悪役令嬢は軍略家――何としてでも私を殺そうとする乙女ゲームの世界に宣戦布告す

ひとしずくの鯨

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第2章 乙女ゲームの世界で

15

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 エリザベトの恋心あっての、この仕打ちか。


 私はまさに憤激しておった。


が最愛の婚約者たるエリザベトへ。なんじ下僕げぼくより至上の愛を込めて。』

 王太子の手紙の最後にあったうわついた言葉を想いだす。

 エリザベトは王太子に恋をしておる。
 それなのに、乙女ゲームとその下僕たる王太子が狙うことはといえば、

『親友たちにエリザベトを犯させる。
 その交わりもって、淫乱の名の下にエリザベトを恥辱の底に沈める。
 そしてそれを口実に、婚約破棄を成し遂げる』

 そこにあるのは、私が転移したエリザベトに対する純然たる悪意であった。


 そもそも『そで振り合うも多生たしょうの縁』との言葉さえある日本生まれの大和撫子やまとなでしこたる私。
 そして、エリザベトとは、まさに一蓮托生いちれんたくしょうの身の上となった私。

 私が転移したために、エリザベトの設定が変わった。
 乙女ゲームはそれに対して、なお婚約破棄→断罪処刑のイベントを忠実に行おうとしておる。
 そのために、よりよりシナリオに変更してきた。
 こうなってみれば、エリザベトを守るのは、私の責務でもある。
 エリザベトを恥辱の底に沈めさせたりしない。
 そして殺させたりしない。
 無論、私もみすみす死ぬ気はない。

 父上は、その後、あの問いを繰り返すことはなかった。
 あの時の答え、「少し休ませて」を『王太子とは戦争をしたくない』、とそうみなしたようであった。

 私はといえば、答えはまだ出ていなかった。
 私が考える必要があった。
 それだけが分かっていることだった。
 私だけが乙女ゲームの知識を持つゆえに。



後書きです
 本話で第2章は終了です。
 ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
 第3章は、『軍略家 新谷百花(しんたにももか)』となります。
 最後にエピローグ的な短い最終章が付く予定ですが、実質これが終章となります。
 手書き稿は完結しております。
(予約投稿とか完成稿とか書けないところが、何だかな、ではありますが)
 是非、最後までお読みいただければと想います。
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