悪役令嬢は軍略家――何としてでも私を殺そうとする乙女ゲームの世界に宣戦布告す

ひとしずくの鯨

文字の大きさ
上 下
49 / 81
第3章 軍略家 新谷 百花(しんたに ももか)

21

しおりを挟む
 私は引き続きチイねえとゴリねえのみを伴って、街道沿いを敵国国境へと向かっておった。



 ところで、私は憤激のあまりに、ただそれゆえに今回の決意をなした訳ではなかった。
 『もしかして』と想うところがあり、そして『それは試す価値のあること』だったゆえである。
 そう、もし私が乙女ゲームの提示したシナリオに乗るならば、
――少なくとも、その乗っている間は、すんなり行くのではと。
 つまりシナリオに従う以上、乙女ゲームは邪魔できず、むしろ協力者の如くに振る舞わなければならないのではと。
――それが如何に最終的に乙女ゲームの利に反することが明らかであるとしても。

 しかも私がこれをなせば、乙女ゲームは『婚約破棄』という重要イベントをなし得る。
 『王太子の親友たち』を殺されながら
――その罪科つみとがは問わず、
――あくまで婚約破棄イベントに拘泥したシナリオに変更して来た乙女ゲームである。

 殺害の罪科を理由に、国軍を公爵領へ派遣することも可能であったはずである。
 実際、その方が手っ取り早いのではとさえ、私には想える。

 乙女ゲームは、
――その下僕たる王太子は、
――親友たちが死んだことを知らないのだろうか?
 確かに、それは隠され、あえてこちらからは報せておらぬ。
 どうやって知るのかは分からないが、ただ、それはありそうになかった。
 ならば、その行方を問うはずである。
 それを知るからこそ、問わぬのである。
 問う必要が無いのである。

 つまり、こちらのなしたことを知りつつ、あえてそれは不問にし、シナリオを代えて来た。
 ゆえにこそ、それに乗るならば、と私は考えたのである。

 つまり勝算がない訳ではないのである!
 乙女ゲームの鼻を明かしてやろうという訳である!
 何せ私は孫子様に私淑する軍略家である!
 いけない。いけない。調子に乗っては。
 でも負ける訳には行かないのである!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

完結 お貴族様、彼方の家の非常識など知りません。

音爽(ネソウ)
恋愛
身分を笠に好き勝手する貴族たち、そんな状況を民が許すわけがなかった。 時代が変わりかけたそんな時の話。 アンブラ男爵家はとにかく見栄を張りたがる、そうして膨れ上がった借金を押し付けようと、最近頭角を現したソランズ商会に目を付けた。 「そうはいきません、貴方方の作った負債はご自分で!」 気の強いエミリアは大人しく嫁に行くものかと抗うのだ。

当然だったのかもしれない~問わず語り~

章槻雅希
ファンタジー
 学院でダニエーレ第一王子は平民の下働きの少女アンジェリカと運命の出会いをし、恋に落ちた。真実の愛を主張し、二人は結ばれた。そして、数年後、二人は毒をあおり心中した。  そんな二人を見てきた第二王子妃ベアトリーチェの回想録というか、問わず語り。ほぼ地の文で細かなエピソード描写などはなし。ベアトリーチェはあくまで語り部で、かといってアンジェリカやダニエーレが主人公というほど描写されてるわけでもないので、群像劇? 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『Pixiv』・自サイトに重複投稿。

処理中です...