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本編
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しおりを挟む翌朝、担任の浅見先生はホームルームで何気なく、本当に何気なくこう言った。
「スクールカウンセラーとして赴任されていた久松先生が、家族のご事情でアメリカに戻られることになりました」
「えーっ」
「いつからですか!?」
「本日付で、もう荷物をまとめて出られました。ご挨拶できなくて残念だけど、本当に急なことだったの。みんな分かってあげてね」
全身の血が引いていく音が聞こえた。
(爽君)
爽君が行ってしまう。
仕方ないのかもしれない――昨日あんなことがあったのだから。
でも――。
私はぎゅっと目を閉じた。
(どうして、こんなに胸が苦しいの?)
最後の最後で、爽君を信じてあげることができなかった。
とてつもなく変な前世の話も、紘ちゃんが私たちを殺したとかいう話も。
――ディエス・イレが近い。
ああ――どうして?
こんなときに、また、あの声がする。
カウンセリングルームには、もう誰もいない。
爽君に頼ることはできない。
だって私は、爽君を裏切ったのだから。自らつないだ手を離してしまったのだから。
痛烈な後悔の念が押し寄せてくる。
爽君は、私の話を真剣に聞いてくれた。
一度も笑ったり、茶化したり、聞き流したりしなかった。
(でも、どうして……)
週に一度は、必ずカウンセリングルームに来るよう言っていた爽君。
私の夢の話に、あんなに熱心に耳を傾け、細かく聞き出そうとして。
(まさか)
気づいたら、私は鞄を掴んで飛び出していた。
「舞?!」
後ろで友子の声が聞こえた気がしたけれど、振り向いている時間はなかった。
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