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【#48 眼鏡科を追放されました】

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「お待ちください」

普段冷静なアキトが声を荒げて言った。

「生徒会長に、学園長を更迭する権限などありません」

「言ったろ。書き換えたのは十条だけじゃないって。よく見てみなよ」

エルはアキトを無視し、私の目を見て言った。

膝が震える。冷や汗が背中を流れる。氷のように体が冷たい。

アキトは生徒会規則を机の上にもう一度広げる。

同時に、エルが読み上げた。

「生徒会規則第十五条。生徒会長は最高意思決定者として、眼鏡科生徒の半数以上の同意を得た場合、学園長を更迭することができる。眼鏡科の生徒の署名はこれだ」

放り投げるようにして、机の上に書面が置かれる。

そこには『学園長更迭についての署名』とあり、半数以上の生徒が名を連ねていた。

「どうして……」

人って絶望すると、本当に目の前が真っ暗になるのね。

比喩かと思っていたけれど、本当に視界が薄暗くなっていく。

「どうして? さあ、どうしてだろうね」

歌うようにエルは言った。

「姫様、騙されてはいけません。その署名はきっと偽物です」

強い剣幕でリュシアンは言い張ったが、エルは首を振る。

「残念だけど、署名は本物だよ。何なら、生徒たち本人に確認してもらってもいい」

アキトとフィリップ先生が目を見交わせている。

これだけ自信満々に言うのだから、本当なのだろう。

「眼鏡科のみんなが、私のクビに賛成したってこと……?」

頭を殴られたような衝撃だった。

あんなに優しくて親切で、笑顔で協力してくれた眼鏡科のみんなが、実は裏で私をクビにしたいと思っていたの?

脈が激しく打ち、息が苦しくなってきた。

「落ちつけ、お嬢さん」

フィリップ先生は言って、私の肩に手を置いた。

「エルネストが情報を操作して、生徒たちを操ったんだ」

「人聞きが悪いなあ、先生。俺は真実を伝えたまでだよ」

ポケットに手を突っ込み、エルは天使のように愛くるしい笑顔で言った。

その姿が、今やモンスターのように恐ろしく思える。

「プリスタイン公爵令嬢は、眼鏡をかけた男性が特別お好きらしい。そんな好みの男性を集めて愛でるために、父公爵にねだってこの学園を設立された。純粋に学びに来ていた生徒たちは、ひどく失望していたよ。裏切られたと感じた者もいるかもしれない。何せ技術者の養成は名目にすぎず、実際は自分好みのハーレムを作ろうとしていただけなんだから」

「違うわ」

叫ぼうとしたが、かすれて弱々しい声にしかならなかった。

オスカーやウェンゼル学園の人たちの冷たい視線が突き刺さる。

「何が違うの?」

エルに聞き返されて、私は言葉が出てこなかった。

ただ、マラソンを走りきった後のように激しく息が上がって、目が回り出す。

「エルネスト、やめろ」

フィリップ先生が割って入ろうとしたが、エルはやめなかった。

「俺は眼鏡科の生徒会長であり、全生徒の代弁者だ。だから、生徒を代表して言わせてもらう。メイちゃん、君は私利私欲のために学園を作った。けど、眼鏡科の生徒は君のおもちゃじゃない。君は学園長に相応しくない」

「お嬢様!!」

急激に意識が遠のいて体のバランスを失い、椅子ごと床へ倒れ込んだ。

とどめを刺すエルの笑顔が、瞼の裏に焼きついている。

「――これが答えだよ」
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