上 下
75 / 133
本編

74

しおりを挟む
多分、あれは私の前世なんだと思う。

何の証拠もないけれど、夢から覚めた瞬間、そう思った。

爽君の言っていたことは嘘じゃない。

ソロンという王様、マイアという巫女。

私は爽君と前世で出会い、そして、恋をしたのかもしれない。

でも――その先に待ち受けている結末を思うと、胸が締めつけられるように痛んだ。


****************************************************



「ねえ、舞は服もう買った?」

頬づえをついて窓の外を眺めていると、友子が私の肩を叩いて言った。

「え、何?」

「何って……もうすぐ移動教室じゃん」

私は口を半開きにしていたが、はっと気づいて手帳を見た。

「うわ~来週じゃん」

「忘れてたの?」

呆れ顔の友子に、私は頭をかいて頷く。

来週の六月二十四日から二泊三日で、京都に行く予定だった。

楽しみにしていたはずなのに、ここ数日のバタバタですっかり忘れていたのだ。

(あれから紘ちゃん、ライン送ってこなくなったな)

以前は毎日寝る前に、ちょっとしたことを送ってきてくれた。

今日あったことや、食べたご飯、空に綺麗な虹がかかっていたこと。

でも、あの映画館デート以来、紘ちゃんは何だかよそよそしくなった気がする。

多分、爽君がいなくなってしまったあの日、私たち三人の中にあったものは壊れてしまったのだろう。

だから、私と紘ちゃんは二人でいても、わだかまりを感じてしまう。三人目の不在を、常に感じているから。

元から二人だったんじゃない。私たちは、やっぱり三人で一つだったんだと、今さら思い知らされる。

「おい、小泉」

男子生徒に呼びかけられて、私は振り向いた。

「お前、今日日直だろ。職員室にノート持っていってくれよ」

「あっ、忘れてた。ありがと、教えてくれて」

私が立ち上がると、「一緒に行こうか?」と友子も席を立つ。

「ううん、大丈夫。先に帰ってて」

私は言って、教卓のノートを持って教室を出た。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染に婚約破棄されたので、別の人と結婚することにしました

鹿乃目めの
恋愛
セヴィリエ伯爵令嬢クララは、幼馴染であるノランサス伯爵子息アランと婚約していたが、アランの女遊びに悩まされてきた。 ある日、アランの浮気相手から「アランは私と結婚したいと言っている」と言われ、アランからの手紙を渡される。そこには婚約を破棄すると書かれていた。 失意のクララは、国一番の変わり者と言われているドラヴァレン辺境伯ロイドからの求婚を受けることにした。 主人公が本当の愛を手に入れる話。 独自設定のファンタジーです。実際の歴史や常識とは異なります。 さくっと読める短編です。 ※完結しました。ありがとうございました。 閲覧・いいね・お気に入り・感想などありがとうございます。 (次作執筆に集中するため、現在感想の受付は停止しております。感想を下さった方々、ありがとうございました)

【完結】転生した悪役令嬢の断罪

神宮寺 あおい
恋愛
公爵令嬢エレナ・ウェルズは思い出した。 前世で楽しんでいたゲームの中の悪役令嬢に転生していることを。 このままいけば断罪後に修道院行きか国外追放かはたまた死刑か。 なぜ、婚約者がいる身でありながら浮気をした皇太子はお咎めなしなのか。 なぜ、多くの貴族子弟に言い寄り人の婚約者を奪った男爵令嬢は無罪なのか。 冤罪で罪に問われるなんて納得いかない。 悪いことをした人がその報いを受けないなんて許さない。 ならば私が断罪して差し上げましょう。

逃げるための後宮行きでしたが、なぜか奴が皇帝になっていました

吉高 花
恋愛
◆転生&ループの中華風ファンタジー◆ 第15回恋愛小説大賞「中華・後宮ラブ賞」受賞しました!ありがとうございます! かつて散々腐れ縁だったあいつが「俺たち、もし三十になってもお互いに独身だったら、結婚するか」 なんてことを言ったから、私は密かに三十になるのを待っていた。でもそんな私たちは、仲良く一緒にトラックに轢かれてしまった。 そして転生しても奴を忘れられなかった私は、ある日奴が綺麗なお嫁さんと仲良く微笑み合っている場面を見てしまう。 なにあれ! 許せん! 私も別の男と幸せになってやる!  しかしそんな決意もむなしく私はまた、今度は馬車に轢かれて逝ってしまう。 そして二度目。なんと今度は最後の人生をループした。ならば今度は前の記憶をフルに使って今度こそ幸せになってやる! しかし私は気づいてしまった。このままでは、また奴の幸せな姿を見ることになるのでは? それは嫌だ絶対に嫌だ。そうだ! 後宮に行ってしまえば、奴とは会わずにすむじゃない!  そうして私は意気揚々と、女官として後宮に潜り込んだのだった。 奴が、今世では皇帝になっているとも知らずに。 ※タイトル試行錯誤中なのでたまに変わります。最初のタイトルは「ループの二度目は後宮で ~逃げるための後宮でしたが、なぜか奴が皇帝になっていました~」 ※設定は架空なので史実には基づいて「おりません」

俺様幼馴染の溺愛包囲網

吉岡ミホ
恋愛
枚岡結衣子 (ひらおか ゆいこ) 25歳 養護教諭 世話焼きで断れない性格 無自覚癒やし系 長女 × 藤田亮平 (ふじた りょうへい) 25歳 研修医 俺様で人たらしで潔癖症 トラウマ持ち 末っ子 「お前、俺専用な!」 「結衣子、俺に食われろ」 「お前が俺のものだって、感じたい」 私たちって家が隣同士の幼馴染で…………セフレ⁇ この先、2人はどうなる? 俺様亮平と癒し系結衣子の、ほっこり・じんわり、心温まるラブコメディをお楽しみください! ※『ほっこりじんわり大賞』エントリー作品です。

甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし旦那様は、冷酷陛下です!?)

夕立悠理
恋愛
 伯爵令嬢ミレシアは、恐れ多すぎる婚約に震えていた。 父が結んできた婚約の相手は、なんと冷酷と謳われている隣国の皇帝陛下だったのだ。  何かやらかして、殺されてしまう未来しか見えない……。  不安に思いながらも、隣国へ嫁ぐミレシア。  そこで待っていたのは、麗しの冷酷皇帝陛下。  ぞっとするほど美しい顔で、彼はミレシアに言った。 「あなたをずっと待っていました」 「……え?」 「だって、下僕が主を待つのは当然でしょう?」  下僕。誰が、誰の。 「過去も未来も。永久に俺の主はあなただけ」 「!?!?!?!?!?!?」  そういって、本当にミレシアの前では冷酷どころか、甘すぎるふるまいをする皇帝ルクシナード。  果たして、ルクシナードがミレシアを溺愛する理由は――。

同居離婚はじめました

仲村來夢
恋愛
大好きだった夫の優斗と離婚した。それなのに、世間体を保つためにあたし達はまだ一緒にいる。このことは、親にさえ内緒。 なりゆきで一夜を過ごした職場の後輩の佐伯悠登に「離婚して俺と再婚してくれ」と猛アタックされて…!? 二人の「ゆうと」に悩まされ、更に職場のイケメン上司にも迫られてしまった未央の恋の行方は… 性描写はありますが、R指定を付けるほど多くはありません。性描写があるところは※を付けています。

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...