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本編
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「何のことを言ってるの」
「お前は思い出すのが嫌なのかもしれない。そう思って、今まで黙ってきた。
でも、こうなった以上、思い出してもらうしかないんだ。お前を守るためにも、この世界を守るためにも。
舞。俺はもう……二度とお前を失いたくない」
頭の中に無数の?が飛び交っている。
でも、それと同時に、何かが心の内側をノックする音も聞こえた。
――もしもし、聞こえますか。
――私は、ずっとここに閉じ込められているものです。
――見ないふりをするのは、もうやめにしましょう。
――解放してください。目覚めてください。
「俺は、飛行機に乗ったときに思い出した。でも今、お前と飛行機に乗ることはできないから……」
爽君は手のひらでヘリを示した。
「荒療治かもしれないけど、もしかしたらって。だから頼む、舞。一生のお願いだ」
両肩を掴まれて、私は混乱したまま言った。
「何のこと言ってるか分かんないけど……でも、どうしてもヘリに乗ってくれってことよね?」
「ああ」
「そしたら、爽君は言いたくても言えなかったことが言えるのね?」
「そのとおりだ」
私は深い深い溜息をついた。
(一生のお願い、今まで何度も聞いた気がするなあ……)
爽君だけじゃない。
紘ちゃんも私も、子どもの頃から三人で集まっては、他愛のないことで「一生のお願い」を使い合ったっけ。
「分かった」
「いいのか?!」
自分から言い出したくせに、爽君はびっくりした顔をする。
「うん。だって爽君、何かすごく苦しそうだから」
爽君が言ったことのほとんどは理解できなかったけど、そこだけは確かだから。
せめて、少しでも楽になってくれればいい。
「ありがとう、舞!」
嬉しそうに、爽君は私を抱きしめた。
その腕の中で、私は顔を上げて言う。
「でも、その前にトイレに行かせてね」
「お前は思い出すのが嫌なのかもしれない。そう思って、今まで黙ってきた。
でも、こうなった以上、思い出してもらうしかないんだ。お前を守るためにも、この世界を守るためにも。
舞。俺はもう……二度とお前を失いたくない」
頭の中に無数の?が飛び交っている。
でも、それと同時に、何かが心の内側をノックする音も聞こえた。
――もしもし、聞こえますか。
――私は、ずっとここに閉じ込められているものです。
――見ないふりをするのは、もうやめにしましょう。
――解放してください。目覚めてください。
「俺は、飛行機に乗ったときに思い出した。でも今、お前と飛行機に乗ることはできないから……」
爽君は手のひらでヘリを示した。
「荒療治かもしれないけど、もしかしたらって。だから頼む、舞。一生のお願いだ」
両肩を掴まれて、私は混乱したまま言った。
「何のこと言ってるか分かんないけど……でも、どうしてもヘリに乗ってくれってことよね?」
「ああ」
「そしたら、爽君は言いたくても言えなかったことが言えるのね?」
「そのとおりだ」
私は深い深い溜息をついた。
(一生のお願い、今まで何度も聞いた気がするなあ……)
爽君だけじゃない。
紘ちゃんも私も、子どもの頃から三人で集まっては、他愛のないことで「一生のお願い」を使い合ったっけ。
「分かった」
「いいのか?!」
自分から言い出したくせに、爽君はびっくりした顔をする。
「うん。だって爽君、何かすごく苦しそうだから」
爽君が言ったことのほとんどは理解できなかったけど、そこだけは確かだから。
せめて、少しでも楽になってくれればいい。
「ありがとう、舞!」
嬉しそうに、爽君は私を抱きしめた。
その腕の中で、私は顔を上げて言う。
「でも、その前にトイレに行かせてね」
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