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第3章 自称雷帝にして鵺(ぬえ)の娘(名はまだない)

自称雷帝の訪問6

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 何ということだ。
 これでは、王女たる私が乳をさらして護衛を誘惑したことになってしまう。
 私は怒りに包まれて、自室へと大股おおまたに歩き続ける。
 そもそも私の顔を見知っておったのか?
 王の居所の護衛なら、そうであっても不思議はない。
 あるいは、私の瞳に既にしゅが混じっておったのか?
 私は興奮すると、そうなる。
 父の秘密を探ろうとして、いきり立っておる今なら、そうなっておっても、不思議はなかった。
 そしてこのことは不埒ふらちな噂と共に、城内の者に知れ渡っておった。
 その噂にては、私を抱いた男は、私が本当に感じているかどうか、すぐにそれで分かると。
 目がしゅに染まれば、そうなのだと。
 だから私をとろかすには、私の目を見ながら、あんなことやこんなことを試みれば良いと。
 私がいくら感じない風を装っても、無駄で、瞳に朱が混じれば、やがては、耐えきれずに、あえぎ声を漏らし、身をよがらせると。
 私は今回の行いで、更にその噂に真実味を与えることになってしまった。
 まさに瞳に朱を混じらせ、乳をさらして、つまり己の欲情をおさえられずに、護衛を、
――しかも王の居所を持場にする護衛を誘惑する王女として。

(くそったれが。)

 怒り心頭しんとうに発するも、どうしようもない。
 せめて私の瞳に朱が混じっておらぬこと。
 そして私の顔を見知っておるゆえに、私だと気付いたことを期待するしかなかった。
 そこで私の頭がぜた。
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