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始まり
奪還
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何も出来ないままガタガタと揺られ続け何分、何時間経ったのだろうか。
レディなのにお尻にクッションのひとつも宛がわれていないのだ。
揺れが来ると察知したら、お尻を上げて衝撃を和らげなければ今頃お尻に穴が開いていたことでしょうね。
「こんなこと一体誰が……」
考えなくてもくそパーマ男の仕業だと分かってしまうんですけどね!
なんて怒りを心の中でメラメラと燃やしていると、ドナドナは終了したのか馬車は動くのを止めた。
「降りろ」
ガラガラの汚い声がして目の前にある布が開いた。
ご丁寧に手足の拘束は解いてくれて、どうやらここからは自分で歩かなければならないようで、これで手足は身動きが自由に取れるようになった。
だけど昨日の身のこなしを見ていると、とてもじゃないが隙を見て逃げるとかは出来なさそうだね。
初めて見る男の姿。残念ながら黒尽くめで、体型がふくよかなことしか分からない。
「歩け」
後ろでカチャリと音がした。
私が歩かなければいつでも刺殺してやる、と言うサインに受け取ってしまい、私は身を震わせながら言われた通りに前へゆっくり歩き始める。
グラダラスの森とは違い、ほとんど整備されていない獣道を歩き進めると、ログハウス……にしてはボロ臭く昨日今日急いで作ったのではないかと思うほどの出来の掘っ建て小屋が見えてきた。
「入れ」
入れ、と言う割には私の背中を蹴って中に放り込まれる。
堪らず私は膝と手を着いて転んでしまった。
痛い……けど、声を出したらこの人の機嫌を損ねかねない。
痛みは我慢してそのまま立ち上がり、男とは距離をとり、奥に進む。
別に男は中に入ってきて「グヘヘ」なこともせず、私が入ったのを確認するとドアを閉めて外を出る。
唯一見えるくすんで汚いガラスから男はドアの前に立ち、見張っているのが分かる。
脱出するのは諦め、何かないか辺りを見渡すと煤けてボロくて座ったら壊れそうな四角い赤だったのか紫だったのかどちらなのか分からなくなってしまった色の椅子があるのを見つけたので、壊さないようにゆっくり座り、状況を整理するとしよう。
私を狙ったのがくそパーマ男の場合。
どうして生かしているのか? 生かす意味はなんなのか?
殺さないと言うことは私に価値があると言う訳だ。
「……可愛い?」
ヒックさんが言う通り私はこの世界では美少女として見られているのではないだろうか。
いやいや、もし仮に美少女として見られてるなら処刑の時に民衆の誰かが止めに入ってきただろうし、くそパーマ男も処刑しようだなんて思わなかったかも。
それにグラダラスのメイドさんの方が私より何万倍も可愛い。
それなら他の第三者によるものか。
私を生かす価値は身代金目当て?
グラダラスは小国だけど農業と酪農でそれなりの収益を得ている。
だけど私を必要としている人なんて誰一人として存在していないので身代金なんて出す訳もない。
獣人モドキじゃなければ違っていたかもしれないけどね。
「となるとくそパーマ男が……」
腕組みをしてある答えが導き出された。
ダメだ、今私が助けられると。
「うわぁ──!?」
外で声がした。
それはガラガラの汚い男の声のものだった。
「──マリア!」
「エル?」
私を助けてくれたのはエルだった。
扉の隙間から私を拉致した男が気絶しているのか、伸びている。
「マリア、早くここから逃げないと!」
「助けてくれたのはありがたいけど、止めておいた方がいいと思う。ゴルデスマンさんとルナは?」
「二人もマリアを助け出すのに手伝ってくれたんです。ここに居た男以外にも何人かが近くで待機してたのでその人たちと交戦中です」
思ったより自体は急速に進展してしまいそう。
エルが……ううん、ゴルデスマンさんもルナも獣人モドキである私を助けてしまった。
これは大きな波乱を産んでしまいそうだ。
城内で殺さずにここまで連れてきた理由が分かってしまったよ。
「何をしている、エル! 早く、マリアを連れてそこから出ろ!」
「は、はい!」
考えている私をエルは担いで、掘っ建て小屋から連れ去る。
身長は少しエルの方が高いくらいなのによくもまぁこうも軽々と持ち上げられてしまうこと。
そうして私はエルとゴルデスマン、そしてルナの四人で黒尽くめの連中が使っていた馬車を奪い、グラダラスへと戻ることにした。
レディなのにお尻にクッションのひとつも宛がわれていないのだ。
揺れが来ると察知したら、お尻を上げて衝撃を和らげなければ今頃お尻に穴が開いていたことでしょうね。
「こんなこと一体誰が……」
考えなくてもくそパーマ男の仕業だと分かってしまうんですけどね!
なんて怒りを心の中でメラメラと燃やしていると、ドナドナは終了したのか馬車は動くのを止めた。
「降りろ」
ガラガラの汚い声がして目の前にある布が開いた。
ご丁寧に手足の拘束は解いてくれて、どうやらここからは自分で歩かなければならないようで、これで手足は身動きが自由に取れるようになった。
だけど昨日の身のこなしを見ていると、とてもじゃないが隙を見て逃げるとかは出来なさそうだね。
初めて見る男の姿。残念ながら黒尽くめで、体型がふくよかなことしか分からない。
「歩け」
後ろでカチャリと音がした。
私が歩かなければいつでも刺殺してやる、と言うサインに受け取ってしまい、私は身を震わせながら言われた通りに前へゆっくり歩き始める。
グラダラスの森とは違い、ほとんど整備されていない獣道を歩き進めると、ログハウス……にしてはボロ臭く昨日今日急いで作ったのではないかと思うほどの出来の掘っ建て小屋が見えてきた。
「入れ」
入れ、と言う割には私の背中を蹴って中に放り込まれる。
堪らず私は膝と手を着いて転んでしまった。
痛い……けど、声を出したらこの人の機嫌を損ねかねない。
痛みは我慢してそのまま立ち上がり、男とは距離をとり、奥に進む。
別に男は中に入ってきて「グヘヘ」なこともせず、私が入ったのを確認するとドアを閉めて外を出る。
唯一見えるくすんで汚いガラスから男はドアの前に立ち、見張っているのが分かる。
脱出するのは諦め、何かないか辺りを見渡すと煤けてボロくて座ったら壊れそうな四角い赤だったのか紫だったのかどちらなのか分からなくなってしまった色の椅子があるのを見つけたので、壊さないようにゆっくり座り、状況を整理するとしよう。
私を狙ったのがくそパーマ男の場合。
どうして生かしているのか? 生かす意味はなんなのか?
殺さないと言うことは私に価値があると言う訳だ。
「……可愛い?」
ヒックさんが言う通り私はこの世界では美少女として見られているのではないだろうか。
いやいや、もし仮に美少女として見られてるなら処刑の時に民衆の誰かが止めに入ってきただろうし、くそパーマ男も処刑しようだなんて思わなかったかも。
それにグラダラスのメイドさんの方が私より何万倍も可愛い。
それなら他の第三者によるものか。
私を生かす価値は身代金目当て?
グラダラスは小国だけど農業と酪農でそれなりの収益を得ている。
だけど私を必要としている人なんて誰一人として存在していないので身代金なんて出す訳もない。
獣人モドキじゃなければ違っていたかもしれないけどね。
「となるとくそパーマ男が……」
腕組みをしてある答えが導き出された。
ダメだ、今私が助けられると。
「うわぁ──!?」
外で声がした。
それはガラガラの汚い男の声のものだった。
「──マリア!」
「エル?」
私を助けてくれたのはエルだった。
扉の隙間から私を拉致した男が気絶しているのか、伸びている。
「マリア、早くここから逃げないと!」
「助けてくれたのはありがたいけど、止めておいた方がいいと思う。ゴルデスマンさんとルナは?」
「二人もマリアを助け出すのに手伝ってくれたんです。ここに居た男以外にも何人かが近くで待機してたのでその人たちと交戦中です」
思ったより自体は急速に進展してしまいそう。
エルが……ううん、ゴルデスマンさんもルナも獣人モドキである私を助けてしまった。
これは大きな波乱を産んでしまいそうだ。
城内で殺さずにここまで連れてきた理由が分かってしまったよ。
「何をしている、エル! 早く、マリアを連れてそこから出ろ!」
「は、はい!」
考えている私をエルは担いで、掘っ建て小屋から連れ去る。
身長は少しエルの方が高いくらいなのによくもまぁこうも軽々と持ち上げられてしまうこと。
そうして私はエルとゴルデスマン、そしてルナの四人で黒尽くめの連中が使っていた馬車を奪い、グラダラスへと戻ることにした。
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