出会って五秒で合体!?~半人半獣になってしまった私は獣人に間違えられ殺されそうになりました~(仮)

ぽりんここりんこぷりぷりのえび

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始まり

忌み嫌われる者

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「この国はね。昔……と言っても数千年前に獣人による虐殺が起こったんだ」

 ニコニコ笑顔は止めて、真剣な眼差しで私を見つめゆっくりと話し始める。

「人間よりも足が速く、魔術も魔力も何倍もある獣人に……ううん、魔術だけじゃなくて筋力もだね。人々は抵抗するも無惨に一方的に蹂躙されていた」

 その言葉を聞いて頭の中でイメージする。
 逃げ惑う人々をゲスな笑みを浮かべながら魔法や武器を使って殺す獣人の姿が想像出来てしまう。

「食料は奪われ、着るものも当時の娯楽品だって獣人に奪われてしまっていたんだ。それだけでなく子供は奴隷として高く売買出来るって噂でね。死は免れても子供は失う……そんな家庭も少なくはなかった」

 殺すだけじゃなく大切な我が子を取られてしまうのはきっと死よりも辛い。
 それが分かっているからこそあえて両親は活かしているのかもしれない……そんなことを考えてしまうと獣人とはどれだけ恐ろしい存在なのかと安易に理解してしまう。

 だけどそんなことしてしまうと……。

「そのままでは人間は居なくなるんじゃ?」
「そう、だから我々人間は知恵を搾り、彼らの生態を研究した。その結果、獣人はリーダーの命令に従って行動していることが分かったんだ。そのことに気付いた人間は獣人のリーダーが根城にしていた今では愚者の洞窟と呼ばれる場所へと向かったんだ」

 ビシッと私に人差し指を向けると、軽く頷いて見せた。
 愚者の洞窟……そんな呼ばれ方をし始めたのは獣人たちのせいなのかな。

「静まり返った夜に──即ち、夜襲だね。洞窟に向かって一斉に魔法を放ったんだ。結果は大成功、見事リーダーを討ち取って獣人を追い払うことにも成功したんだ。だから今もその跡が残り、入り組んだ形になってると言われてるんだ」

 壁に向かい、右の手のひらを広げ、左手でその手首を抑え、まるで今から魔法を放つのではないかと思わせるポーズをとる。
 青い屋根の家での出来事を思い出させられる。
 あんな火の玉を直接食らったりしたり一溜りもないだろう。

「なるほど……だから迷路みたくなっていたんですね」
「ん? マリアちゃん、愚者の洞窟に入ったことがあるの?」

 目を丸くさせパチパチ瞬きなんでさせながら訊ねられる。
 その表情は余程驚いているようにも見える。

「えーと、入ったって言うより入ってた、みたいな? そこで毛むくじゃらの魔獣に会って多分気が付いたらこんな感じに」

 後頭部を抑え、自分の尻尾を動かし前に出す。
 今では自由自在に動かせるようになっていた。

「そっか。崩落する危険もあるから入らないように言われてるんだけどね」

 顎に手を当てて何か考えるように頷くと、中は崩落する恐れがあったようだ。
 もしかしたら、上から岩が落ちてきてそのままグシャリ、なんてこともあったかもね。

「でも確かアルがその毛むくじゃらを退治しに行く予定だったとか言ってたような?」
「それもガイアスの仕業なんだろうね。もしかしたら、愚者の洞窟で不慮の事故を装ってアルフレッドくんを殺そうとしていたのかも」

 そんな疑問を口にすると、目を細め怒りをあらわにしているのかとっても険しい。
 あのくそパーマ男ならやりかねないけど……。

「アルを王に仕立てたいのに、ですか?」
「うん。アルフレッドくんを殺したのはエル派の人間だ、とでも言ってエル派を解体に追いやりたかったんじゃないかなぁ」

 なるほどねぇ……異世界訳分からん。
 少なくとも日本ではそんなことは有り得ない。
 魔法ではなく、科学が発展した日本では悪いことをすると大体バレてしまう。
 特に殺人や放火などはかなりの確率で犯人が判明してしまうのだ。
 そんな環境で育ってきているので、何とも理解し難い。

「因みに今回の放火は……?」
「自然発火、とでも言いそうだなぁ。はぁ~薬剤作るの結構重労働なんだけどなぁ」

 私を刺した時みたいに不問になったりするのかと思いきや、自然発火と言う扱いにされてしまうのかぁ。
 でも確かに釜もあるし自然に燃えそうではあるけど、何とも煮え切らない。

「ごめんなさい、私のせいで……」
「ううん、マリアちゃんは悪くないよ。ボクこそ一人にしてごめんね?」

 下を俯き謝ると、いつものニコニコしたヒックさんに戻っていた。

「いえ、助けてくれたし、怪我もなかったので大丈夫です。ところでこのブレスレットはどんな効果があったんですか?」
「ボクの元に転移、それから──まぁいつか分かるよ」

 それ以上はこのブレスレットのことについて教えてくれることはなかった。

「問題はこれからだね……またマリアちゃんは狙われるかもしれないから暫くは単独での行動は止めておいた方がいいと思う」
「ですよね……今行けば間違いなく疑われそう」

 ヒックさんは腕を組み目を瞑り、唸るように考えていた。
 このままおちおち戻っていったら家に火をつけた犯人なんかにされちゃう可能性も無きにしも非ず。
 立場があやふやな私は自分だけでなくエルとアルの将来まで完全に潰しかねないのだ。

「暇潰し、になるか分からないけどボクで良ければ魔法の基礎を教えるけど」
「みっちりじゃなければ……」

 ここで簡単に首を縦に振ると私の中にある魔力が枯渇するまで魔法の特訓をさせられそうだった。
 ただでさえカラカラなのにね!

「あはは、ルナにみっちり勉強を教えてもらってるんだってね」
「知ってるんですか?」

 私の受け答えを聞いて苦笑いを浮かべながらそう答える。
 ルナさんとも知り合いだとは……まぁ宮廷魔術師専用の家が離れにあるくらいだし知らない訳もないか。

「知ってるも何もルナはボクの妹だよ」
「ええええっ──!? 似てないですね!!!」

 突然のカミングアウトに、つい本音がポロリしてしまった。
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