異世界に生まれ変わったので、学園を作って眼鏡男子と制服デートしてみた

凪子

文字の大きさ
上 下
23 / 61

【#23 アキトに近づいてはいけない病にかかりました】

しおりを挟む
ゴーン、ゴーン。ゴーン、ゴーン。

録音された音声じゃなく、本物の鐘の音がして、私は我に返った。

「では、本日の授業はここまで。しっかり復習しておくんだぞ」

白衣眼鏡男子のフィリップ先生が、ぬぼーっとした口調で言う。

板書された内容を見て、ようやく今の授業が数学だったことに気づいた。

「お嬢様」

「ひっ」

隣の席のアキトがぎょっとした顔をする。

声をかけてくれただけなのに、私がびくっとしてしまったからだ。

うわ……本当にまずいよね、これ。

「どしたの? メイちゃん。変な声出して」

後ろの席のエルが、無邪気な笑顔で尋ねてくる。

「いや~その~おほほほほ、何でもないの」

お嬢様笑いで取り繕おうとするけど、アキトの目が怖い。

分かってるわよ。いくらうっかり者の私でも、昨日のことは誰にも喋ったりしないって。

それにしても、昨日はびっくりした。

「制服眼鏡男子なら、誰でもいいんですか」からの、「じゃあ俺でもいいですよね」発言。

あれは、どういう意味だったんだろう。

「アキトはだめよ」

あの後、私が言うと、アキトは哀しそうな顔になり、それ以上何も言わなかった。

胸が痛んだけど、それ以上に混乱していた。

あれ? 何でアキトじゃだめなの?

アキトだって眼鏡科の学生で制服を着ているし、眼鏡もかけている(しかも似合ってる)。

だったら、私がしたかった眼鏡男子との制服デートの相手にはぴったりだ。何の不足もない。

でも、とっさに「だめ」と言ってしまった……どうして?

自分でもよく分からない。

でも、その後すぐアキトは普段どおりの態度に戻ったけど、私は戻れなくなってしまった。

例えば着がえや入浴の手伝い、寝起きの顔を見られること、いつも間近に控えていて、時折耳打ちされること――今まで当たり前だったことが急に恥ずかしくてたまらなくなった。

普通にしなきゃ。アキトは普通に戻ってるんだもん。

「お嬢様、お髪に埃が」

髪に触れられそうになって、頬が燃え上がった。

「やめてっ!」

思わず席を立ち、私はアキトと距離を取っていた。

やばい……クラスの視線を集めちゃってる。『目指せ普通のお嬢様』なのに、これはよくない。

でも恥ずかしくて恥ずかしくて、どうしても離れずにはいられない。

私、『アキトに近づいてはいけない病』にかかっちゃったみたい。

「お、お手洗いで髪型を直してくるわ。アキトはついてこなくていいから」

「……かしこまりました」

アキトはうやうやしく頭を下げたので、その表情は分からなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

PMに恋したら

秋葉なな
恋愛
高校生だった私を助けてくれた憧れの警察官に再会した。 「君みたいな子、一度会ったら忘れないのに思い出せないや」 そう言って強引に触れてくる彼は記憶の彼とは正反対。 「キスをしたら思い出すかもしれないよ」 こんなにも意地悪く囁くような人だとは思わなかった……。 人生迷子OL × PM(警察官) 「君の前ではヒーローでいたい。そうあり続けるよ」 本当のあなたはどんな男なのですか? ※実在の人物、事件、事故、公的機関とは一切関係ありません 表紙:Picrewの「JPメーカー」で作成しました。 https://picrew.me/share?cd=z4Dudtx6JJ

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは小説の世界だ。 乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私は所謂モブ。 この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。 そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?

処理中です...