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王立魔法学園編Ⅰ
ま、まぁね!
しおりを挟む「「えっ!?」」
私が教室に戻ると私を見るなりクラスのみんなは各々に驚いていた。
教室を間違えちゃったっけ?
なんて思ってみたがそんなこともなく、見覚えのある生徒たちが連なっている。
どうやら視線は私ではなく、私の肩に目がいっているようにも思えた。
「あの白猫を手懐けたと言うのですか!?」
初めてクラスの女の子に話し掛けられた。
金髪で左右の縦ロールがトレードマークのお嬢様だ。
彼女は私に近付き、白猫であるシロムのことを口を開けながら眺めている。
「手懐けた、と言いますか契約したと言いますか」
後頭部を抑えてたどたどしく話す。
私が物珍しい存在だからシロムは気に入った、と言った方が正しいのかもしれない。
でも獣人モドキなのは内緒なので全部を教えることは出来ない。
「んなっ!? 数多の学生たちが契約を試みたけれど一度も首を縦に振らなかったこの子が!?」
「それだけでなく学園の警備もしている優れた猫なのですよ」
驚き固まる金髪お嬢様の言葉を補足するかのように青髪のショートの子が話し掛けてくる。
ピンク色のカチューシャがよく似合っている。
「そうなの?」
そのことをシロムに訊ねてみるが、白々しくそっぽを向かれた。
しかも「ニャォ」と猫らしく鳴くだけ。
私の獣人モドキのようにシロムが喋れるのは秘密なのだろう。
「紹介が遅れました。私はミオ・ルーシア。こちらはセシリー・イナン」
「ご丁寧にどうも」
私が頭を下げたタイミングでレナ先生も教室に入ってきたので私たちの会話はそこで終わりを迎え、自分の席に着いて授業が始まった。
レナ先生は私の肩に乗っているシロムを見て少しだけにこやかに微笑んだのは何だったのだろうか。
☆
「ええっ!? マリアが白猫さんと契約を!?」
授業を終え、念願のお昼休み。初めての学食。
食堂と言うよりは白い丸テーブルがいくつも鎮座しており、ちょっとしたカフェみたいだ。
ちなみに学費に学食のお金も含まれているので実質タダで食べられる。
なんと言う贅沢なことだ。でも食べ過ぎには十分注意して生活したい。
私に興味を持ったのかセシリーとミオ、それから私を迎えに来てくれたミレッタ、私とシロムを合わせた四人と一匹で学食のテーブルを囲んでいた。
使い魔だけでなく仕える人も出入りしているので白猫一匹居た所で目立ちはしないはずなのだが、どうやらシロムは有名らしく他のテーブルに居る人達はご飯を食べながらも物珍しそうに私の肩に乗っているシロムを見ていた。
ミレッタに契約したことを伝えたら物凄く驚かれた。
その驚きはセシリーにも匹敵する。
よく見ると周りの人たちも私のクラスで見た時のように驚いていた。
「そんなに驚くことなのかな?」
隣に座るミレッタに首を傾げながら訊ねる。
確かにこの世界で猫を見たのは二度目なのだが使い魔自体珍しくないし、シロムと契約したからと言って自分が強くなったり、とめどなく力が溢れてくる、なんてことは一切ない。
「白猫さんは凄いんですよ。王都に現れた魔物を誰の手も借りずに倒してしまったんです。以来、白猫さんは学園だけでなく王都では英雄的存在なんです」
笑顔と誇りを胸に秘め、ミレッタは嬉しそうにシロムのことを教えてくれる。
ついさっき出会ったばっかりで、ついさっき契約したばかりなのでミレッタの方が知っていることが多いようだ。
「そうなの?」
学食のおばちゃんから煮干しを貰ったのでそれを与えながらシロムに訊ねてみるが、これまた猫らしく鳴くだけではぐらかされてしまう。
反抗として私も煮干しをパクり。
うん。異世界の煮干しも悪くない。
私が煮干しを食べるとシロムは切なそうに私を見つめるだけ。
ごめんね? 猫の獣人モドキなせいなのか魚がたまに恋しくなってしまうのだよ。
「それだけではありませんわ。あのゴウをひと鳴きで黙らせてしまったのですわ」
お嬢様らしく右の手を広げよく逸らし、それを口元に当てると大層楽しそうに教えてくれたよ。
ゴウってアイツかぁ。
シロムが居れば寄ってくることはなさそうだね。
現に授業が終わっても私に近付こうとはしてこなかったし。
「マリアも言われたんだよね?」
ミオが上目遣いで私の目を覗き込んでくる。
「俺の女になれ、って?」
「うん。ハシズ家の権力を使って自分の気に入った女の子を傍に置いておきたいんだろうね」
気に入った女の子を……ねぇ。
一体私の何処を気に入ったのか。
いや、誰にでも言ってるんでしょうね。
大学でも女子だと分かれば所構わず告白しまくる男の人が居たなぁ……誰一人として靡く訳がないのにね。
告白するにせよ時と場合は考えて欲しい。
いくらイケメンだったとしても公衆の面前で告白はちょっと私は無理かな。
背景キャラが輝かしく踊りながら背景をより一層際立たせての告白とかも私は絶対無理だ。
「あの身のこなし凄かったですわ! きっとゴウもマリアの身のこなしが気に入ったに違いありません。普段から身体強化の魔法でも使ってらしたので?」
前世の無理な告白のされ方を考えていると、縦ロールを揺らしながらセシリーは少し興奮気味に私に訊ねてくる。
身体強化の魔法……彼女の目にはそう映ってしまっているのだろう。
あれは自分の──って言ったら語弊があるかもしれないが魔法など使わずに持ち前の力のみで発揮されたものだ。
と言っても獣人モドキだから脚力が少しばかり人より発達しているだけ。
そのことを彼女たちに教えることになるのは今後やってくるのだろうか?
それとも言わずに卒業を迎えるのだろうか。
「まぁ、まぁね」
どちらにせよ今は獣人モドキであることは打ち明けられない。
なのでとりあえず返事はしておいた。
黙ってると感じ悪いし、それを機にハブられるの嫌だからね。
「まぁ! それは楽しみですわ!」
一体何が楽しみなのだろうか?
私はセシリーが両手を合わせて喜ぶ姿がとても印象的で時折脳裏に過ぎるのであった。
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