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本編
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爽君に会おうとして出かけた矢先に友子が倒れ、送り届けた病院で紘ちゃんに出会う。
学園都市の中では、あり得ないほどではないけれど、やっぱりどこかおかしい気がする。
(私と爽君が会おうとしているのを知って、妨害してる?)
「紘ちゃん。爽君と会った?」
かすかに紘ちゃんの肩が動いた。わずかな動きだったけれど、私には分かる。
「え? 何でそんなこと聞くの?」
紘ちゃんの表情はいつもと変わらず、動揺は表れていない。
でも、答えにならない答えだ。
私は目を細めた。
「爽君が今、どこにいるか知ってる?」
「知らないよ。だって俺、あのとき縁切ったから。舞ちゃんも一緒にいたでしょ」
「知ってるの?」
「いや、知らないって言ってるじゃん」
ややむきになって紘ちゃんは言い返した。
それを見て、確信が頭を突き抜ける。
「知ってるんだ……」
胸の奥深くから突き上げてくる感情がある。
怒りなのか哀しみなのか悔しさなのか、それすら分からなかった。
「舞ちゃん」
「離して!!」
肩に触れた紘ちゃんの腕を、激しく払いのける。
勢いに押されて、紘ちゃんが二、三歩たたらを踏んだ。
「紘ちゃんの嘘つき。何で知らないなんて嘘つくの」
紘ちゃんは困惑したように言った。
「舞ちゃん、変だよ。急にそんな」
「私が何も知らないと思ってるの? 前世のこともマイアのことも、ディエス・イレのことだって分かってるんだから!」
それを聞いた紘ちゃんの顔色といったら、見ものだった。
傍目に分かるほど真っ青になり、険しい顔で私を睨みつけている。
学園都市の中では、あり得ないほどではないけれど、やっぱりどこかおかしい気がする。
(私と爽君が会おうとしているのを知って、妨害してる?)
「紘ちゃん。爽君と会った?」
かすかに紘ちゃんの肩が動いた。わずかな動きだったけれど、私には分かる。
「え? 何でそんなこと聞くの?」
紘ちゃんの表情はいつもと変わらず、動揺は表れていない。
でも、答えにならない答えだ。
私は目を細めた。
「爽君が今、どこにいるか知ってる?」
「知らないよ。だって俺、あのとき縁切ったから。舞ちゃんも一緒にいたでしょ」
「知ってるの?」
「いや、知らないって言ってるじゃん」
ややむきになって紘ちゃんは言い返した。
それを見て、確信が頭を突き抜ける。
「知ってるんだ……」
胸の奥深くから突き上げてくる感情がある。
怒りなのか哀しみなのか悔しさなのか、それすら分からなかった。
「舞ちゃん」
「離して!!」
肩に触れた紘ちゃんの腕を、激しく払いのける。
勢いに押されて、紘ちゃんが二、三歩たたらを踏んだ。
「紘ちゃんの嘘つき。何で知らないなんて嘘つくの」
紘ちゃんは困惑したように言った。
「舞ちゃん、変だよ。急にそんな」
「私が何も知らないと思ってるの? 前世のこともマイアのことも、ディエス・イレのことだって分かってるんだから!」
それを聞いた紘ちゃんの顔色といったら、見ものだった。
傍目に分かるほど真っ青になり、険しい顔で私を睨みつけている。
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