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第17話 聞いてないんだけど2
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弟がやって来た。父母からの伝言をたずさえてであった。太皇太后様と皇帝様にお前の方から良くお礼を言っておいてくれ――無論、謝(感謝を述べた状)は別途、奉るにしろ――とのことであった。
父が崇儀使・栄州刺史(武官職)を、母が華原郡君(名誉称号)を賜られたゆえだった。更には、(銅)銭・銀・絹を各一千も併せて。
後宮への入口である内東門の脇にある一室にて話す。ここであれば、親族たる弟と会うのに、改めて太皇太后様の許しは要らぬ。
「しかし、姉ちゃんはすげえな。何で、これまで何も言ってくれないんだよ」
いや。言うほどのことは何も無かったから。というのは事実。ただ、弟には言い訳にしか聞こえないだろうから、言わない。
私が入宮したのが十ヶ月ほど前。それから後も伝言係――恐らく父母から様子を見て来いと言われたのだろう――として、一~二ヶ月に一度は来ていたので、会うのがそれほど久しぶりという訳ではない。
その弟は先ほどから感心しきりである。
「姉ちゃんって、よほど愛されているんだな。皇后様になるなんて夢にも想わなかったぞ」
皇后になる云々については、私もそうだ。しかし愛されているのかというと、はなはだ疑問ではある。しかし、それを色恋からは今しばらくは遠そうな弟に言っても仕方ない。
更に問題がある。私自らの秘めた恋心である。これこそ、まさに、誰にも言えぬ。
おまけ 地方武官を上から言うと、節度使、節度/観察留後、観察使、防御使(孟元:祖父)、遙郡防御使、団練使、刺史(孟在:父)となる。刺史が(武官職を示す)使ではなく『史』の字を使っているのは、この官名が漢の武帝の時代より用いられた古い官名だからである。
父が崇儀使・栄州刺史(武官職)を、母が華原郡君(名誉称号)を賜られたゆえだった。更には、(銅)銭・銀・絹を各一千も併せて。
後宮への入口である内東門の脇にある一室にて話す。ここであれば、親族たる弟と会うのに、改めて太皇太后様の許しは要らぬ。
「しかし、姉ちゃんはすげえな。何で、これまで何も言ってくれないんだよ」
いや。言うほどのことは何も無かったから。というのは事実。ただ、弟には言い訳にしか聞こえないだろうから、言わない。
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