15 / 61
【#15 自称ドSと眼鏡トークをしました】
しおりを挟む
「これは眼鏡というのか」
オスカーは自分の眼鏡を指さして言った。
「俺は目は悪くないほうだが、これをかけると弓の精度が相当上がる。細かい文字も読み解けるし、かなり遠くまで見通すこともできる」
「そうでしょ。便利だよね、眼鏡って」
しかも、かけている姿が目の保養と癒しになる。
眼鏡って何て素晴らしいんだろう。人類史上、最高の発明品といっても過言ではないのじゃなかろうか。
うっとりしていると、オスカーは声を低めて言った。
「俺は眼鏡について調べるために、お前をここに連れてきた。噂では、眼鏡を広めたのはプリスタイン公爵令嬢であるお前らしいからな。眼鏡に最も詳しい人間というわけだ」
「やだ、オスカー、あなたも眼鏡好きだったの? もしかして眼鏡フェチ?」
「は? フェチ?」
オスカーは虚を突かれたようで、反応が鈍った。
「眼鏡について知りたいんでしょう? 眼鏡愛を語りたいんでしょ? 分かる分かる。私も製法とかは詳しくないけど、どういう眼鏡が似合うかは教えてあげられると思う。今かけてるのも似合ってるけど、茶色の縁とか、丸っぽいのもいいし、いっそ縁なしとかも似合うかも!」
「……ちょっと何言ってるか分からないんだが」
私はベッドから降りて、オスカーに近づいた。
さらさらの金髪、綺麗な青い瞳。この世界の顔面偏差値は基本的に高いけど、オスカーは中でもとびっきりだ。
「イケメン金髪眼鏡男子、最高……」
じゅるり、とよだれが出そうになり、慌てて取り繕う。
そのとき、オスカーの手が私の手首をぎゅっとつかんだ。
「分かってないようだから教えてやるが、俺はドSだぞ」
「ドSキター!! 金髪イケメン眼鏡にドSって、どんだけ萌え要素盛り込んだら気が済むのよ!」
「うるさい!! お前は今、敵の本拠地にいるんだ。わけの分からないことを言って俺を煙に巻こうとしているようだが、そうはいかない。全てを白状するまで帰さないからな」
「全てって言われても……」
何だか話がかみ合っていない気がする。
オスカーが私をさらってまで、眼鏡について知りたがっているのは分かった。
この世界じゃ存在しなかった発明品だから、珍しいもんね。
「単刀直入に聞く。お前はこの眼鏡を使って、何がしたいんだ」
オスカーは鋭い眼光で尋ねた。
「何って……?」
「プリスタイン公爵家は、眼鏡を軍事目的で発明したのかと聞いている」
「軍事目的?!」
私は噴き出した。
「軍事目的って、戦争とかそういうこと? ないない、ないです。どこをどう間違えたら、そんな発想になるのよ~」
笑いながら空いている左手でオスカーの肩をたたいたが、彼はにこりともしない。
真剣な表情で私を見つめ、手首を握りしめている。
あれ……? 何か空気重くない?
「あのー、そろそろ放してほしいんだけど」
「さっき言ったろ。眼鏡をかければ弓の精度が上がり、細かい文字が読め、遠くを見通すことができると」
「うん、言ってたけど、それより手をですね」
「つまり眼鏡を装着すれば、兵士は優れた弓の使い手になり、極小文字を使った暗号を使え、敵地の偵察も容易になるということだ」
オスカーの言わんとすることにようやく気づいて、私は青ざめた。
オスカーは自分の眼鏡を指さして言った。
「俺は目は悪くないほうだが、これをかけると弓の精度が相当上がる。細かい文字も読み解けるし、かなり遠くまで見通すこともできる」
「そうでしょ。便利だよね、眼鏡って」
しかも、かけている姿が目の保養と癒しになる。
眼鏡って何て素晴らしいんだろう。人類史上、最高の発明品といっても過言ではないのじゃなかろうか。
うっとりしていると、オスカーは声を低めて言った。
「俺は眼鏡について調べるために、お前をここに連れてきた。噂では、眼鏡を広めたのはプリスタイン公爵令嬢であるお前らしいからな。眼鏡に最も詳しい人間というわけだ」
「やだ、オスカー、あなたも眼鏡好きだったの? もしかして眼鏡フェチ?」
「は? フェチ?」
オスカーは虚を突かれたようで、反応が鈍った。
「眼鏡について知りたいんでしょう? 眼鏡愛を語りたいんでしょ? 分かる分かる。私も製法とかは詳しくないけど、どういう眼鏡が似合うかは教えてあげられると思う。今かけてるのも似合ってるけど、茶色の縁とか、丸っぽいのもいいし、いっそ縁なしとかも似合うかも!」
「……ちょっと何言ってるか分からないんだが」
私はベッドから降りて、オスカーに近づいた。
さらさらの金髪、綺麗な青い瞳。この世界の顔面偏差値は基本的に高いけど、オスカーは中でもとびっきりだ。
「イケメン金髪眼鏡男子、最高……」
じゅるり、とよだれが出そうになり、慌てて取り繕う。
そのとき、オスカーの手が私の手首をぎゅっとつかんだ。
「分かってないようだから教えてやるが、俺はドSだぞ」
「ドSキター!! 金髪イケメン眼鏡にドSって、どんだけ萌え要素盛り込んだら気が済むのよ!」
「うるさい!! お前は今、敵の本拠地にいるんだ。わけの分からないことを言って俺を煙に巻こうとしているようだが、そうはいかない。全てを白状するまで帰さないからな」
「全てって言われても……」
何だか話がかみ合っていない気がする。
オスカーが私をさらってまで、眼鏡について知りたがっているのは分かった。
この世界じゃ存在しなかった発明品だから、珍しいもんね。
「単刀直入に聞く。お前はこの眼鏡を使って、何がしたいんだ」
オスカーは鋭い眼光で尋ねた。
「何って……?」
「プリスタイン公爵家は、眼鏡を軍事目的で発明したのかと聞いている」
「軍事目的?!」
私は噴き出した。
「軍事目的って、戦争とかそういうこと? ないない、ないです。どこをどう間違えたら、そんな発想になるのよ~」
笑いながら空いている左手でオスカーの肩をたたいたが、彼はにこりともしない。
真剣な表情で私を見つめ、手首を握りしめている。
あれ……? 何か空気重くない?
「あのー、そろそろ放してほしいんだけど」
「さっき言ったろ。眼鏡をかければ弓の精度が上がり、細かい文字が読め、遠くを見通すことができると」
「うん、言ってたけど、それより手をですね」
「つまり眼鏡を装着すれば、兵士は優れた弓の使い手になり、極小文字を使った暗号を使え、敵地の偵察も容易になるということだ」
オスカーの言わんとすることにようやく気づいて、私は青ざめた。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
来世にご期待下さい!〜前世の許嫁が今世ではエリート社長になっていて私に対して冷たい……と思っていたのに、実は溺愛されていました!?〜
百崎千鶴
恋愛
「結婚してください……」
「……はい?」
「……あっ!?」
主人公の小日向恋幸(こひなたこゆき)は、23歳でプロデビューを果たした恋愛小説家である。
そんな彼女はある日、行きつけの喫茶店で偶然出会った32歳の男性・裕一郎(ゆういちろう)を一眼見た瞬間、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
――……その裕一郎こそが、前世で結婚を誓った許嫁の生まれ変わりだったのだ。
初対面逆プロポーズから始まる2人の関係。
前世の記憶を持つ恋幸とは対照的に、裕一郎は前世について何も覚えておらず更には彼女に塩対応で、熱い想いは恋幸の一方通行……かと思いきや。
なんと裕一郎は、冷たい態度とは裏腹に恋幸を溺愛していた。その理由は、
「……貴女に夢の中で出会って、一目惚れしました。と、言ったら……気持ち悪いと、思いますか?」
そして、裕一郎がなかなか恋幸に手を出そうとしなかった驚きの『とある要因』とは――……?
これは、ハイスペックなスパダリの裕一郎と共に、少しずれた思考の恋幸が前世の『願望』を叶えるため奮闘するお話である。
(🌸だいたい1〜3日おきに1話更新中です)
(🌸『※』マーク=年齢制限表現があります)
※2人の関係性・信頼の深め方重視のため、R-15〜18表現が入るまで話数と時間がかかります。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる