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第2章 公主ヒロミ=カゼノミヤ=タイクン
極寒の公主との出会い1
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夏の暑さも随分と和らぎ、過ごしやすくなった秋の一日。
こうした時は、自ずと国を訪ねる客人も多くなる。
王女は王女で、その時も中庭にて新たな食材を求めておった。
まるで冬眠の前のリスの如く、ホッペを集めた食材でぷっくりふくらませて・・・・・・なんてことは無かったが、
とりあえず味見とばかりに、生で行けるものは口に入れてみる、
加熱した方が良さそうなものは、炎の魔道で焼くなりあぶるなりして、やはりパクリと行く。
そうして、その目をランランと輝かせる様はリスそっくりと言って良かった。
そんなところに、父王がアイサツせよというので、しぶしぶ謁見室に赴いた。
はるか東の国イトの王一行とのことであった。
その王が、貴国に王女がおるのなら是非アイサツしたいと言うておるゆえとのことであった。
基本こうした理由でもなければ、私が父王と来訪者との謁見の場に呼ばれることはない。
理由は単純で、私が炎を出すのを恐れるゆえであった。
またそもそも国王たる父が謁見に応じておる以上、王女の私が出なくても、相手国への非礼とは当然ならぬ。
既に父王に対面する形で、少し距離を取って、豪華な装飾のイスが置かれており、そこに中年の男が座っておった。
私はまず父王の側らに行き、
「ソフィアが参りました」
と小声で告げる。
父王は
「まずはイトの王へのアイサツを」
とやはり小声で返す。
そこで私は、その前に赴き、公式通り、片ひざをついて、頭を垂れるアイサツをしようとする。
すると、これも公式通り、その中年の男は私の手を取って、その動きを止め、立つをうながした。
ただそのまま私の手の甲の素肌に、ブチュウとばかりに唇を押しつけた。
更には、なかなか離してくれぬ。
当然、ゲッとは想う。
本来手袋を付けるべきなのを忘れておったのだ。
日頃、無いことでもあり、また待たせては悪かろうと急いだこともあり
――私でもそれくらいは気をつかう
――また当然、野良着で、そのまま行く訳にも行かず、着替えたりしておったからであった。
おまけに少し控えめの色が良かろうと想い、薄緑にするか薄い黄色にするか迷ってのこのざまであった。
私はその場をピリつかせるほどには怒りの表情を見せてしまったであろうが、
さすがに炎は出さなかった。
いくら私でも、そこまで傍若無人ではなかった。
これも、いつ誰が決めたのか知らぬが、公式のアイサツであり、当然、私もそれを知る。
もし舌を出してペロペロでもしようものなら、それは論外であるも、
そこは敵もさるもの、
そこのところは良くわきまえておるようで、それはせぬ。
というより、こうなってみれば、そもそも私の手に接吻したくて呼び出したのではないか、とさえ想える。
それを私が、どうぞとばかりに素肌を出せば、それは飛びつこう。
仕方ない。手袋をし忘れた私が悪い。
私は怒気をあらわにせぬよう努める。
ところがなにゆえか、他の者の怒気を感じた。
しかも、私が先ほど発したかもしれぬそれを、はるかに上回ろうというほどのものを。
こうした時は、自ずと国を訪ねる客人も多くなる。
王女は王女で、その時も中庭にて新たな食材を求めておった。
まるで冬眠の前のリスの如く、ホッペを集めた食材でぷっくりふくらませて・・・・・・なんてことは無かったが、
とりあえず味見とばかりに、生で行けるものは口に入れてみる、
加熱した方が良さそうなものは、炎の魔道で焼くなりあぶるなりして、やはりパクリと行く。
そうして、その目をランランと輝かせる様はリスそっくりと言って良かった。
そんなところに、父王がアイサツせよというので、しぶしぶ謁見室に赴いた。
はるか東の国イトの王一行とのことであった。
その王が、貴国に王女がおるのなら是非アイサツしたいと言うておるゆえとのことであった。
基本こうした理由でもなければ、私が父王と来訪者との謁見の場に呼ばれることはない。
理由は単純で、私が炎を出すのを恐れるゆえであった。
またそもそも国王たる父が謁見に応じておる以上、王女の私が出なくても、相手国への非礼とは当然ならぬ。
既に父王に対面する形で、少し距離を取って、豪華な装飾のイスが置かれており、そこに中年の男が座っておった。
私はまず父王の側らに行き、
「ソフィアが参りました」
と小声で告げる。
父王は
「まずはイトの王へのアイサツを」
とやはり小声で返す。
そこで私は、その前に赴き、公式通り、片ひざをついて、頭を垂れるアイサツをしようとする。
すると、これも公式通り、その中年の男は私の手を取って、その動きを止め、立つをうながした。
ただそのまま私の手の甲の素肌に、ブチュウとばかりに唇を押しつけた。
更には、なかなか離してくれぬ。
当然、ゲッとは想う。
本来手袋を付けるべきなのを忘れておったのだ。
日頃、無いことでもあり、また待たせては悪かろうと急いだこともあり
――私でもそれくらいは気をつかう
――また当然、野良着で、そのまま行く訳にも行かず、着替えたりしておったからであった。
おまけに少し控えめの色が良かろうと想い、薄緑にするか薄い黄色にするか迷ってのこのざまであった。
私はその場をピリつかせるほどには怒りの表情を見せてしまったであろうが、
さすがに炎は出さなかった。
いくら私でも、そこまで傍若無人ではなかった。
これも、いつ誰が決めたのか知らぬが、公式のアイサツであり、当然、私もそれを知る。
もし舌を出してペロペロでもしようものなら、それは論外であるも、
そこは敵もさるもの、
そこのところは良くわきまえておるようで、それはせぬ。
というより、こうなってみれば、そもそも私の手に接吻したくて呼び出したのではないか、とさえ想える。
それを私が、どうぞとばかりに素肌を出せば、それは飛びつこう。
仕方ない。手袋をし忘れた私が悪い。
私は怒気をあらわにせぬよう努める。
ところがなにゆえか、他の者の怒気を感じた。
しかも、私が先ほど発したかもしれぬそれを、はるかに上回ろうというほどのものを。
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