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終章
問責の使者2 前編
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人物紹介
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主
シギ・クトク:チンギスの寵臣。戦場で拾われ正妻ボルテに育てられた。タタルの王族。
クラン・カトン チンギスの后妃。第2オルドの主人。メルキトの王女。
イブン・カフラジ・ブグラー:問責の使者として赴き殺害される。
その妻
スイケトゥ・チェルビ:本話が初出
ホラズム側
スルターン・ムハンマド:ホラズム帝国の現君主。
先代テキッシュとテルケン・カトンの間の子。
ティムール・マリク:ホジェンド城主
人物紹介終了
シルダリヤ川を舟で渡って進むと、遠くに我らの護衛隊の天幕群が見えて来た。
ここまでずっとホラズム軍の監視が付いており、今はホジェンド城主のティムール・マリクに送られておった。
衣はモンゴルより着て来た白のデール(モンゴルの民族衣装)のままであった。
長旅の土ぼこりのゆえに、半ば薄茶色となっておる。
「ムスリムは白の衣を尊しとします。それをまとうなら、スルターンの敬意を得られやすいでしょう。」
とのブグラーの進言に従って、三人そろってのこの白衣であったのだが。
そのブグラーを伴うを得なかった二人である。
ここまでほとんど会話らしきものをすることなく至り、
――そして一端会話を始めたならば、
――次の如くとなるは避けがたかったであろう。
「最早その必要もないとみなしておるのでしょうか。
往路の如くに挑発して来ることはないようです。」
「先にカンの隊商を殺し、こたびブグラーを殺したのだ。
次会う時は、矢の射かけ合いとなるは、互いに武人ならば明らかなこと。」
「今、やる訳には行かぬのですか。敵は我らの数倍といえど、やれぬとは言い切れますまい。」
「落ち着け。」
「ブグラーの仇を討たずして、
――何でおめおめ逃げ帰るが如くをなして、
――何が武人ですか。」
「落ち着けと言うておる。」
「落ち着いております。
不意を突き、命を賭すならば、やれるはずです。」
「忘れるな。
我らにはカンへの報告という重大事がある。」
「我らは仇すら討つを許されぬのですか。」
「カンを信じろ。カンはきっと仇を討って下さる。」
若い方の使者は黙った。
「それに我らのみでは、良くてあの城主を討てるのみ。
そしてあのスルターンとやらをのうのうと生かすことになる。
そうさせぬためには、我らはこれを何としてもカンに伝えねばならぬ。」
駒を並べて進むその若者は、遠巻きにして近寄らぬホラズム軍に視線を据えて外さぬ。
「そのカンの軍を、あの者は小馬鹿にしました。
我らはそれをとがめることもしませんでした。
今もまたそれをなさず、再び行き過ぎよと言われるのですか。」
「ならば、そなたに約束しよう。我はカンにホジェンド征討を願い出る。
その際、そなたも加えてもらうべく進言しよう。」
若者は初めて耳を傾けた如くであった。
「忘れるな。我もまたブグラーの仇を討ちたいと想うておることを。
ならばこそ、共に討とうぞ。
しかし今ではない。カンを信じよ。我を信じよ。
スルターンは、カンが大中軍を率いて踏みにじろう。
我らはあの者に、カンの騎兵の戦い振りを見せつけようぞ。
あのような言葉を吐いたは誤りであったと、想い知らせようぞ。」
スイケトゥ・チェルビはようやく説得するを得た。
チンギスの筆頭の重臣と言っても良いコンゴタンのモンリク・エチゲ、
――その子たるスイケトゥがこの危険な使者の任にあったのは、
――やはりブグラー同様に理由があった。
そもそもは実の父のイェスゲイ亡き後、モンリクはまさに父代わりとしてチンギスの養育に努めた。
それゆえにこそ、この者はエチゲ(父上)とチンギスに呼ばれ、その地位を得たのであった。
オルドの宴にての席次は、ボオルチュやムカリを上回るほどであった。
また軍議にても、現在では王子が立つことが多いチンギスの右側は、モンリクの定位置であった。
ただ子の一人にしてチンギスのテンゲリ(シャマン)であったココチュ。
このココチュこそ、『チンギス・カン』との称号を授けた者であった。
それほどに、テンゲリとしての権威は高く、またチンギスの寵も深かった。
しかしチンギスの弟たちともめてしまい、更には当時まだ生きておった正妻ボルテまで敵に回してしまった。
結局この件はココチュ一人の処刑により落着を見た。
しかしこの事件を機にチンギスのコンゴタン一党に向ける目は明らかに厳しいものとなった。
スイケトゥは、カンの信頼を取り戻そうとして、この使者に志願したのであった。
二人はついに護衛隊の下に至った。
スイケトゥは、まずはサマルカンドで起こったこと、またスルターンのカンへの伝言を隊員に告げた。
隊の雰囲気は明らかに一変した。
もし若い使者がここで「仇を討つぞ。」と呼びかければ、最早スイケトゥには抑えられぬであろうほどに。
しかしかたわらの者がそうすることはなく、ゆえにスイケトゥは続けるを得た。
護衛隊全員の十分な替え馬の確保は無理であること。
――それゆえ我ら二人のみが先にカンに報告に行くと告げた。
急ぎ準備を済ませると、替え馬を一人当たり十頭ばかりと多く連れて、出発した。
ティムール・マリクの方は我らと距離をとったまま、こちらをうかがっておったが、いつの間にかいなくなっておった。
二人は限界に挑む如くの強行軍にて早駆けした。
余りに急いだために、途中でほとんどの馬が足を痛めてしまった。
それゆえ二人は、宿駅に馬の備えが有るところではそれを用いた。
無いところでは、途上で出会った牧民にチンギスの虎符を見せて強制的に馬を徴発して進んだ。
秋営地から移動して来たばかりのため、慌ただしさの残るケルレンの大宮廷に、ようやく至った。
辿り着いたのは一人であった。
スイケトゥ・チェルビは途中落馬し、腕を骨折したゆえ、あきらめざるを得なかった。
若者に遅れまいと無理したゆえであった。
すぐに妃たるクラン・カトンの天幕に案内された。
宮廷におった側近たちが呼び集められた。
若い使者は長旅の辛苦を、こけた頬とやせ細った体にて如実に示しておった。
報告を受けたチンギスは「ご苦労であった。休め。」と穏やかに話しかけ、退くを許した。
これまでの疲労に加え、自らの務めをようやく果たしたとの安心感がどっと押し寄せたのであろう。
――使者は自らの足ではすぐに立ち上がれなかった。
見かねたシギ・クトクが肩を貸して天幕の外まで連れ出し、そこで警護に立つ近衛隊の者に渡した。
共に報告を受けたクラン・カトンと側近たちに、チンギスは「討つぞ」とのみまずは告げた。
大きく一呼吸した。
それから伝令隊長を呼んだ。
「我が一族並びに隊長たちに伝えよ。
ホラズムを討つ。
至急に大集会を開く。
宮廷に集え。」
クラン・カトンはいかめしき顔でぼそっとつぶやいた。
「許し難きこと。」
早くもモンゴル高原では雪が舞い始めておった。
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主
シギ・クトク:チンギスの寵臣。戦場で拾われ正妻ボルテに育てられた。タタルの王族。
クラン・カトン チンギスの后妃。第2オルドの主人。メルキトの王女。
イブン・カフラジ・ブグラー:問責の使者として赴き殺害される。
その妻
スイケトゥ・チェルビ:本話が初出
ホラズム側
スルターン・ムハンマド:ホラズム帝国の現君主。
先代テキッシュとテルケン・カトンの間の子。
ティムール・マリク:ホジェンド城主
人物紹介終了
シルダリヤ川を舟で渡って進むと、遠くに我らの護衛隊の天幕群が見えて来た。
ここまでずっとホラズム軍の監視が付いており、今はホジェンド城主のティムール・マリクに送られておった。
衣はモンゴルより着て来た白のデール(モンゴルの民族衣装)のままであった。
長旅の土ぼこりのゆえに、半ば薄茶色となっておる。
「ムスリムは白の衣を尊しとします。それをまとうなら、スルターンの敬意を得られやすいでしょう。」
とのブグラーの進言に従って、三人そろってのこの白衣であったのだが。
そのブグラーを伴うを得なかった二人である。
ここまでほとんど会話らしきものをすることなく至り、
――そして一端会話を始めたならば、
――次の如くとなるは避けがたかったであろう。
「最早その必要もないとみなしておるのでしょうか。
往路の如くに挑発して来ることはないようです。」
「先にカンの隊商を殺し、こたびブグラーを殺したのだ。
次会う時は、矢の射かけ合いとなるは、互いに武人ならば明らかなこと。」
「今、やる訳には行かぬのですか。敵は我らの数倍といえど、やれぬとは言い切れますまい。」
「落ち着け。」
「ブグラーの仇を討たずして、
――何でおめおめ逃げ帰るが如くをなして、
――何が武人ですか。」
「落ち着けと言うておる。」
「落ち着いております。
不意を突き、命を賭すならば、やれるはずです。」
「忘れるな。
我らにはカンへの報告という重大事がある。」
「我らは仇すら討つを許されぬのですか。」
「カンを信じろ。カンはきっと仇を討って下さる。」
若い方の使者は黙った。
「それに我らのみでは、良くてあの城主を討てるのみ。
そしてあのスルターンとやらをのうのうと生かすことになる。
そうさせぬためには、我らはこれを何としてもカンに伝えねばならぬ。」
駒を並べて進むその若者は、遠巻きにして近寄らぬホラズム軍に視線を据えて外さぬ。
「そのカンの軍を、あの者は小馬鹿にしました。
我らはそれをとがめることもしませんでした。
今もまたそれをなさず、再び行き過ぎよと言われるのですか。」
「ならば、そなたに約束しよう。我はカンにホジェンド征討を願い出る。
その際、そなたも加えてもらうべく進言しよう。」
若者は初めて耳を傾けた如くであった。
「忘れるな。我もまたブグラーの仇を討ちたいと想うておることを。
ならばこそ、共に討とうぞ。
しかし今ではない。カンを信じよ。我を信じよ。
スルターンは、カンが大中軍を率いて踏みにじろう。
我らはあの者に、カンの騎兵の戦い振りを見せつけようぞ。
あのような言葉を吐いたは誤りであったと、想い知らせようぞ。」
スイケトゥ・チェルビはようやく説得するを得た。
チンギスの筆頭の重臣と言っても良いコンゴタンのモンリク・エチゲ、
――その子たるスイケトゥがこの危険な使者の任にあったのは、
――やはりブグラー同様に理由があった。
そもそもは実の父のイェスゲイ亡き後、モンリクはまさに父代わりとしてチンギスの養育に努めた。
それゆえにこそ、この者はエチゲ(父上)とチンギスに呼ばれ、その地位を得たのであった。
オルドの宴にての席次は、ボオルチュやムカリを上回るほどであった。
また軍議にても、現在では王子が立つことが多いチンギスの右側は、モンリクの定位置であった。
ただ子の一人にしてチンギスのテンゲリ(シャマン)であったココチュ。
このココチュこそ、『チンギス・カン』との称号を授けた者であった。
それほどに、テンゲリとしての権威は高く、またチンギスの寵も深かった。
しかしチンギスの弟たちともめてしまい、更には当時まだ生きておった正妻ボルテまで敵に回してしまった。
結局この件はココチュ一人の処刑により落着を見た。
しかしこの事件を機にチンギスのコンゴタン一党に向ける目は明らかに厳しいものとなった。
スイケトゥは、カンの信頼を取り戻そうとして、この使者に志願したのであった。
二人はついに護衛隊の下に至った。
スイケトゥは、まずはサマルカンドで起こったこと、またスルターンのカンへの伝言を隊員に告げた。
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もし若い使者がここで「仇を討つぞ。」と呼びかければ、最早スイケトゥには抑えられぬであろうほどに。
しかしかたわらの者がそうすることはなく、ゆえにスイケトゥは続けるを得た。
護衛隊全員の十分な替え馬の確保は無理であること。
――それゆえ我ら二人のみが先にカンに報告に行くと告げた。
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スイケトゥ・チェルビは途中落馬し、腕を骨折したゆえ、あきらめざるを得なかった。
若者に遅れまいと無理したゆえであった。
すぐに妃たるクラン・カトンの天幕に案内された。
宮廷におった側近たちが呼び集められた。
若い使者は長旅の辛苦を、こけた頬とやせ細った体にて如実に示しておった。
報告を受けたチンギスは「ご苦労であった。休め。」と穏やかに話しかけ、退くを許した。
これまでの疲労に加え、自らの務めをようやく果たしたとの安心感がどっと押し寄せたのであろう。
――使者は自らの足ではすぐに立ち上がれなかった。
見かねたシギ・クトクが肩を貸して天幕の外まで連れ出し、そこで警護に立つ近衛隊の者に渡した。
共に報告を受けたクラン・カトンと側近たちに、チンギスは「討つぞ」とのみまずは告げた。
大きく一呼吸した。
それから伝令隊長を呼んだ。
「我が一族並びに隊長たちに伝えよ。
ホラズムを討つ。
至急に大集会を開く。
宮廷に集え。」
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