上 下
43 / 61

【#43 二校間交流会が始まりました】

しおりを挟む
フィリップ先生の忠告は、少なからず私の心を動揺させた。

でも、それ以上にやるべきことが山積みだった。

二校間交流会まで一週間を切り、当日の段取りの最終確認やリハーサルに追われて、目が回るほどの忙しさの中、私はいつの間にかそのことを忘れていた。

そして、当日。

七台のきらびやかな馬車を引き連れて、ウェンゼル公立学園生徒会の面々は、我がプリスタイン公立学園眼鏡科のお城へやってきた。

正門をくぐり、校舎の前にある前庭に私がたち、エル、アキト、リュシアン、フィリップ先生が周りに立っている。

その後ろに、眼鏡科の教員や生徒たちが並んで出迎える格好だった。

馬車からオスカーが降りると、あまりの眩しさに目がくらみそうだった。

うっ……! 相変わらずの超イケメン、金髪に青縁眼鏡が最高に似合っている。

しかも今日は、漆黒を基調とした優雅なデザインの制服を身にまとっているから、なおさらイケメン度合が高まっている。

男子生徒でさえも、思わず溜息をついて見とれてしまうほどだった。

「ごきげんよう、オスカー様。お会いできて光栄ですわ。プリスタイン公立学園眼鏡科、学園長のティアメイと申します」

「はじめまして、ティアメイ殿。お会いできて光栄です」

と言い、オスカーは私の手の甲に口づけた。

ぎゃあああああ!

心の中で思いっきり悲鳴を上げたけど、何とかこらえて微笑みを保つ。

何が「はじめまして」よ、ぬけぬけとよく言うわ。

「本日は遠いところをお越しいただき、誠にありがとうございます」

私がお辞儀をすると、眼鏡科の全員がそろってお辞儀をする。

オスカーは品のよい笑顔で、連れてきた生徒たちを示した。

「こちらこそ、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。こちらがウェンゼル公立学園の生徒会メンバーです。わたくしが生徒会長を務め、副生徒会長、会計、書記、総務となっております」

生徒会のメンバーは全員男性だった。誰も眼鏡はかけてないけど、全員物すごいイケメンである。

引率の教師もいるのかと思ったが、どうやら連れてきていないらしい。

大人が必要ないぐらい、オスカーの信頼は絶大なのだろう。何せ、学園長はオスカーのお父さんだもんね。

「さっそくですが、眼鏡科のご紹介をいたしますわ。どうぞこちらへ」

私はアキトと目配せし、段取りどおりオスカーたちを先導した。

アキトはスリッパを用意したり、「足元にお気をつけください」などの気遣いを怠らない。

生徒たちはそれぞれの教室に戻って授業を受けるけれど、それは全部普通科目の授業だ。

眼鏡科らしい授業――製作技術や実技については、二校間交流会の間は行わないよう徹底している。

情報を盗まれるのを防ぐためだ。

「美しい城ですね」

校舎を眺めてオスカーは言った。

ありきたりな社交辞令ではあるけれど、まんざら嘘ってわけでもなさそう。

「ありがとうございます。父も喜びますわ」

この眼鏡科は、私の発案から数ヶ月で建設された。お父様がこだわりぬいて作り上げた、大切な学び舎だ。

そして、私の宝物でもある。

それを認められたようで、少しだけ嬉しかった。

「歩きながらで恐縮ですが、眼鏡科の生徒会メンバーをご紹介いたしますわ。生徒会長のエルネスト、副生徒会長兼会計のアキト、書記のリュシアン。そして、生徒会顧問のフィリップ先生です」

四人はそれぞれに挨拶をし、ウェンゼル学園の人たちと握手を交わす。

よし、なかなか友好的なムードじゃない。

「こちらは音楽室になっております」

教室前方には銀の譜面台が並び、後方にはピアノやバイオリンといった楽器が並んでいる。

私は歩いていって、壁にあるレバーを引いた。

「おお……!」

ぎぎぎ……と厳めしい音を立てて、天井が開き、壁が地面にめり込んでいく。

あっという間に、野外音楽堂のでき上がりだ。

この音楽室は学生寮や住居と離れているので、思いきり演奏しても迷惑にならない。

「素敵でしょう?」

大好きな場所を披露できるのが嬉しくて、思わず私は満面の笑みで言った。

「はい、とても」

オスカーも心からの笑顔を見せてくれる。

二校間交流会は極めて順調だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています

平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。 自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...