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第3部 仇(あだ)
60:オトラル戦23:突破作戦3日目の夜1
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人物紹介
ホラズム側
イナルチュク・カン:オトラルの城主。カンクリ勢。
ビルゲ・カン 居残り部隊の隊長
カラチャ・ハース=ハージブ:スルターンにより援軍として派遣されたマムルーク軍万人隊の指揮官。モンゴル軍に降伏を申し出たが、処刑される。
人物紹介終了
決行の日、居残り部隊は内城東門より出撃した。騎馬の多くを逃走部隊に回したため、隊長のビルゲ・カンも含め全員徒歩であった。
これまでの戦いは次の如くであった。
カラチャ・ハース=ハージブの降伏に乗じてモンゴル軍は外城への進駐を果たしており、城の外へと通じるその各門はモンゴルの支配下に移っておった。
対して、内城の各門はまだホラズムの支配下にあり、ゆえに両軍の戦場はその間にある外城に移っておった。ただしモンゴル軍は、昼は外城に進出して戦をなしたが、日没と共に外城門にのみ兵を残して確保し、そのほとんどは外に出るを常とした。
そこで、居残り部隊は一昨日の夜、昨夜と、外城東門を守るモンゴル兵に攻撃を仕掛けておった。
そして今夜で三夜連続となる。その目的はモンゴル軍を、建物で混み合い雑然とした外城に引き入れ、留めること。これにより脱出予定の他の門の敵兵を減らし、また追跡にかかるのを遅らせられようとしてのことであった。
建物の陰におるであろうモンゴル兵に向けて矢を飛ばす。そこもまた薄闇に沈むため敵兵の姿ははっきりせぬが、確かにそこから矢が射かけられて来る。
その連夜の出撃のために疲労は極みに達しておったが、しかしそのいずれも自ら残るを志願した者たちであり、士気は高く己の戦い振りが何とか味方の逃走の助けになればとの想いのもと、動かぬ体にムチうって果敢に戦った。
そしてしばらく後、反対側の内城西門より騎馬隊が一気に突破を図る。外城を疾駆し、そのまま外城西門を目指す。外城ではここの大通りが最も直線に近くまた広かったゆえに選ばれた。
前準備として一時的に占拠して大通り上の障害物となりそうな物を調査し、動かせるものについてはその際にとり除いておった。それ以降は外城東門への攻撃のみに絞っておるため、モンゴル軍がこの一帯の占拠を試みることもなく、両軍から放置された状態であった。
頼りの明かりは、モンゴル軍が防衛のために灯す松明群であった。番をするモンゴル部隊は、全く虚を突かれた形となり、混乱に陥った。それを幸いに騎馬隊は外へと駆け抜けんとする。運悪くけつまずいた騎馬を除いて、そのまま薄闇のただ中へと疾駆した。
ようやく西門のモンゴルの隊長たちが部隊を取りまとめ、後を追い始めたのはしばらく後のことであった。更にその後、他の門にても動きが見られた。
ホラズム側
イナルチュク・カン:オトラルの城主。カンクリ勢。
ビルゲ・カン 居残り部隊の隊長
カラチャ・ハース=ハージブ:スルターンにより援軍として派遣されたマムルーク軍万人隊の指揮官。モンゴル軍に降伏を申し出たが、処刑される。
人物紹介終了
決行の日、居残り部隊は内城東門より出撃した。騎馬の多くを逃走部隊に回したため、隊長のビルゲ・カンも含め全員徒歩であった。
これまでの戦いは次の如くであった。
カラチャ・ハース=ハージブの降伏に乗じてモンゴル軍は外城への進駐を果たしており、城の外へと通じるその各門はモンゴルの支配下に移っておった。
対して、内城の各門はまだホラズムの支配下にあり、ゆえに両軍の戦場はその間にある外城に移っておった。ただしモンゴル軍は、昼は外城に進出して戦をなしたが、日没と共に外城門にのみ兵を残して確保し、そのほとんどは外に出るを常とした。
そこで、居残り部隊は一昨日の夜、昨夜と、外城東門を守るモンゴル兵に攻撃を仕掛けておった。
そして今夜で三夜連続となる。その目的はモンゴル軍を、建物で混み合い雑然とした外城に引き入れ、留めること。これにより脱出予定の他の門の敵兵を減らし、また追跡にかかるのを遅らせられようとしてのことであった。
建物の陰におるであろうモンゴル兵に向けて矢を飛ばす。そこもまた薄闇に沈むため敵兵の姿ははっきりせぬが、確かにそこから矢が射かけられて来る。
その連夜の出撃のために疲労は極みに達しておったが、しかしそのいずれも自ら残るを志願した者たちであり、士気は高く己の戦い振りが何とか味方の逃走の助けになればとの想いのもと、動かぬ体にムチうって果敢に戦った。
そしてしばらく後、反対側の内城西門より騎馬隊が一気に突破を図る。外城を疾駆し、そのまま外城西門を目指す。外城ではここの大通りが最も直線に近くまた広かったゆえに選ばれた。
前準備として一時的に占拠して大通り上の障害物となりそうな物を調査し、動かせるものについてはその際にとり除いておった。それ以降は外城東門への攻撃のみに絞っておるため、モンゴル軍がこの一帯の占拠を試みることもなく、両軍から放置された状態であった。
頼りの明かりは、モンゴル軍が防衛のために灯す松明群であった。番をするモンゴル部隊は、全く虚を突かれた形となり、混乱に陥った。それを幸いに騎馬隊は外へと駆け抜けんとする。運悪くけつまずいた騎馬を除いて、そのまま薄闇のただ中へと疾駆した。
ようやく西門のモンゴルの隊長たちが部隊を取りまとめ、後を追い始めたのはしばらく後のことであった。更にその後、他の門にても動きが見られた。
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