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靄がかかった視界の中、私は思わず目をつむり、パニックになって叫んだ。
「助けて……爽君!」
「どうした、マイア」
返事があって目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「……?!」
白い。
壁も柱も床も、何もかもが白い空間に立っている。
それに、目の前にいる人の着ている服まで白い。
「ソロン様……」
思わず言葉が漏れて、自分に驚いた。
(ソロンって誰?)
呆然としていると、目の前にいる金髪碧眼の男性は、にやりと笑う。
「昼間から誘惑か? マイア」
腰に手を回して引き寄せられる。
私は、とっさに大きく腕を振って抵抗した。
「やめてくださいっ。神の御前ですよ」
ようやく思い出した。
ここはアルカディア神殿。
そして、私はマイア。この神殿で、神に仕える巫女だ。
(一体、今まで何してたんだろう)
ぼんやりとして、地面がふわふわ浮いているような、変な感覚がある。
まるで長い夢を見ていた後のように。
「で? 今度の神託はどうだったんだ、巫女姫様」
悪戯っぽい笑顔でソロン様は言う。
私はこの人が泣いたり、取り乱したりするのを見たことがない。
この国の命運を背負う王だというのに、いつも明るく自信満々で。
「……エストカイに攻め入るのは、今はやめたほうがよろしいかと」
「それはお前の判断か、それともアポロン神のお告げか?」
鋭い口調でソロン王は畳みかける。
言葉に詰まって、私は視線をそよがせた。
「助けて……爽君!」
「どうした、マイア」
返事があって目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「……?!」
白い。
壁も柱も床も、何もかもが白い空間に立っている。
それに、目の前にいる人の着ている服まで白い。
「ソロン様……」
思わず言葉が漏れて、自分に驚いた。
(ソロンって誰?)
呆然としていると、目の前にいる金髪碧眼の男性は、にやりと笑う。
「昼間から誘惑か? マイア」
腰に手を回して引き寄せられる。
私は、とっさに大きく腕を振って抵抗した。
「やめてくださいっ。神の御前ですよ」
ようやく思い出した。
ここはアルカディア神殿。
そして、私はマイア。この神殿で、神に仕える巫女だ。
(一体、今まで何してたんだろう)
ぼんやりとして、地面がふわふわ浮いているような、変な感覚がある。
まるで長い夢を見ていた後のように。
「で? 今度の神託はどうだったんだ、巫女姫様」
悪戯っぽい笑顔でソロン様は言う。
私はこの人が泣いたり、取り乱したりするのを見たことがない。
この国の命運を背負う王だというのに、いつも明るく自信満々で。
「……エストカイに攻め入るのは、今はやめたほうがよろしいかと」
「それはお前の判断か、それともアポロン神のお告げか?」
鋭い口調でソロン王は畳みかける。
言葉に詰まって、私は視線をそよがせた。
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