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第3部 仇(あだ)
105:スルターン・ムハンマド 終話
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人物紹介
ホラズム側
スルターン・ムハンマド:ホラズム帝国の現君主。
ジャラール・ウッディーン:スルターンの長子。分封地として、ガズナとグール(およそ現在のアフガニスタンの山岳地帯)を与えられておる。
ウーズラーグ・シャー:皇太子。スルターンの子供。母はカンクリの王女。分封地は、ホラズム地方(ウルゲンチを中心とした地方で、これが後に国の名となった)、ホラーサーン(アムダリヤ南岸の広大肥沃な地)、マーザンダラーン。ただし、これらの実質的な支配者はテルケン・カトンである。
アク・シャー:スルターンの子供。王子。アクとはトルコ語で『白』を意味する。恐らくこの者は色白であったのだろう。分封地は不明。
人物紹介終了
スルターン・ムハンマドの死の後、ジャラール・ウッディーンは、父上は確かにスルターンの位を我に譲って下さったと言い張った。
他の者が聞いたのは、うなり声ともうめき声ともつかぬものであった。果たしてそうなのか、ジャラールの訴えに対し、遂に認めるとの返答をなし、ただいまわの際のためにうなり声ともつかぬものしか発しえなかったのか、それともそうではなく拒む返答がそう聞こえたのか、定かでなかった。
側近たちが返答に窮しておるところで、皇太子に任じられておったウーズラーグ・シャーがそれをあっさり認めてしまった。この者は父親の傍らにひざまずき先ほどはねつけた手をようやく優しく包み込むことができており、それだけで満足しておる如くであった。
そもそもの人の良さがそうさせたのか、あまりにジャラールがそれを望むために譲る気になったのか、あるいはこのモンゴル侵攻の苦難のただ中にスルターンの位を継ぐは余りに荷が重いと考えたのか。
そうすると、もう一人の王子たるアク・シャーもあっさり認めてしまった。
こうなってしまっては家臣にはどうすることもできぬ。二人の王子の側近もここにはおったが、スルターン・ムハンマドがみまかったこの時に、あえて己の推す王子を是が非にも新スルターンにと――王子本人がそう望み発言しておったならまだしも――主張することは、はばかられた。
またスルターンにふさわしきは誰かと問うのではなく、モンゴル相手に軍を率いるは誰がふさわしきかと問うならば、ここにおる全員がジャラールと答えたろう。そう。この亡国寸前の時にあっては、後者の問いが頭に浮かばぬ者はおらなかったのだ。
ホラズム側
スルターン・ムハンマド:ホラズム帝国の現君主。
ジャラール・ウッディーン:スルターンの長子。分封地として、ガズナとグール(およそ現在のアフガニスタンの山岳地帯)を与えられておる。
ウーズラーグ・シャー:皇太子。スルターンの子供。母はカンクリの王女。分封地は、ホラズム地方(ウルゲンチを中心とした地方で、これが後に国の名となった)、ホラーサーン(アムダリヤ南岸の広大肥沃な地)、マーザンダラーン。ただし、これらの実質的な支配者はテルケン・カトンである。
アク・シャー:スルターンの子供。王子。アクとはトルコ語で『白』を意味する。恐らくこの者は色白であったのだろう。分封地は不明。
人物紹介終了
スルターン・ムハンマドの死の後、ジャラール・ウッディーンは、父上は確かにスルターンの位を我に譲って下さったと言い張った。
他の者が聞いたのは、うなり声ともうめき声ともつかぬものであった。果たしてそうなのか、ジャラールの訴えに対し、遂に認めるとの返答をなし、ただいまわの際のためにうなり声ともつかぬものしか発しえなかったのか、それともそうではなく拒む返答がそう聞こえたのか、定かでなかった。
側近たちが返答に窮しておるところで、皇太子に任じられておったウーズラーグ・シャーがそれをあっさり認めてしまった。この者は父親の傍らにひざまずき先ほどはねつけた手をようやく優しく包み込むことができており、それだけで満足しておる如くであった。
そもそもの人の良さがそうさせたのか、あまりにジャラールがそれを望むために譲る気になったのか、あるいはこのモンゴル侵攻の苦難のただ中にスルターンの位を継ぐは余りに荷が重いと考えたのか。
そうすると、もう一人の王子たるアク・シャーもあっさり認めてしまった。
こうなってしまっては家臣にはどうすることもできぬ。二人の王子の側近もここにはおったが、スルターン・ムハンマドがみまかったこの時に、あえて己の推す王子を是が非にも新スルターンにと――王子本人がそう望み発言しておったならまだしも――主張することは、はばかられた。
またスルターンにふさわしきは誰かと問うのではなく、モンゴル相手に軍を率いるは誰がふさわしきかと問うならば、ここにおる全員がジャラールと答えたろう。そう。この亡国寸前の時にあっては、後者の問いが頭に浮かばぬ者はおらなかったのだ。
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