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本編

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「下がってろ」

爽君はそのまま、思いきりドアを閉めた。

内側から開けようとするか、ロックされているのか開かない。

「約束が違うでしょ! やめてよ!」

窓ガラスを叩きながら、私は叫んだ。

すると、車道側のドアが開き、爽君が車に乗り込んでくる。

「もう十分待った」

「なっ……」

絶句している私の両目を見据え、爽君は低く呟いた。

「俺はもう、これ以上お前と離れているのは耐えられない」

「離れてなんて」

言いかけた途端に車が揺れ、体がシートに沈み込んだ。

広くて柔らかくて、びっくりするほど座り心地がいい。

爽君は私の顔の横あたりに手を置いて、囲い込むような格好になった。

いわゆる、壁ドンというやつだ。

(キスされる)

なぜか本能的に察知して、そう思ったら紘ちゃんとのキスが思い出されて、胸が爆発しそうになった。

「いやっ」

私は両手を突っ張って、爽君を押しのけた。

一分足らずの間に息が切れて、ぜいぜいと喘ぐような呼吸になっていた。
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