セシリーとミオ以外のクラスメイトのことはよく分かっていないのでもしそうなっていたら大変だったね。
「ふふっ、お二人が羨ましいです」
私が安堵を浮かべているとミレッタはセシリーとミオを見て羨ましそう笑う。
「いつかは私たちのクラスと一般クラスも組むことがあるからその時は宜しく」
「はい、こちらこそ!」
いつの間にかミオとミレッタは仲良くなっていてお互い見つめ合いながら笑顔で笑っていた。
私の知らないところで仲良くなっているのは少しばかり嫉妬するけど仲が良いのはいいことだよね。
この調子で王立魔法学園を卒業しても三人と仲良くありたい。
少しの憂鬱さが拭いきれないけれど今の私は王立魔法学園に通いながら自らに生えてしまった獣耳と尻尾をどうにかして取り除くのが本来の目的だ。
……目的なのだが。
「来週、テストを行います。もちろん一般生徒と同じ課題です。王族、または貴族としてくれぐれも一般生徒より低い点数は取らないように」
今朝、教室にやってくるなりレナ先生は声を張り何故か闘志を燃やしていた。
☆
「ごきげんよう、マリア様」
「はーい、ごきげんよう」
今朝の騒動があってからのお昼休み、食堂でご飯を食べる私に向かい慕う眼差しと挨拶をして過ぎ去っていく女の子に向かって適当にあしらう。
もちろんいつものメンバーが居るのにも関わらず挨拶をされるのは私だけだ。
もう慣れたけどね。
「テストだなんて聞いてないよ……今度は筆記と何だっけ?」
「実地テストですわ」
実技と名前が似ていたのは覚えていたが何だったか忘れていたので訊ねるとセシリーがすぐに答えてくれる。
少し前に実技テストを終えたばかりだと言うのに今度は筆記のテストと実地のテストがあるだなんて王立魔法学園is大変過ぎる。
「今年はうちのクラスの実技テストがイマイチだったからレナ先生も張り切ってる。噂では実地テストはレナ先生が推進したとか」
ミオがボソッと喋りながらご飯を食べている。
その姿は小動物さながらで可愛いね。
「去年の実技テストはどうだったの?」
「去年は王族貴族クラスも一般クラスも同じくらいの力量差でしたわ。ですが今年の力量差は明白、まさかあそこまで高い命中力を有しているだなんて驚きましたわね」
なるほどね。私が自分のことしか頭になかったせいで一般クラスの魔法見ていなかったけど、そこまで凄かったとは。
でもどうしてそこまで?
「一般クラスには魔法の実技に熱心な先生が居るんです。非常勤ですが実力とルックスが相まって女生徒からは大人気なんですよ」
どうして一般クラスとの差が開いたかと疑問に思っているとミレッタは理由を教えてくれる。
私の顔はきっとそのことについて物凄く考えていたように見えたのでしょうね。
非常勤で実力もルックスもあるだなんてそりゃ女の子から人気も出る。
「ミレッタもその人に教えてもらったの?」
「いえ、私……その、恥ずかしくて」
てっきりミレッタもそのイケメン非常勤講師に教えてもらったのかと思ったが、ミレッタの性格を考えると自分から教えて欲しいだなんて言い出しづらそうだよね。
「良い機会ですから放課後行ってみませんこと?」
人差し指をピンと立たせて名案かのように言っているがそう考えるのはセシリーだけではないだろう。
「セシリー、多分みんな同じことを考えてるはず。行くなら実地テストが終わってからにしよう」
ミオも同じことを考えたのかセシリーの肩を掴んで首を左右に振り彼女の考えは浅はかなことを伝えた。
実地テストがあるのならそれを理由にイケメン非常勤講師に会いに行く口実が出来る。
そして上手く行けば自分の魔法も上手くなる……魔力がほとんどない私には無関係だね。
「それより実地ってどんなことやるのかな?」
「詳しい話は聞いてないけど三人のチームに別れて指定された場所にある物を取って戻ってくるみたい」
「そこまで危険性がある訳ではありませんが魔物も出るそうです」
夜にやるのならミオの話だけ聞けばまるで肝試しのようだった。
だがミレッタの話も付け加えると魔物も出るのなら肝試しなんて生易しいもんじゃないね。
「三人ってことは──」
正面に座っているセシリーとミオを見て私は息を飲む。
「もちろんですわ」
「うん、マリアと組む」
二人とも頷いてくれて私と一緒のチームになってくれるようだ。
「良かった~これで他の人と組めなんて言われたら大変だったよ」
それを聞いて心底安心したよ。
ゴウとは組みたくないし、何ならゴウはモルとグレイルと一緒に組むだろうし。
そうなると私は数回しか会話したことのないクラスメイトと組まなきゃいけなくなっていた。
セシリーとミオ以外のクラスメイトのことはよく分かっていないのでもしそうなっていたら大変だったね。
「ふふっ、お二人が羨ましいです」
私が安堵を浮かべているとミレッタはセシリーとミオを見て羨ましそう笑う。
「いつかは私たちのクラスと一般クラスも組むことがあるからその時は宜しく」
「はい、こちらこそ!」
いつの間にかミオとミレッタは仲良くなっていてお互い見つめ合いながら笑顔で笑っていた。
私の知らないところで仲良くなっているのは少しばかり嫉妬するけど仲が良いのはいいことだよね。
この調子で王立魔法学園を卒業しても三人と仲良くありたい。
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