異世界に生まれ変わったので、学園を作って眼鏡男子と制服デートしてみた

凪子

文字の大きさ
上 下
14 / 61

【#14 家同士は犬猿の仲でした】

しおりを挟む
ふわふわ、ふわふわ、マシュマロの上にいるみたい。

あー、いい気持ち。

ごろんと寝返りをして、大きく伸びをして、目覚めたら、視界に見知らぬ光景が飛び込んできた。

……あれ?

私の部屋って、こんな感じだったっけ?

「アキト……?」

「やっと目が覚めたか」

聞き慣れない声に、私はぎょっとした。

「誰?」

私が寝ているお姫様ベッドの向こう、豪華なカウチに金髪の少年が座っている。

その青縁の眼鏡を見て、ようやく全ての記憶が蘇った。

「あーっ、誘拐犯!!」

「誰が誘拐犯だ。人聞きの悪いこと言うな」

指さして叫ぶと、金髪眼鏡イケメンは苦い顔をした。

「目的は何? わ、私の体……?」

「アホか。お前みたいな貧乳、誰が襲うか」

「だだだ誰が貧乳よ! 言っとくけどね、前世より全然マシなんだからねっ」

「は? 前世?」

私ははっと口を手で押さえる。

「……と、とにかく、誘拐ってことはあれ? 身代金目的とか?」

その言葉に、彼は本気でむっとしたようだった。

険悪な表情で私を睨みつける。

「無礼者が、口を慎め。その言葉、我がウェンゼル公爵家への侮辱と受け取るぞ」

うわあ、イケメンが怒ると迫力あるわ~。

でも、こっちだって負けてはいられない。

「無礼はそちらのほうでしょう。わたくしはティアメイ・アネット・ルーシー・クレア・プリスタイン。
プリスタイン公爵の娘を断りもなく身勝手にさらっておいて、ただで済むとは思ってないでしょうね」

私の迫力に、金髪眼鏡イケメンがややたじろいだ。

しばらく睨み合っていたが、やがて根負けしたのか、不服そうに言う。

「お前、俺を覚えていないのか」

「へ?」

 思わず間抜けな声で返事すると、彼は深いため息をついた。

「……我が名はオスカー・ロミオ・ヴィクター・ジョージ・ウェンゼル。ウェンゼル公爵家の次期当主だ。
貴殿とは以前、茶会で何度かお会いしているはずだが」

「ええーそうだったっけ……」

公爵家ということは、私と同じ身分の公爵子息ということだ。

確かに言われてみれば、ちょっとした仕草に育ちのよさと気品が滲み出ている。

もしかすると、眼鏡がめちゃくちゃ似合っているため、そこに気を取られて思い出せないのかもしれない。

お茶会の時点ではオスカーは眼鏡をかけてなかったはずだしね。

ん? ウェンゼル公爵家?

その名前、どこかで聞いたことがあるような……。

「我がウェンゼル公爵家と、お前のプリスタイン公爵家は領国が隣り合っており、かねてより犬猿の間柄だ。お前は敵の顔も知らないのか」

「あー! やっぱりそうだ!! お父様から聞いたわ、何か家同士仲悪いらしいね」

オスカーが、がくっと肩を落とす。

「そんなことより、どうして眼鏡を持ってるの? 眼鏡は今プリスタイン領でしか手に入らないはずよ」

「そんなことより??」

意表を突かれたのか、オスカーがぎょっとした顔をする。

「さっきまで誘拐だ何だってぎゃーぎゃー騒いでたくせに、身の危険はどこへ行った」

「だって、お隣さんなんでしょ? しかも同じ公爵家だし、誘拐ってわけでもないっぽいし。だったら次に気にするのは眼鏡でしょうよ」

「何だその理屈は……」

オスカーは理解不能といった目をしている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...