悪役令嬢は軍略家――何としてでも私を殺そうとする乙女ゲームの世界に宣戦布告す

ひとしずくの鯨

文字の大きさ
上 下
74 / 81
最終章 エリザベト

8:グロ注意:お2人、大立ち回り編3

しおりを挟む
 ゴリねえとチイねえは目配せする。
 その直後「オヒョー」との奇声と共に、ゴリねえが上段から激しくうちかかる。
 それは一撃を受け止めるだけで、手がしびれるほどのもののはずであったが。
 相手はその続けざまの打ち込みを全て受け止め、
――しかも負けておれじとばかり、その野太刀で打ちかかって来る。

 今度はゴリねえが受ける番であった。
 その一撃一撃は重く、とはいえ、ゴリねえも下がらず耐える。
 下がろうものなら、相手の2撃、3撃はより踏み込んだものとなる。
 また武器も相手の方が長ければ、
――下がらぬことこそ、
――完全とは言えぬまでも、相手の間合いをつぶすことになった。
 ただ当然、やがては息が尽きる。
 激しく続けざまに打ち込む以上、いうまでもなく、全てを無酸素の中でなすことになる。



 他方、チイねえ。
 こちらは一層苦戦しておったと言って良い。
 その原因は大きくは、先の一戦を見られたことだった。
 当然、相手は警戒する。
 ただチイねえは、やはり下からの攻めに固執する。

 何度か突っかかるも、
 2度は、相手が腰を落としてから、突き出した剣先に自ら突っ込むことになりかけ、
 1度は、相手が後方に跳びのきざま、
――つまり、チイねえは間合いを詰め切れぬままに
――上段からの一振りで、頭をかち割られそうになったのであった。
 前者はすんでのところで止まるを得、後者は脇差しにて何とか防いだのであった。



 2人はここで再び目配せする。
 ゴリねえは再び「おひょー」との声を上げ、上段、右上段、左上段と多少、打ち込む角度は変えるも、いずれも上から激しく打ちかかる。
 まさに力任せに押しつぶさんとする。
 しかし敵もさるもの。
 更にはゴリねえの攻撃が、ほぼ上からのものということもあり、やはり全てを防がれてしまう。
 そして息が尽きたところで、反撃を食らう。
 とはいえ、ゴリねえも防ぐを得る。
 ほぼ互角であった。



 チイねえはといえば。
 こちらは先以上に更に苦戦となった。
 先のやり取りにて、あわやとなった脳天への一撃に味を占めたのであろう。
 明らかに、いく分、後ろに重心を置き、誘う如く上段の構えを取る。
 チイねえはちっと舌打ちし、
(作者緊急注釈(笑)――ダジャレじゃないよ)
 それでも下からの攻めに拘泥する。
 ただ、その攻めは、明らかにこれまでよりおっかなびっくりしたものとならざるを得なかった。
 無論、相手も武術の達人。
 それを見逃すはずもない。
 チイねえは突っ込んでは、上段からの剣を脳天に食らいかけ、かろうじて脇差しで防ぎ、後方に下がるを繰り返すのみ。
 敵はその度ごとに上段から打ち込む角度・深さ・タイミングを変えて来る。
 チイねえの方は自らの剣の間合いにさえ入り込めておらなかった。
 これを繰り返しておっては、いつかは脳天を叩き割られる。
 チイねえ。絶体絶命。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??

シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。 何とかお姉様を救わなくては! 日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする! 小説家になろうで日間総合1位を取れました~ 転載防止のためにこちらでも投稿します。

処理中です...