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本編
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多分、あれは私の前世なんだと思う。
何の証拠もないけれど、夢から覚めた瞬間、そう思った。
爽君の言っていたことは嘘じゃない。
ソロンという王様、マイアという巫女。
私は爽君と前世で出会い、そして、恋をしたのかもしれない。
でも――その先に待ち受けている結末を思うと、胸が締めつけられるように痛んだ。
****************************************************
「ねえ、舞は服もう買った?」
頬づえをついて窓の外を眺めていると、友子が私の肩を叩いて言った。
「え、何?」
「何って……もうすぐ移動教室じゃん」
私は口を半開きにしていたが、はっと気づいて手帳を見た。
「うわ~来週じゃん」
「忘れてたの?」
呆れ顔の友子に、私は頭をかいて頷く。
来週の六月二十四日から二泊三日で、京都に行く予定だった。
楽しみにしていたはずなのに、ここ数日のバタバタですっかり忘れていたのだ。
(あれから紘ちゃん、ライン送ってこなくなったな)
以前は毎日寝る前に、ちょっとしたことを送ってきてくれた。
今日あったことや、食べたご飯、空に綺麗な虹がかかっていたこと。
でも、あの映画館デート以来、紘ちゃんは何だかよそよそしくなった気がする。
多分、爽君がいなくなってしまったあの日、私たち三人の中にあったものは壊れてしまったのだろう。
だから、私と紘ちゃんは二人でいても、わだかまりを感じてしまう。三人目の不在を、常に感じているから。
元から二人だったんじゃない。私たちは、やっぱり三人で一つだったんだと、今さら思い知らされる。
「おい、小泉」
男子生徒に呼びかけられて、私は振り向いた。
「お前、今日日直だろ。職員室にノート持っていってくれよ」
「あっ、忘れてた。ありがと、教えてくれて」
私が立ち上がると、「一緒に行こうか?」と友子も席を立つ。
「ううん、大丈夫。先に帰ってて」
私は言って、教卓のノートを持って教室を出た。
何の証拠もないけれど、夢から覚めた瞬間、そう思った。
爽君の言っていたことは嘘じゃない。
ソロンという王様、マイアという巫女。
私は爽君と前世で出会い、そして、恋をしたのかもしれない。
でも――その先に待ち受けている結末を思うと、胸が締めつけられるように痛んだ。
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「ねえ、舞は服もう買った?」
頬づえをついて窓の外を眺めていると、友子が私の肩を叩いて言った。
「え、何?」
「何って……もうすぐ移動教室じゃん」
私は口を半開きにしていたが、はっと気づいて手帳を見た。
「うわ~来週じゃん」
「忘れてたの?」
呆れ顔の友子に、私は頭をかいて頷く。
来週の六月二十四日から二泊三日で、京都に行く予定だった。
楽しみにしていたはずなのに、ここ数日のバタバタですっかり忘れていたのだ。
(あれから紘ちゃん、ライン送ってこなくなったな)
以前は毎日寝る前に、ちょっとしたことを送ってきてくれた。
今日あったことや、食べたご飯、空に綺麗な虹がかかっていたこと。
でも、あの映画館デート以来、紘ちゃんは何だかよそよそしくなった気がする。
多分、爽君がいなくなってしまったあの日、私たち三人の中にあったものは壊れてしまったのだろう。
だから、私と紘ちゃんは二人でいても、わだかまりを感じてしまう。三人目の不在を、常に感じているから。
元から二人だったんじゃない。私たちは、やっぱり三人で一つだったんだと、今さら思い知らされる。
「おい、小泉」
男子生徒に呼びかけられて、私は振り向いた。
「お前、今日日直だろ。職員室にノート持っていってくれよ」
「あっ、忘れてた。ありがと、教えてくれて」
私が立ち上がると、「一緒に行こうか?」と友子も席を立つ。
「ううん、大丈夫。先に帰ってて」
私は言って、教卓のノートを持って教室を出た。
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