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『ああ』
爽君は短く答えると、
『いつでもお前の近くにいて、見守ってる』
私は涙混じりの笑い声を上げた。
「何か爽君、死んだ人みたいだよ」
『ははっ。……そうかもな』
しばらく沈黙が続いた。
『本当に、ごめん』
電話の向こうから、痛いくらいの思いが伝わってくる。
目頭が熱くなった。
「謝らなきゃいけないのは、私のほうなの……」
唇を噛みしめても噛みしめても、震えがおさまらない。
「爽君。ディエス・イレって何?」
電話の向こうで一瞬、音が消えた。
「爽君?」
『………………思い出したのか』
数秒たっぷりと沈黙した後、ようやく爽君は言った。
「思い出したって、前世のこと?」
今度は、音を立てて息を呑む。
『どこまでだ?どこまで思い出した』
その言葉を聞いて、私はパズルのピースがはまっていくのを感じた。
「やっぱり、ただの夢じゃないんだね。あの夢は本当に、私たちの前世なんだね。爽君はアメリカに行くとき、思い出したんだね?」
『舞』
爽君は強い口調で言った。
『今から会えるか』
「うん」
気づいたら、私は立ち上がっていた。
スマホを手に、手近にあった財布とバッグを引っつかむ。
『誰にも言わずに、今から言う場所に来てくれ。いいか、俺と会うことは誰にも言うなよ。紘二にも、誰にも』
爽君は短く答えると、
『いつでもお前の近くにいて、見守ってる』
私は涙混じりの笑い声を上げた。
「何か爽君、死んだ人みたいだよ」
『ははっ。……そうかもな』
しばらく沈黙が続いた。
『本当に、ごめん』
電話の向こうから、痛いくらいの思いが伝わってくる。
目頭が熱くなった。
「謝らなきゃいけないのは、私のほうなの……」
唇を噛みしめても噛みしめても、震えがおさまらない。
「爽君。ディエス・イレって何?」
電話の向こうで一瞬、音が消えた。
「爽君?」
『………………思い出したのか』
数秒たっぷりと沈黙した後、ようやく爽君は言った。
「思い出したって、前世のこと?」
今度は、音を立てて息を呑む。
『どこまでだ?どこまで思い出した』
その言葉を聞いて、私はパズルのピースがはまっていくのを感じた。
「やっぱり、ただの夢じゃないんだね。あの夢は本当に、私たちの前世なんだね。爽君はアメリカに行くとき、思い出したんだね?」
『舞』
爽君は強い口調で言った。
『今から会えるか』
「うん」
気づいたら、私は立ち上がっていた。
スマホを手に、手近にあった財布とバッグを引っつかむ。
『誰にも言わずに、今から言う場所に来てくれ。いいか、俺と会うことは誰にも言うなよ。紘二にも、誰にも』
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